南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。今、ブルーノートは日曜日だけでなく、土曜日も開演が“休日時間”となり早くなっているのか。遅刻してしまった。注意ちゅうい。イタリアのクラブ派生ジャズ・ムーヴメントの中心人物たるDJ/プロデューサーが率いる、イタリアの確かな若手奏者が集ったジャズ・コンボのパフォーマンス。サックスとトランペットの二管、ピアノ、ベース、ドラムス。そして、コンテもギター(演奏はこわさないが、いなくてもいい)で参加する。トランペットはザ・ハイ・ファイヴ・クインテットの人気者、ファブリツィオ・ボッソ(2008年11月16日)だ。今様視点でおいしく聞こえるハード・バップを気軽に、ほんの少し自己主張を込めてやりましょう、という実演。コンテのオリジナルもやったろうが、「処女航海」や「キャラヴァン」などベタなジャズ有名曲もいろいろ忌憚なく、程よいアダプテーションを噛ましつつ送り出す。また、イタリア人ジャズ歌手のアリーチェ・リシャルディがけっこうな割合で加わって、華と変化を添える。彼女、前回の単独公演時(2008年7月24日)より、綺麗に見えたかも。

 そして、丸の内・コットンクラブに移動。ヒップホップ時代のリアル・ジャズを送り出そうとする、今年2度目となるロバート・グラスパー(2009年4月13日、他)のパフォーマンスを見る。前回来日後に、彼は旧来のトリオ単位にヴォコーダー/サックス奏者を加えて、さらに一聴ポップで軟派なところもありつつ酔狂度数を高めた路線を提示した『ダブル・ブックド』(ブルーノート)をリリースしたわけだが、今回はそこでお披露目した新カルテットによるもの。ピアノ/電気ピアノのグラスパーに加え、ヴォコーダー/サックスのケイシー・ベンジャミン、電気ベースだけを弾いたデリック・ホッジ(2009年3月26日)、実はグラスパーよりも拍手が大きかったかもしれなく現在かなり注目されてる変調ドラマーのクリス・デイヴという布陣。で、その演奏は、CDよりもベター。というのも、丁々発止しつつ、それぞれの個体の顔がちゃんと見えることをやっていたから。センスはいいと言えないがイカレた髪型をしていたベンジャミンはサックスよりショルダー・キーボードを肩にかけてヴォコーダー加工のヴォーカルを担当する事が多く、ベースのホッジもけっこう弾き口は電気ベースとしては間を重視し変則的。で、フォーリィ(2009年9月5日)とも仲良しのデイヴのドラミングはやはり面白すぎ。身体の中に正しいパルスを保ちつつも、そのなかでなんかコワれてて、ときに爆裂でもあるイビつなビートを自分流儀で叩き倒していて。あれは、ある種の聞き手をしっかり引き付けるワ。そんなサイド・マン演奏のもとグラスパーは指を踊らす(今回はピアノより電気ピアノを弾く頻度のほうが高い)のだが、これまでで一番弾かない公演でもあったはず。でも、それもグループ表現としてみれば、アリ。

 両会場とも、見事にフル・ハウス。不況なんて、嘘みたい。とくに、グラスパーのほうは同ヴェニュー一番の入りだったという。