事前のアナウンスでは、ファースト・ショウは他者へ書いた曲を披露し、セカンド・ショウは人気作『サザン・ナイト』(リプリーズ、1975 年)を再演するという触れ込み。それゆえ、ならば両セットを通して見なきゃとなったワタシ。

 六本木・ビルボードライブ東京。サポートはお馴染みのレナード・ポーシェ(ギター。「ビッグ・チーフ」のリフをちょいやったときだけ、トロンボーンも吹く。以前はジョニー・ギター・ワトソンみたいな外見だったのに、今回はスキンヘッドになっていてビックリ。なんかいい人な感じが出ていた)をはじめ、電気6弦ベース、ドラム、サックス(テナー、アルト)という布陣。バンドの面々は皆、コーラスも取る。

 トゥーサン(2011年1月10日、他)、本当に嬉しそうにやっていたな。彼、鮮やかな赤基調でそこに金色の刺繍が入ったような派手派手のスーツで登場。それ、往年の漫才師みたいと書くと、雰囲気が伝わるか。ファーストとセカンド、ともに同じ格好をしていた。

 ところで、実はファーストもセカンドも『サザン・ナイツ』収録曲をきっちりやって、事前情報ほど演目違いではなかった。なんでも、面々が勘違いし、セカンドの演目をファーストでやってしまい、セカンドのお客は『サザン・ナイツ』曲を目当てで当然来ているから、当初の予定通りまたそれで行ったというのが真相のようだ。<ビッグ・イージー>とその気質が言われるニューオーリンズ勢らしいと書いてしまうのは、贔屓の倒しになってしまうかもしれないが。

 まあいろんな曲を聞きたかったことは確かだし、ファースト・ショウの際は、接しながらなんか変だな、カヴァーが少ないなと思ったのは確かだったのだが、音楽は生き物であるし、ぼくはそっかそっかと接しちゃった。ファーストとセカンドでぜんぜん違う位置で見ていたこともあり、いろいろと異なる感興をぼくは得たのも確かだ。

 双方の違いを書いておくと、演奏時間はファーストが1時間15分で、セカンドは1時間30分。演奏やコーラスのまとまり具合/濃さはセカンドのほうが上だったか。ボーシェはセカンドでは縦笛やフルートも少々吹いた。でもって、実はカヴァーもセカンドのほうはザ・ポインター・シスターズの「イエス・ウィ・キャン」とか、ロバート・パーマーのカヴァーが良く知られる「スニーキン・スルー・ザ・アリー」とか多かったはず。それ、本来ファーストでやるべき曲をすまんのうとやったのかもしれない。後者の方はバンドでやるのは初と言っていたが、前にもやっているよな。ああ、ビッグ・イージー。かわりに、ニューオーリンズ曲とクラシック曲などを気分でソロ演奏主体で一筆書きでやっていく洒脱を集約したようなカタマリは、ファーストでは2つやった。また、ファーストではジョー・ヘンリー制作の『ザ・ブライト・ミシシッピー』(ノンサッチ、2009年)に入っていたブルース曲をやったりもした。

 声はいままでで、一番良い感じで出ていたか。前に少し耳が遠くなっていると聞いたことがあるけど、それが表に出ることはないし、いい顔つきで、元気そう。なんだかんだ御大、いい状況にあるのは間違いないし、これからも彼のニューオーリンズっ子たる美点には良いあんばいで何度も触れることができるはずと、確信した。

<今日の、もろもろ>
 ファースト・ショウのほうで『ザ・ブライト・ミシシピッピ』を語るのに、そのプロデューサーであるジョー・ヘンリー(2010年4月4日、他)の名をトゥーサンはMC で出していた。そしたら、セカンド・ショウの途中で、ツアー中&レコーディング中のジョー・ヘンリーご一行が入ってくる。今日、昼間は中野でレコーディングし(わざわざ、ヘンリーお抱えのエンジニアをそのために米国から呼び寄せた)、夜はツアー・メンバーのジョン・スミス(2010年7月14日)の単独公演を皆で見に行き、そのままスミスも含め皆で六本木にやってきたらしい。お洒落であれを是とするヘンリーはちゃんとシャツ、ネクタイ、ジャケットを着用(下半身はジーンズとブーツ)。ヘンリー付きの人に一緒に楽屋行きましょうよと誘われたが、知人もいたので断る。その後、1、2杯だけ飲んで帰るつもりが、なぜかワインを3本も開栓するのにつきあってしまう。だらだら飲みたい知人の“おごるから”という引き止め作戦に乗ってしまったYO。あー、流されることを良しとするワタシ。