普段やることが多い、日本人ミュージシャン(に、プラスしてセネガル出
身のパーカッション奏者)を率いてのもの。うち、ギターとベースはJ&B
(2001年6月13日、2003年8月28日)のお二人。わりと軽快な
フュージョン的ノリによるものだが、そういう行き方で人気を得た彼だけに
ハマっているナと実感。いろいろと、いい曲持っているもんな。

 六本木・スイートベイジル139 にて、2部構成によるもの。後半に出てき
たときの渡辺貞夫(2006年9月3日、他)の第一声は、「まだ0対0ですよ」。
この日は対ガーナとのサッカー国際親善試合の日。すごくサッカーに入れ込
んでいるらしくて、彼はドイツにもワールド・カップを見に行ったようだ。
 
 その後半はカボ・ヴェルテ(セザリア・エヴォラで知られるようになった
、西アフリカのセネガルの横にぽっかりある島国群ですね。なんでもエヴォ
ラが言うには、「日本とは交流があったのよ。かつて漁業関連会社があって
日本人が住んでいた。だから、日本人の父を持つ子供も沢山いるわ(笑)」
)出身の両親を持つポルトガル生まれの女性歌手のサラ・タヴァレスがゲス
ト入り。彼女のアルバムはエヴォラをもっと若くしなやかにして、広がりを
持たせたような感じで凄く良い。アルバムで表出していたそよ風のようなと
言いたくなる妙味を全面的にアピールというわけにはいかなかったが、うき
うきしながら聞けたナ。彼女は自分の曲と渡辺貞夫の曲を数曲歌った。うち
、アンコールで歌ったのは、渡辺の「マイ・ディア・ライフ」。スクイーズ
の「テンプテッド」(オリジナルで歌っていて、ソロになってからもこの曲
を取り上げているポール・キャラックの曲だとぼくはずっと思いこんでいた
のだが、今回調べたらクリス・ディフォードとグレン・テルブルック:2005
年8月8日の共作だったのねー。あららあ)ともちょい持ち味が重なるスピ
リチュアルな味を持つ名曲。カボ・ヴェルテはポルトガル語が公用語だが、
彼女は英語でMCしていた。

 彼女の歌を聞きながら、実は渡辺貞夫って自分のイヴェントでいろいろと
変な人(ではなく、見どころ聞きどころある人)をめざとく呼んできている
よナとも思う。80年代中期のアフリカ・バンバータ以降、いろいろと。

 蛇足だが、この日は父の命日。この10月1日には一周忌法要を終えて一段
落。ふう。決して音楽嫌いの父ではなかったけど(音感とかは、ぼくより良
かったはず)、彼は音楽べったりのぼくの生活をどう考えていたのかな? 
あまり、親とはコミュニケーション取っていなかったから……。3時すぎま
で六本木で知人と飲み、タクシーで帰宅しようとしたら懐かしい知り合いか
ら電話があってそのまま中目黒に。そして、朝まで。やんちゃな生活いつま
で続くかなーと思いつつ、なんとなく続いてるなー。

セルジオ・メンデス

2006年9月29日
 ここのとろ、ずっとブルーノート東京で来日公演をやってきた彼ら(20
03年9月2日、2005年8月9日)だが、ブラック・アイド・ピーズ(2001
年2月7日、2004年2月11日)のウィル・アイ・アム制作の『タイムレス』
のブレイクで今回は有楽町・東京国際フォーラムのホールA(東京は、追加
でスタジオコーストも)での公演となる。新機軸となる本作がもたらす成功
を何より本人が期待していただけに、誰より本人がここでのパフォーマンス
をウッキッキになって迎えたんじゃないかな?

 そのヒップホップ/現代R&Bのりの新作からの曲と、「ルック・オブ・
ラヴ/フール・オン・ザ・ヒル」のメドレーをはじめ往年のゴールデン・ナ
ンバーをうまくかみ合わせた構成。キーボード/相手のヴォーカルを担当す
る本人に加え(デカいステージというのに、毎度と変わらぬカジュアルな格
好でした)、ドラム、パーカス3(うち一人は、ラッパー・パートを全てこ
なす)、ギター、ベース(一曲、新作でマルセロD2がやっていたブラジル
語によるラップをやる)、シンセ、女房を含む女性ヴォーカル3。ラップを
しないほうの、ブラジル出身だろうラップをしない二人のパーカッション
奏者はとても芸達者。一人はアクロバティックな踊りも披露する。

 一切、プログラム音を使っていなかったのは、メンデスのリアル・ミュー
ジャンとしての矜持の表れか。演奏時間は1時間40分ぐらい。でも、曲数も
多かったし、もっとやっていたように感じた。

