ドミニカとキューバ、スペイン語圏の二人の熟達ピアニストが重なる出し物。グランド・ピアノが二つ置かれ、彼らは向き合いつつ、ピアノ音を重ねていく。ときには、じゃれ合うという言い方もできる? MCは年下のカミロ(2002年10月3日)が担当、バルデス(2009年9月14日)は悠長に構える。MCによれば、7年前にこのデュオで大々的にフェスを回る欧州ツアーをやったことがあるそう。

 この曲は、どう? おお、それで行く……てな、感じで、一方がきっかけを出し、もう一方はそれに合わせる。うんうんそう弾くんだァ、ならオイラはこう行っちゃうかなあ。てな、感じの臨機応変な、気安いデュオ演奏が披露される。二人の共通理解項となる、知ったスタンダード曲はいくらでもあるだろうし、やろうと思えばいくらでもできるんだろうな。演奏開始40分ぐらいから、会場の後ではバルデスのサイド・マンらしいベース奏者、ドラマー、打楽器奏者が待機。だが、彼らは悠然と弾き合う。結局、リズム隊を呼んだのは1時間は二人でやってからで、そこでマイルス・デイヴィス作(ピアノ・ファンならビル・エヴァンスの指さばきで親しんでいるかもしれない)の有名曲「ソーサラー」をラテン調でやって本編はおわり。そして、アンコールでは「ベサメ・ムーチョ」を情緒豊かに。南青山・ブルーノート東京、セカンド・ショウ。見事に、フル・ハウス。