ナーヴは、1990年代前半に好事家から熱い注視を受けたNYの混沌ファンク・ロック・バンドのスクリーミング・ヘッドレス・トーソズでドラマーをずっと勤めていたジョジョ・メイヤー(1963年、スイス生まれ)がいる人力ドラムン・ベースのバンド。他に、キーボードや装置の中村卓也(2007年4月12日)と電気ベースのジョン・デイヴィスを擁する。南青山・月見ル君想フ。

 ほう、さすがメイヤーのドラミングは耳を惹く。面白〜い。スネアは二つ使用、奇麗なレギュラー・グリップでザクザク叩いていく様はジャズ出身であることを認識させるか。で、キーボード奏者が優秀で単なるドラミング見本市に陥ることなく、イケてる広角型クラブ・ミュージック生演奏にまで高める。例えばどこかフュージョンぽさも持っていた同編成のザ・ヌマ・トリオ(2007年10月10月)とは抱えているキャパシティが違うと思わずにはいられず。“ストップ&ゴー”と言いたくなるような仕掛けもいろいろなされているが、それもバシっと決まって気持ちいい。ファースト・ショウを見て、ブルーノート東京へ。

 昨晩につづき、菊地雅章トリオのパフォーマンスを堪能。曲が決まってないのだから、そりゃ毎晩演奏は違う。今日のほうが少しテンポが早いものが多く、ギタリストがこの晩のほう演奏に入る時間は長かった。最後にピアノ・ソロで小曲をやったのは、両晩ともに同じ。この晩は、その際「ネイチャー・ボーイ」を弾いた。ソロ・ピアノも聞きてー。ECM盤『サンライズ』より、ぼくは今回の実演のほうが好きかな。ま、芸のない言い方になるが、昨日/今日とまさに至福の体験でありました。

 会場には、NY在住のフルート奏者のYUKARI(2011月2月12日。この7月21日から日本を回る)も。なんでも、サイドの2人とは4、5年前から付き合いがあって、とくにモーガンとは親しかったそう。やはり彼、けっこう今は忙しくなっているとか。

<翌日の、プーさん>
 明けて、午後にインタヴュー。いろんな話がきけた。へえ、そうなんですかあ、の連続。話の量は普通におこせば10000字近いだろう。ジャズ・ジャパン誌用に取ったが、まだ文字数をもらっていないものの、分量の関係で捨てる話は多くなりそうだ。ともあれプーさん、すぐ側で見てもやはりけっこう元気そう。その所感を告げると、シャレにならない大病だったんだと言う。寝ていて脊髄も3カ所損傷した、なんても言っていた。彼の父親は画家で、それゆえ東京芸大付属高時代は音楽のほうのクラスにいた(同級生が、渋谷毅;2011年6月23日、他)にも関わらず、大学は絵画の課程に来ないかと芸大の先生から誘いがあったそう。音楽をやりたいと断ったら、結局音楽のほうには進めなくなってしまったのだとか。もちろん渋谷毅は中退したものの、上に進んでいる。本人の意思で大学には行かず高校卒業後現場に出たのかと思っていたのだが、実は大学進学希望だったのだそう。ま、高校では教室でたき火をしたりして、けっこう問題学生だったようだが。そんな血筋を持つわけで、プーさんは自分では描かないものの絵画好き。で、数年前にシャガールの絵にはまり(!! シャガールとは、けっこう意外)、それで表現観がおおきく変わり、それでまた自己表現に対して大きなモティヴェイションを得ている。ECM発の『サンライズ』(2009年9月録音、発売は2012年)はそんな自己内の変化を経てのアルバムだそう。
 さあ、今週はインタヴュー週間。プーさんはペンギン・カフェのアーサー・ジェフスに続く本日2本目の取材で、今週はあと4本ほどインタヴュー予定が控えている。締め切り以外なんもない週もあるが、入るときは入る。でも、均一しているよりは、そっちのほうがなんかいいなー。