渋谷・O-イースト。スカをベースとする大型バンドのOi-SKALL MATESのパフォーマンスが終わり、DJが音楽を流している際にフィッシュボーン(2010年7月31日、他)の登場を求める連呼と手拍子が起きる。そして、音楽が消えて場内が暗くなると、ワアーと熱烈な歓声。じいーん。やっぱり、熱心なフィッシュボーンのファンはちゃんといる! とっても、うれしかった。

 ファンである冥利を噛み締め、贔屓目に聞いちゃうのを自覚しつつ……でも、厳しい目で見ても、今のフィッシュボーンは相当いいし、新しいタームに入りつつあるという新しい息吹きを感じることができた。タイトなドラマーの叩き口に触れても判るように、ちゃんと優秀な人材を確保して、バンドは活性していると思う。00年代中期に解散しかかる前、90年代後期あたりの実演(たとえば、2000年7月28日)は怒濤な激情表出もあり、歌心/歌の行方が見えづらくなったりもしたが、今はそういう部分は(PA音がちゃんとしていたこともあるだろうが)ない。

 一つあれれと思わせられたのは、長年フロント・マンを務めているアンジェロ(2009年11月25日)がほんの少し中央から退く感じ(ステージ上の位置取りもそうだが)になっていたこと。客席へのダイブ回数も減ってきている? でも、それはラインアップ的にも充実している、今のフィッシュボーンの姿をアピールしたいという、彼の考えを顕していたかも。もともと当初はメンバー渾然一体となったステージングを見せていところ、クリストファー・ダウド(鍵盤、トロンボーン、歌)やケンダル・ジョンーンズ(ギター)やウォルター・キルビーⅡ(トランペット、歌。現在は再び復帰)らの脱退で個性的なキャラが減り、よりアンジェロが前に出てバンドをひっぱるようになったという経緯もあるし。アンジェロもすでに40代半ばを超えているはずで気力はともかく体力は落ちていないはずはないし、魅惑のソロ活動にも力を傾けているし、彼が新たな<フィッシュボーンとワタシ>の関係を築こうとしても不思議はないだろう。で、ぼくの所感では、現在それがうまく回り始めていると思えるのだ。

 ほぼ、代表曲を網羅の2時間弱。浮かれるっ。なだけでなく、やっぱり混合ビート・ポップの素敵、音楽や制度の枠に体当たりする勇気、心意気たっぷりの熱さ、などが口惜しいほどに受けとめることができ、ぼくの体内で炎が燃え盛る。(かつての竹馬のバンドである)レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(2007年4月6日)なぞ足下にもおよばないわいという、歪んだ(?)侠気が沸き上がってきて仕方がなかった。

<今日の、人探し>
 本文中に名前を出した、クリストファー・ダウドは今どうしているのだろう。93年作をもって、フィッシュボーンを脱退。が、97年にはシーディ・アーケストラ(サン・ラーのアーケストラから名を取ったろう)名義で『パズル』というアルバムを出した。当時、日本盤はレゲエ・マガジンを出していたタキオンから出された。ライナー、書いたな。そこにはロック(ジェフ・バックリー)、NYボーダーレス・ジャズ(ドン・バイロン、ブラッド・ジョーンズ、ジョシュ・ローズマン)、ファンク(アンプ・フィドラー)、R&B(エンディア・ダヴェンポート)ら各界の逸材を自在に組み込んでおり、結果的に、生理的に幸福なクロスオーヴァー・ポップが浮上。その後の飛躍が期待されたのだが。
 なお、2011年6月22日の項で紹介したアンジェロのソロ作用資金集めは、駆け込みで設定額に届いたようだ。イエイ。
 翌日、ご一行は欧州ツアーのため、北京経由でパリに向かう。早朝にパスポートなくしたァと大騒ぎしてみたり、搭乗手続き時に重量超過で課徴金を請求されたりと、アンジェロは飛び立つまで、大変だったみたいだが。やっぱ、けっこうコドモ?