菊地雅章

2012年6月24日 音楽
 リアル・ジャズ・ピアニスト中のリアル・ジャズ・ピアニスト。来年でNYに居住することになって40年となる日本人ピアニスト(2004年11月3日、他)のことをそう言うのになんの逡巡もございません。リアルなジャズ感覚を持つゆえ、彼は電気キーボード使用のグルーヴ・バンド路線にも手を染めたりもしたわけだ。って、なんか禅問答みたいな書き方になるけど。

 トーマス・モーガン(ウッド・ベース)とトッド・ニューフェルド(ガット・ギター)とのトリオによる。エレクトリック・バンド編成の際は複数のギタリストを起用していたが、純ジャズ路線においてギタリストを起用するのは初めてではないか。まあ、長年の同士、ポール・モーシャン(ドラム)が亡くなってしまったので、気分をかえてというところもあったのかもしれないが。

 今年ECMからリリースされた新作『サンライズ』(モーガンとモーシャンとのトリオによる)は完全インプロヴィゼーションによる演奏が10 曲収められていたが、この日も基本はそう。ただし、「ブルー・モンク」や「オルフェ」をモチーフとするものもあり。とにかく、菊地をトライアングルの頂点に起きつつ、三者が研ぎすまされまくりで反応し合う。その結果、あまりにも刺激的で味もある音の揺ら揺らやほつれが連鎖していき、生理的に美しい響きが会場内に満ちる。ああ、えも言われぬ。

 大病だったことも伝えられたプーさん(菊地雅章の長年の愛称)だが思っていたよりは元気そう、まだまだ彼が発する美や刺激を享受できるはずと確信。自分のなかにある無限の音を拾い上げる際に出る必然性あるうなり声もちゃんと出ていたしね。そういえば、ギタリストのニューフェルドもプーさんに負けず劣らず声が出る。どんな演奏するのかと思いきや、けっこう菊地とモーガンのデュオ演奏の部分もあったけど、これがデレク・ベイリーとかを思い出させる流儀を持つ。なるほど、ギターを入れたかったのではなく、ニューフェルドという個体と出会ったからギター奏者をプーさんはバンドに入れてみたのだろうなと、思わせる弾き口を彼は持っていた。MCによれば、このトリオにフリー・ジャズの大ドラマーであるアンドリュー・シリルを入れたカルテットも、菊地は画策しているよう。

<今日の、認知>
 この日、昼間は車で動いていて、その流れでブルーノートには車で行く。ゆえに、この晩はハーブ茶飲みながらの、アルコール非摂取でのライヴ拝見。基本ライヴを見るさい飲まなきゃいられないが、こういう研ぎすまされた実演は酒なしでもアリと思えたのは確か。会場向かいの大きなコイン・パーキングは20分で300円(前はもっと高い料金をとっていた)。前後、ゆっくりしていれば、2000円ぐらいにはなるか。なら、タクシーで往復しても変わらない、となる。なるほど、頭に入れておこう。