おお、大きくない若い女性が(アルトと異なり音色も物理的な大きさも男性的な楽器である)テナー・サックスを抱える(彼女は一部、フルートも手にした)。それは、けっこう意外性のある図ではあるなあ。ムーンチャイルドはキーボードを弾く二人の男性陣とヴォーカルの女性の白人3人組で、そこにアフリカ系のドラマーがサポートで入る。そして、男性たちもときにアルト・サックス(一部、クラリネット)やトランペットを手にし、ジャジーなセクション音や簡素なソロを入れて彩を添えるのだ。

 そんなムーンチャイルドはウェスト・コーストの大学でジャズを専攻していた若者たちで組まれたユニットで、発表したアルバムは2作。自主発売の1作目はヒップホップ色もあったが、英トゥルー・ソウツ発の新作はメロウな現代ソウルという像に焦点を絞った仕上がりになっている。

 そのコード使いは、ジャズ的。ヴォーカルのラインの取り方もジャズを知っていなければできない歌い方(ようは、一緒に口づさみにくい)。で、ぼくがそれに触れてすぐに思い出したのは、『ラジオ・ミュージック・ソサエティ』のエスペランサ。他にも清新R&Bユニットであるキング(バークリー音大卒もいる)やハイエイタス・カイヨーテを思い出す人がいてもおかしくない。まあ、一言で片付ければ、ハイ・センスとなりますね。

 実演は残念ながら、アルバムを超えるものではない。やはり、基本キーボード2台(うち、一台はベース音を担う)だけのメロディ楽器では単調になりがち。というか、アルバムは音色や響きに留意していたが、ライヴではそれが一本調子。専任エンジニアを連れてきていたら、少し違ったかかもしれないが。アルバムと異なり、ヴォーカルにもエフェクトは一切入らなかった。掛け持ちなので大変かもしれないが、ライヴにおいてはもう少し多くブラス音を用いたほうが変化も出るだろう.

 だが、ジャズの要素が今の瑞々しいソウル/ポップ表現にいかに使えるかということはとても示す。こういうひねりの効いたメロウなアダルト・ミュージックがあってもいいというか、それこそがなんか今様ぢゃんと思わせるのが、ムーンチャイドであったのだ。丸の内・コットンクラブ、ファースト・ショウ。今週28日、毎日新聞夕刊にもライヴ評が出ます。

<今日の、駅前>
 有楽町で、都知事候補の鳥越俊太郎が街頭演説をしていた。すごい人だかり。ライヴの時間が迫っていたので、ちらりと接しただけだったが、なんか元気そうに延々と喋っていた。横には、マック赤坂の街宣車も止まっていたが、彼のこともシャレで一瞥したかった。