居場所がまるっきり異なる、3人の女性のリーダー公演をハシゴ。

 まず、丸の内・コットンクラブで、オーストラリア出身のウッド・ベーシスト/シンガーのリーダー・グループ公演を見る。お、パロットさん、金髪で奇麗。サポートのピアノ、ギター、ドラムはともに各々リーダー作を出している米国居住者。ギタリストのジェイコブ・フィッシャーはクリス・ポッター(2012年5月28日)のアルバムに入っていたこともある。ま、彼女の音楽性は和み傾向にある、小粋な穏健ジャズなので、サイド・マンの優秀さはなかなか顕われにくいが。

 インストもやるが、やはりベースを弾きながら歌うパフォーマンスが耳をひく。過剰にうまくないが、奇麗な女性がウッド・ベースを抱えて、けなげに歌う姿にはやはりほのかに感興を覚えるな。もっと、“ベースを弾きながら歌う”路線を前面に出したほうが吉と出ると思った。

 次は、原宿・VACATEでブラジル人歌手のトゥリッパ・ルイス(2012年10月23日)。会場入りしたときはすでに始まっていたが、終了までの1時間ほどを見ることができた。7弦ギターとベースやギターを弾く男性2人を従え、伸びやかな、どこかに冒険心や飛びを持つ流動性ある清新ポップを開いていく。やはり、いろいろ思いを抱かせる。

 その後は、ヤング・ディサイプルズや一時ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズ(2010年2月22日、他)のメンバーだったこともあるカーリーン・アンダーソン(1999年8月2日)の、トリオ編成のリーダー・グループ公演を南青山・ブルーノート東京で見た。なんと、サポートは才女RAD(2007年9月6日、2008年4月1日)。さらには、グイド・メイという男性ドラマー。その2人は、米国人だろう。2011年から、アンダーソンはこのトリオを組んでいるということだが。

 米国生まれながら、その後英国ソウルの決定的シンガーとして高い評価を受けた彼女がピアノを弾きながら歌うというのはとんと知らなかった。が、それは数曲のみで、後はRADのベース音も出すキーボード演奏に乗って、中央に立って歌う(一部、ラップっぽいときも)。今回彼女の歌に触れ、意外に歌い口の幅が狭い、喉に負担のかかる歌い方をするんだなと感じたが、それこそは彼女に凛とした風情や風を切る佇まいを与えていたものだとも再確認。とにかく、やはりぼくとしては、何をやってもOK! ブルーノート東京はよくぞ呼んでくれましたと、頭を下げる。

<昨日の悲報。今日の吉報>
 フォーク+ジャズ+R&B+サムシング。そんなふうに説明できそうな、在シカゴのアフリカ系シンガー・ソングライター、テリー・キャリアがずっと住んでいたシカゴで亡くなった。享年、68歳。ぼくが彼を見たのは、2002年5月21日、2004年4月19日、2005年2月17日、2007年3月8日、2009年9月15日。もちろん、ぼくが見れなかった来日公演もある(はずだ)。取材で会っても、本当に雰囲気のある、静か目で、なんとも優しい人……。
 ところで、な、なんとこの12月にコートニー・パインがやってくる。2004年まではブルーノート東京にほぼ毎年やってきていた(ぼくは見ていないが、その後ビルボードライブ東京にも一度出演している)、UKジャズのNo.1リード奏者。来日しなくなって以降も比較的ちゃんとアルバムは出していて、2011年作『Europea』(Destin-E)は確かユーロ人としてのパインを突き詰めた怪作だった(はず。現物、見つからねえ)。とにかく、旧友に会うような親近感もおおいにありで、とても楽しみ。