アトランティック・レコードは、かつて黒人音楽を送り出すレーベルだった。そんなアトランティックにとって初の白人アーティストが66年にデビューしたザ・ヤング・ラスカルズで、キャヴァリエはその中心人物だったシンガー/キーボード奏者。ザ・ヤング・ラスカルズはとってもソウル・オリエンテッドな音楽性を持っていたことで、アトランティックは契約することに踏み切ったわけだが、キャヴァリエはずっと“ブルー・アイド・ソウル”と呼ばれる語彙の代表者でありつづけている名士ですね。近年、彼はザ・MGズ(2008年11月24日)のスティーヴ・クロッパー(2009年7月19日、他)との双頭名義作を2枚、新生スタックスからリリースしている。

 キーボードを弾きながら歌う彼(ハモンド・オルガン演奏はさすがの味を持つ)に加えて、ギター、ベース、ドラム、女性コーラス(キャヴァリエの娘さん)という布陣にてパフォーマンス。けっこうまとまっていて、この編成で普段ライヴをやっているのかと思わせる。当のキャヴァリエはそんなに老けていなくてスタックス発アルバムを聞いても判るように、喉が衰えていない。その歌はスティーヴ・ウィンウッドと結構似ているナと思わせたりするのだが、今回の生だとなんかフィル・コリンズを思い出させたりも。なんにせよ、黒人音楽に耽溺した白人のワビサビをたたえたその歌は、それだけでお金が取れる。演目はザ・ヤング・ラスカルズの曲が比率的には高かったはずだが、随所でオーティス・レディング曲やモータウン曲やマイケル・ジャクソン曲など著名ソウル曲断片を挟み込んだりも。また、終盤にジミ・ヘンドリックスやアトランティック・レコードの白人後輩であるレッド・ツェッペリンのカヴァーもやる。ザ・ヤング・ラスカルズも60年代後半に入るとサイケ・ロック色を強めたりもしたが、そのうれしそうなカヴァー披露に触れて、キャヴァリエはアート・ロック(60年代後半の意気揚々なロック勢に昔用いられたターム)隆盛に一役買ったという自負を持っているのかもナと、ぼくは感じたのだった。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。