渋谷・デュオ・ミュージック・イクスチェンジ。前座で、エミ・マイヤー(2012年6月4日、他)が出てくる。ベースやギターを弾く男性を従えての20分ほどのショウ。ジョー・ヘンリーのファンで、自分のアルバムのリミックスを、ヘンリーが使っている人に彼女は頼んだこともあるのだとか。英語曲による新作が来年3月に出るそう。

 そして、米英手作り音楽の担い手一座のショウがはじまる。ロック界きっての売れっ子プロデューサーたるジョー・ヘンリーだけが米国人で、他の3人はアイルランド人か英国人。その組み合わせは、ヘンリーが1昨年にリチャード・トンプソン(2012年4月13日、他)だかがキュレイターを勤めた英国でのイヴェントに呼ばれたことによる。で、その一環で彼はハニガンのショウに触れ、一発で魅了されてしまい、あなたの表現作りにはなんだって助力したいことを申し出る。そして、彼は彼女の2011年作『Pssenger』を英国で録音プロデュース。参加奏者たちは彼女人脈の人たちで、今回同行している、すでに日本で紹介されている才人シンガー・ソングライターのジョン・スミス(2010年7月14日)とドラマーのロス・ターナーはそのアルバムに入っている。

 というわけで、リサ・ハニガン的単位にヘンリーが加わり、ヘンリー、ハニガン、スミスという秀でたシンガーソングライターの才を持つ三者が和気あいあいリード・ヴォーカルを取り合うという感じでショウは進む。3人は生ギターのほかにも、マンドリンその他の弦楽器を手にし、一部ドラムが入らないときはターナーも弦楽器を手にしたりも。彼、シンプルなセットながら口径の大きなバスドラを置いていた。また、ハニガンは手で空気を送る小さなオルガン(と言っていいのかな)も曲により弾く。そんな彼らは北米ツアーを行っていて、この渋谷・デュオ公演が日本ツアーの最終日となる。

 アイルランド系の女性歌手というとすぐに透明感を持つタイプを思い出すが、ハニガンの声は適切な濁りを抱えた歌声の持ち主で、それロック的とも言えるのか。なんにせよ、ナチュラル度の高い2人の歌に触れると、ヘンリーの歌は少し芝居っ気/気取りを持つと感じる。が、それこそが、彼の美意識の発露であるとも。

 歌心、歌を育む心、同志とともに音楽を紡ぐ歓び、そうした掛け替えのない<正>が息づきまくる公演。実は彼らは北米と日本で積み重ねた結果の宝石をまとめあげたくなり、東京で2日間レコーディングを行っており、それは商品化されるはずだ。ヘンリーは今回のツアーでより日本に親近感を持ち、日本のアーティストもプロデュースしたいとも、言っていたそうな。

<今日の、最後の曲>
 ステージ前面に皆で並んで、ザ・バンドの「オールド・ディキシー・ダウン」を脇和気あいあいと歌う。いいナ、いいナ。やっぱ、ザ・バンドはいいな。これ、リサ・ハリガン・バンド(とうぜん、ヘンリー抜き)もアンコールでやったりしているらしい。上で触れた今回のレコーディングでも、この曲を録音したという。