レバノンのベイルート(83年)生まれ〜ロンドン育ちの自作自演派の公演は、新木場・スタジオコースト。昨年出たファースト作を聞いて夢見る王子様的ピアノ・ポップの才ある担い手というイメージがぼくのなかに出来上がっていたが、実演に触れると、もっと広がりがあって、豊かな含みを持つ。うーむ、興味が倍加し、相当に感心した。
バンドはキーボード、ギター、ベース、女性のドラム、女性バッキング・コーラス(日本人の血が半分はいっていると紹介されていた)という陣容。彼らは、ちゃんと統一したトーンの衣装で着飾っている。冒頭はそのバンド・メンバーによる寸劇。一人をのぞく4人が次々に出てきてステージ中央に置かれたソファーに座り、(ステージ背後のヴィジョンに映し出される)旧いモノクロ映画やBBCニュースを見ていて、そのニュースは米国のロケットの発射の様子を伝えるもの。そのさい、いい感じで流されていたのは、ノスタルジックなスウィング・ジャズ。それに合わせて手拍子していた聴衆はロケットが発射された時にはメンバーたちと一緒に拍手喝采。もう、それだけで、このショウはすげえ一体感を持っているゾと思わせられる。そして、ヴィジョン前に設えられた渡り廊下のようなところに宇宙飛行士が登場し、宇宙服を脱ぐ。それがミーカだった。
てな、具合で始まったショウは、きらびやかで、設定も起伏に富む。音楽のほうも、歌も演奏もばっちり。とくに、褐色の女性ドラマーには♡。どかすか力まかせにジャストなビートを送り出していてクッキリ、最初プリセットのビート音を併用しているのかと思ってしまったもの。エレクトロ・ポップ調の曲では一部つかっていたかもしれないが、基本はばっちり生音で勝負していたはず。そして、感心させられるのはそういうめくるめくバンド音をちゃんと彼が掌握し、導いていると思わせた事。あと、生だとミーカはよりソウル・ミュージックの影響を受けていると思わされる。その、笑顔の芸能感覚、ファルセット多用のイケてるヴォーカリゼイションなんかに触れると。そして、そうしたもろもろのことを鑑みると、彼に一番影響を与えているのはプリンス(2002年11月19日)ではないかとも思ってしまう。あと、ときに他愛ない、子供っぽい設定を大真面目に広げるところはベック(2009年3月24日、他)の諧謔感覚と似ているかも……。
といったわけで、ショウの進め方にしても、音楽自体の質にしても、これはアルバム2枚出したばかりの20代半ばの青年がやることではない。すごい、手だれ。でもって、客扱いがとてもお上手。熟達者のように奥はきっちり締め、表面上はニコニコとポップ・スターのように(実際、そうなんだけど)ヘラヘラとショウを進める様には、素直に降参。物事の両面を持つことは美徳なり。また、感心したのはMC。それも気安くウィットに富むものなのだが、彼はけっこう日本語を連発する。そして、ショウが進むうちにはっきりしてきたことは、彼はにわかで覚えたものを言っているのではなく、英語で言った事、伝えたい事の内容をちゃんと考えてたどたどしいながら日本語に置き換えてしゃべっていた! 親日家であるらしいが、彼はちゃんと日本語を勉強しているナ。また、途中では、仲良しらしい宇多田ヒカルを呼んで、一緒にクリスマス・ソング(「レット・イット・スノウ」だったかな)をほほえましく歌った。
ポップで、チャーミング。そんなパフォーマンスを笑顔で気持ちをこめて進める彼なんだもの、そりゃ満員のオーディエンスが熱狂/発情しないわけがない。彼らは(いや、“彼女たち”のほうが比率は高いはず)熱烈な反応をかえすだけでなく、よく歌詞も覚えていて、一緒に歌う。こんなに合唱大会になる公演もそうはない。
終演後、偶然知り合いと合う。その知人は、チケットを確実に購入するため(事実、この公演はすぐに売り切れたようだ)にわざわざスマッシュのチケット会員になったのだそう。きっと、そういう熱心なファンがたくさんいるんだろうな。この素敵きわまりない公演を見て、ぼくはそう思わずにはいられなかった。
先にベックを引き合いにだしたが、彼はツアーのたびに設定を思うまま変える人。一時期はかなりプリンスにカブレたそれを提示したとこもあったのだが、そんなベック同様に、ミーカも今後、ツアーのたびに設定を思うままころころ変えて行くのではないだろうか。今後が楽しみでしょうがないな。すでに提出済みの、クロスビート誌の年間ライヴ・ベスト5のリストのなかの一つを、この公演に差し替えることにしました。
