ブレイドは前回のリーダー・グループ公演(2008年9月4日)で今のジャズを作っている!と大感激させた今の最たる敏腕ジャズ・ドラマー(2004年2月9日)だが、その新作『ママ・ローザ』は深い付き合いを持つダニエル・ラノアの表現との繋がりを覚えさせる完全シンガー・ソングライター作だ。そして、今回のパフォーマンスはもろにそっち路線を標榜するもので、ブレイドは基本ギターを手にしながら、生理的に澄んだ歌をうたう。サポートはキーボード、ギター、べース(縦/電気両刀)、女性バックグラウンド・ヴォーカル。ときに、ブレイドはドラム・セットの前に座り叩いたりもするが、その際はよりバンドは丁々発止するようになり、例えばブレイドがギターを手にしているときは軽めのアクセント音を入れているギタリスト(コフリー・ムーア)がその際は前に出てきて、ときにマーヴィン・スーウェル(cf.カサンドラ・ウィオルソン)のような立ったソロを聞かせてしまう。いい奏者をそろえています。

 もう随所から、大人の風情ある、どこか漂う感覚を持つ超然としたフォーキィ表現を送り出そうとする意思が顔を出す。そして、それはきっちりと確かな形となり見る者の前に顕われては消える。実はこの日披露された曲は半数以上が未発表曲(つまり、『ママ・ローザ』未収録のヴォーカル曲。キーボード奏者のアーロン・エンブリーが作った曲も少なくなかったよう)だったが、質や手応えは変わらず。あんたって、いったい。でも、その多芸さ、確かさがなんともたのもしい。六本木・ビルボードライブ東京。セカンド・ショウ。