78年生まれ、ジェフ・マルダーの娘さんなのだか。だだし、ジェニー・マ
ルダー(87年だっけか、『ニアリー・ヒューマン』リリース後のトッド・ラ
ングレンの来日公演にバッキング・シンガーとして同行したことがあったけ
なー)と違い、マリア・マルダーの血は入っていないとか。つまり、別れて
からの娘なのか。でも、彼女もそれなりに小悪魔ふうの声を持つ。下北沢・
ラカーニャ。

 旦那でもあるというフランス出身のフィドル/ギター奏者の伴奏を受けて
、手作り感覚に満ちた、オールドタイムなフォーキィ表現を送りだす。本人
は大方ギターを弾きながら歌うのだが、ルーツィな表現の大家である父親の
もとで渋い音楽に浸って育ち、若いながらも奇特に迷いなくそういう表現
にあたっているのかあ……と思わせられた。のだが、休憩のとき、入場時に
くれたそれなりの情報が載せられている手作りパンフ(そういう、配慮うれ
しいですね)を見たら、なんとバークリー音楽大学でジャズを学んでいたと
書いてある。旦那もバークリー出身だそうだが、そうするといろいろな音楽
経験を経て、時代遅れな、だからこそ今光る部分もある表現にフレッシュに
あたっているということになるのか。

 歌がそれほどうまくないこともあり、かなり初々しさを感じさせもするそ
れ。簡便なパフォーマンス環境であることもあってか、ぼくはあまり疑問も
たず、素直に楽しんで見れた。でも、ずっとアメリカのフォーク・ミュー
ジックに触れている人が聞いたら、どんな感想を持つのかなあとも少し思う
。19日のトーチのときのことが、すぐに頭に浮かんだもので……。