米国テキサス州のメキシコとの国境の街、エルパソ出身のアット・ザ・ド
ライヴ・イン(2000年5月24日、2000年8月6日)のギターのオマー(彼は
アフロ・ヘアーじゃなくなっちゃった。ローディは崩れたアフロをしていた
けど)とシンガーのセドリック(依然、アフロ)が中央に立つ、この流動性
バンドを見るのは2002年4月7日、2004年1月7日以来。2年弱の間に、こ
んなに変わるとはなあ。フェラ・クティみたいなアフロ・ファンク調の曲に
続き、メキシコを想起させるトランペット使用の哀愁曲が場内に流された後
に彼らは登場した。

 え。なんと、8人もいるじゃないか。歌、ギター2、ベース、キーボード
、リード、ドラム、打楽器という布陣。後ろに張られたバカでかい幕にも8
人が描かれているので、ここところはこの顔ぶれでライヴをやっているんだ
ろう。そして、彼らがドバーっと音を出した途端、とんでなく進化している
ことを了解。この演奏のクオリティの高さ、噴出感の見事さはなんなのだ。
前にも彼らのことをジャム・バンドと書いたことがあるが、即興の密度や熱
さがまるで違う。実は1時間半強のパフォーマンスでやった曲数はたった4
曲。しかも、2曲目の「トウデイズ・ジャム」という曲は50分くらいの尺だっ
たのだ。でも、全然あきないし、ウッキッキで見れちゃう。もう、怒濤のビ
ートに乗っていろんな楽器音やセドリックの肉声が放り出され、それらは魅
惑的な色や模様をダイナミックに描いていく。いやあこれを聞いちゃうと、
アルバムなんてままごとみたいなもの。これだけ完璧な実演なんだし、彼ら
はライヴ作品をプロダクツの柱に据えていくべき、と思わずにはいられませ
んね。

 その演奏面を重視したそれはCD上だとプログレッシヴ・ロック回帰っぽ
いイメージを抱かせるのだが、生だとそういう印象は皆無。それは、実演で
はよりグルーヴィだったりソウルフルだったりするからであり、より確かな
即興性を有しているからなはず。そうした演奏に触れながらぼくが比較対象
として思い起こしたのは、フランク・ザッパ・バンドと70年代前半のマイル
ス・デイヴィスのエレクトリック・バンド。ザ・マーズ・ヴォルタは彼らが
やっていたことをオルタナ・ロックのなかでやっているという感じだ。でも
って、彼らの演奏に接しながらもっと似ているバンドがあるぞと感じつつそ
のバンド名がなかなか思い出せなかったのだが…………なんと、それはRO
VO(2004年11月19日、2006年7月7日、2006年8月27日、他)ではない
か。自分でも気づいてびっくりしたんだけど、両者の持ち味はかなり重なり
ますよ。それにしても、ザ・マーズ・ヴォルタの面々は皆うまい。とくにド
ラマー。ロックという枠のなかでエルヴィン・ジョーンズ流儀で叩いてる(
!)ような彼、近年で一番オオって感じたドラマーだな。

 とかなんとか、与えられた感興や示唆は多々。別に彼らことを嘗めていた
わけではないが、まさかこんなにジャイアント・ステップするとは。やっぱ
り、何度も見ているグループでも見どころありそうな奴らは毎度チェック
しないといけないなあ。

 場所は、青海・ゼップ東京。この大き目のハコで二日間やるとはいえ、入
りはよくなかった。正義はむくわれないものなのだなあ。。。。。