63年フロリダ州生まれの、盲目の黒人ジャズ・ピアニスト。80年代中期にウィントン・マルサリス(2000年3月9日)のバンドに雇われて知名度を得て、80年代後期からリーダーとして大々的に活動している人で、やはりニューオーリンズとの接点を持つ(マルサリス家はニューオーリンズの名ジャズ・ファミリーですね)レギュラーのリズム隊を伴ってのもの。ベーシストはアラン・トゥーサン(2009年5月29日)やブライアン・ブレイド・フェローシップ(2007年9月24日)に同行しているベーシストのローランド・グルーリン、ドラマーのジェイソン・マルサリスはもちろんマルサリス四兄弟の末弟ですね。二人はリーダーとして、何作もアルバムを出していたりもする。また、ビル・サマーズがニューオーリンズで組んでいるロス・ホムブレス・カリエンテスに両者は関与したことがありますね。

 ステージ中央にどっか〜んとスタインウェイ&サンズの細長いピアノが置いてあり、3人はステージに向かって左側にまとまって位置する。ロバーツは長身のマルサリス(ばしっとスーツで決めた風貌は穏健にして、かなり格好いい)に手を引かれて登場。なるほど、こじんまりとステージに位置したほうが出入りは楽だろう。とともに、あまり三者が離れていないほうが微妙な気のようなものは交換しやすいかな。なーんて書いたのは、その3人の噛み合いはとても密なもので、緩急入り交じり、ときにかなり構成されたものだったから。コール・ポーターの「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」やスコット・ジョプリンの「エンターテイナー」など超有名曲もやったが、それらもゆったりとしつつ相当にひねりをかましていた。モダン・ジャズ・カルテット(2009年8月29日参照)を少し想起させる部分もあったかも。

 かつてロバーツのリーダー作を聞いたとき、録音のされ方もあるのだろうが、とっても左手の演奏が強くて驚いたことがあったが、そのときの印象ほどではないにしろ、心地よい粒立ちを持つ弾き手であるのは間違いない。1曲ではストライド/ブギウギの様式を入れたピアノ・ソロを披露し、アンコール曲はゆったりとトリオでブルース曲を演奏する。それらは、過剰に弾きすぎてはおらず、まろやかさを持つもので、それは意図してのものだろう。伝統を受けつつ、自分なりのストーリー性に長けたジャズ表現を求めたいという気持ちを随所に感じたナリ。丸の内・コットンクラブ、ファースト・ショウ。