バンドはキーボード、ギター、ベース、女性のドラム、女性バッキング・コーラス(日本人の血が半分はいっていると紹介されていた)という陣容。彼らは、ちゃんと統一したトーンの衣装で着飾っている。冒頭はそのバンド・メンバーによる寸劇。一人をのぞく4人が次々に出てきてステージ中央に置かれたソファーに座り、(ステージ背後のヴィジョンに映し出される)旧いモノクロ映画やBBCニュースを見ていて、そのニュースは米国のロケットの発射の様子を伝えるもの。そのさい、いい感じで流されていたのは、ノスタルジックなスウィング・ジャズ。それに合わせて手拍子していた聴衆はロケットが発射された時にはメンバーたちと一緒に拍手喝采。もう、それだけで、このショウはすげえ一体感を持っているゾと思わせられる。そして、ヴィジョン前に設えられた渡り廊下のようなところに宇宙飛行士が登場し、宇宙服を脱ぐ。それがミーカだった。
てな、具合で始まったショウは、きらびやかで、設定も起伏に富む。音楽のほうも、歌も演奏もばっちり。とくに、褐色の女性ドラマーには♡。どかすか力まかせにジャストなビートを送り出していてクッキリ、最初プリセットのビート音を併用しているのかと思ってしまったもの。エレクトロ・ポップ調の曲では一部つかっていたかもしれないが、基本はばっちり生音で勝負していたはず。そして、感心させられるのはそういうめくるめくバンド音をちゃんと彼が掌握し、導いていると思わせた事。あと、生だとミーカはよりソウル・ミュージックの影響を受けていると思わされる。その、笑顔の芸能感覚、ファルセット多用のイケてるヴォーカリゼイションなんかに触れると。そして、そうしたもろもろのことを鑑みると、彼に一番影響を与えているのはプリンス(2002年11月19日)ではないかとも思ってしまう。あと、ときに他愛ない、子供っぽい設定を大真面目に広げるところはベック(2009年3月24日、他)の諧謔感覚と似ているかも……。
といったわけで、ショウの進め方にしても、音楽自体の質にしても、これはアルバム2枚出したばかりの20代半ばの青年がやることではない。すごい、手だれ。でもって、客扱いがとてもお上手。熟達者のように奥はきっちり締め、表面上はニコニコとポップ・スターのように(実際、そうなんだけど)ヘラヘラとショウを進める様には、素直に降参。物事の両面を持つことは美徳なり。また、感心したのはMC。それも気安くウィットに富むものなのだが、彼はけっこう日本語を連発する。そして、ショウが進むうちにはっきりしてきたことは、彼はにわかで覚えたものを言っているのではなく、英語で言った事、伝えたい事の内容をちゃんと考えてたどたどしいながら日本語に置き換えてしゃべっていた! 親日家であるらしいが、彼はちゃんと日本語を勉強しているナ。また、途中では、仲良しらしい宇多田ヒカルを呼んで、一緒にクリスマス・ソング(「レット・イット・スノウ」だったかな)をほほえましく歌った。
ポップで、チャーミング。そんなパフォーマンスを笑顔で気持ちをこめて進める彼なんだもの、そりゃ満員のオーディエンスが熱狂/発情しないわけがない。彼らは(いや、“彼女たち”のほうが比率は高いはず)熱烈な反応をかえすだけでなく、よく歌詞も覚えていて、一緒に歌う。こんなに合唱大会になる公演もそうはない。
終演後、偶然知り合いと合う。その知人は、チケットを確実に購入するため(事実、この公演はすぐに売り切れたようだ)にわざわざスマッシュのチケット会員になったのだそう。きっと、そういう熱心なファンがたくさんいるんだろうな。この素敵きわまりない公演を見て、ぼくはそう思わずにはいられなかった。
先にベックを引き合いにだしたが、彼はツアーのたびに設定を思うまま変える人。一時期はかなりプリンスにカブレたそれを提示したとこもあったのだが、そんなベック同様に、ミーカも今後、ツアーのたびに設定を思うままころころ変えて行くのではないだろうか。今後が楽しみでしょうがないな。すでに提出済みの、クロスビート誌の年間ライヴ・ベスト5のリストのなかの一つを、この公演に差し替えることにしました。