聞くべきポイントを持つアメリカのインディ・バンドを二つ集めた、お得
な公演。渋谷・クラブクアトロ。ともに、1時間ぐらいづつのパフォーマン
スをやった。

 まず、何かと印象的なアーティストを輩出するネブラスカ州オマハ出身の
カーシヴが登場。あら、彼らが先ですか。で、トランペット(ときにキーボ
ードも弾く)とサックス奏者(女性、日本人だったかも。日本で雇ったのか
な)を従えてのパフォーマンス(管奏者は両者とも譜面を前にする)。ちょ
っとアヴァンギャルド目なホーン・リフと拮抗するギター・サウンドを持つ
ミディアム調のオープナーはなかなかにカッコ良かった。朗々と歌いあげる
リード・シンガーの歌い口は好みではないのもの、陰影というかちゃんと襞
を持つグループ表現のあり方にはかなり共感を覚える。と、思っていたら、
ギター奏者がスライド・バーを使用した3曲目だか4曲目だかの綻びた情緒
を持つ曲はもろにキャプテン・ビーフハート&ザ・マジック・バンド影響下
にある曲じゃないか! ザ・マジック・バンドはトロンボーン奏者も擁して
いたりしてたので、彼らがホーン隊をつけた表現を求めるのもすんなり納得
できた。かなりおっさんくさい風体を持つバンドだが、ちゃんと年季を積ん
でいるだけのことはあるぞと思わせる連中。MCも非常に人間味のあるまっ
とうなもので、もっと聞かれるべき、嵐のココロを持つ大人のバンド、とい
う印象を強くする。

 30分近くの休憩を挟んで、カリフォルニアのトリオ・バンドのザ・ヴェル
ヴット・ティーン。おお、これはギターを弾いたり、コンピューターで音を
出しながら歌う(キーボードを弾いて歌った曲も1曲あったか)ジュダ・ラ
グナーのワン・マン・プロジェクトと言ってもいいのではないか。前はまた
違った感想を与えるものであったらしいが、ラグナーのふくらんだ妄想をリ
ズム隊が後を追いつつ補完していくという感じでショウは進んでいく。そし
て、個人の某弱無人さが全体を支配しているノリはザ・ホワイト・ストライ
プス(2003年10月21日、2006年3月5日)と重なる感じがあるとぼくは
思った。また、いくつかの曲調(ポップな曲調を披露する場合もある)で想
起したのは、ザ・マーズ・ヴォルタ(2004年1月7日)。どっちにしろ、ど
こか現代的とも感じさせる<とりとめのなさ>や<破綻の感覚>を持ってい
るわけで、人気が出ても不思議はないなと思った次第。もう少し、ラグナー
のキャラが立っていればもっと多大な支持を集めているはず。