現代ジャズ・ギターの実力者(2008年10月8日、他)の今回の来日公演はトリオ編成にて。ベースはフレット付き電気ベースをジャズっぽく弾く事においては当代唯一のスティーヴ・スワロウ(すっかりおじいちゃん。でも、椅子に座らず、ちゃんと立って演奏。ピック弾きしていてびっくり)とドラムはビル・スチュワート。ブルーノートやエンヤ他から何作もリーダー作を出しているスチュワートだが、なるほど良識派なようでいて、いろいろひっかかりのある妙味をさりげなく出していて、何気に感心した。

 シンプルなトリオ編成なので、いろんなサウンド設定を謳歌するスコ表現のなかでは、けっこうジャズっぽいほうの行き方を取るものとは言えそう。だが、だからこそ、スコフィールドのソリストとしての実力や持ち味は目一杯アピールされたと言えるのではないか。久しぶりに彼の実演に接したせいもあるかもしれないが、どこかタガが外れつつ、刺と悦楽の感覚を求める、そのいろんな指さばきにぼくは膝を打った。やっぱ、いい。とともに、やはり、どこか定石から離れるリズム・セクションの演奏も、スコフィールドの得難い味を引き出していたと思う。

 曲は「チキン・ドッグ」(ザ・ジョン・スペンサー・ブルース・イクスプロージョンのとは同名異曲。R&B好きのスコフィールドゆえ、”動物諧謔シリーズ”で売ったルーファス・トーマから持って来たタイトルだろう)や「トゥワン」といったオリジナルから、チャーリー・パーカーやカーラ・ブレイ(2000年3月25日、他。別れてなきゃ、スワロウは彼女の旦那)らの曲まで。実のところ、この3人は『アンルート』(ヴァーヴ、2004年)と同じ録音メンバー。でも、当然のごとく(?)、自由自在に行く彼らはあのアルバムに入っていた曲はやらなかったはずだし、あんときより奔放な絡み方を見せたはずだ。あ、それと、ほんの一部でスコフィールドはギター音をサンプリングして、ループ音として控え目に使った。

 次は、南青山・月見ル君想フで、トーキョー・ワッショイ!!というイヴェント。今年2度目になるよう。会場はとても盛況。おもしろがりたい人が来ているという感じも得る。

 会場入りすると、アラゲホンジの演奏が始まっている。ほう、こんなん。ステージ上には、ギターを弾きながら歌う(1曲はキーボードを弾きながら歌った)斎藤真文を中心に、横笛(なかなかの使い手。効いている)、太鼓やなりもの各種、ベース、ドラムなど、ステージ上には男女(7人か8人いたかな)が笑顔でずらり。リーダーは秋田県出身とのことで、東北圏の民謡と末広がりなロック/ポップ様式を巧みに重ねたことをやる賑やかしのバンドなのだが、その言葉で書き表す以上に、しなやかにして、うれしい跳躍力を持っている。接している端から、ニコニコできる。カラフルな和の格好、顔にも目立つペイント(それは、アフリカ的?)を皆していて、そういう“企業努力”もまたがんばっているナと思わせ、応援したくなる。彼ら、海外進出しているのだろうか?

 続くは、OKI DUB AINU BAND(2007年1月26日)。ドラムの沼澤尚(2011年10月8日、他)に加え、現在のベース奏者は中条卓でそのコンビはシアターブルック(2003年6月22日、他)やブルース・ザ・ブッチャー(2010年1月12日、他)と同じですね。肉感性抜群のビートのうえに、アイヌの5弦楽器であるトンコリ音や肉声が自在に泳ぐ。トンコリという楽器音の幅のためだろう、曲は1コードだが、そうした素朴さやシンプルさが、現代ビート・ミュージック要素という触媒を介して、生気と奥行きあるものとして広がっていく様はなかなか比肩すべきものがない。伝統に根ざしつつ、自分を出して、モダン・ミュージックたらんとする太い意思、過去もそうだが、溢れていた。

<今日の、心残り>
 知人からOKI DUB AINU BANDのショウにレゲエDJのランキン・タクシーがシットインするみたいと聞いたが、ちょっと回りたい店があったので、途中で退出。といっても、22時半を過ぎていたが。祭りは長丁場、ね。そして、緑色のボディのタクシーを止めると、扉横のピラーに<タクシー・ランキングAA>と記されている。ゲっ。それを見て、最後までいるべきだったかと少し後悔。ランキンはDUB AINU BANDとの共同名義で、昔発表したユーモアに満ちた反原発ソングの新ヴァージョンを昨年公開したが、それやったかなー。