 秀でたセンスと技量を併せ持つテナー・サックス奏者率いる無伴奏サック
ス5重奏団、六本木・スーパーデラックス。2回のステージ回しで、ぼくは
遅いほうの22時30分からの回を見る。もちろん、生音でのパフォーマンス。

 彼らを見るのは2000年12月16日以来だが、あり方がだいぶ変わってきて
いるな。かつてはバッハ曲を格調高くサックス群のアカペラでやりますとい
うのが主題だったはずだが、今はもっともっと下世話になっいる。MCでエ
チオピアの曲と説明したものもあったし、けっこう清水のオリジナルもやっ
たはず。「東京タブー」と呼んでいますと紹介した曲は、バリトンが加藤茶
で有名な「タブー」のような音を奏で、そこに清水が「リンゴ追分」みたい
というか美空ひばりが歌いそうな演歌調メロディを重ねるものだったもの(
さらに、清水は中間部でチャルメラのメロディも弾いた)。他も、民謡調と
いうか童歌調というか、そういう感じの曲を彼らはいろいろやったはずだ。
それは、国際派の清水だけに海外の聞き手をイメージするところがあるのか
もしれない。

 まさしく聖と俗を行ったり来たり。清水は吹き方もクラシック的な奏法か
らより離れて汚い音も使っていたし、4人のサックス・アンサンブルに彼が
ソロを乗せるというノリも濃くなったはずだ。でも、ほんのちょっとやった
(2、3曲ぐらいかな)バッハ曲は本当に美しく、魅力的だと思った。クラ
シックなるもの、ゲージツ的なるものに過剰に拒否反応を示す私でも無条件
に。この後、彼らはレコーディングに入り、来年は鋭意ライヴを行うとのこ
と。

 途中に、4人のサックス奏者(まだ、20代ぽい)が引っ込み清水は女性ダ
ンサー(というか、パフォーマー)と絡む。このときは、フリー・インプロ
ヴィゼーション。ときに、動きでもパフォーマーと絡んで(音を出さないで
、吹くポーズをしたかりも)彼なりのウィットを表出。といった具合で、ぜ
んぜんかしこまって聞く内容ではない。なのに、演奏中はお酒を販売しない
なんて、そんな殺生な。でも、禁煙にはなってなくて、横から臭い匂いが漂
ってきて、コドモの私はムクれましたとサ。


キーラ&OKI

2006年9月24日
 渋谷・デュオ、根っことつながったかっとびアイリッシュ7人組の実演は
2部構成にて。まず3曲目からOKI(2004年8月27日、2006年8月11
日)が出てきて、絡む。一緒に双頭リーダー・アルバムを作っているだけあ
って、8人目のキーラといった感じで無理なく重なる。毎度の如く、キーラ
の面々(2004年8月27日、2004年8月28日)はいろいろと持ち楽器を変
える。そういうバンドに悪いバンドはいない。

 2部はメンバーがお客を煽ったこともあり、最初から総立ち。山口洋、ド
ン・マツオ、OKIも曲によっては加わる。マツオは1曲はギターを弾いた
が、あとはいい加減なヴォーカルで大活躍。ほぼメンバーをしたがえる感じ
のもので主役状態。それはローナン(若いとき、ブライアン・セッツァーを
好きで聞いてとのこと)らメンバーの信任を受けなければできないものだろ
うけど、いい根性しているナ。彼が率いるズボンズ(2000年12月18日、2
001年7月15日、2004年5月6日)では喉が弱いと思わせる曲面も
あるが、ここではいっさいそれを感じさせず。    

ガル・コスタ

2006年9月22日
 45年生まれのブラジル・ポピュラー音楽の女王様をありがたや〜と南青山
・ブルーノート東京で見る(セカンド・ショウ)。けっこう太った彼女(も
のすごく昔、プレイボーイ誌かなんかでヌードになって話題を呼んだことが
あったはず)を、生ギター、電気アップライト・ベース、ドラム、サックス
/フルートの4人がしんなりとバックアップ。曲は「イパネマ」や「コルコ
ヴァド」や「ジサフィナード」や「トリステ」など、有名曲が中心。英語の
スタンダード風の曲もやったな。実に、さらりと歌っていてどってことない
。でも、なんかいいかもなあ、ボサノヴァ曲は美しいなあと思えたのは間
違いない。やはり、それは偉大な蓄積あればこそでないかと、ぼくは酔っぱ
らったアタマで思った。MCは英語にて。6度目の来日と言っていたような
気がするが、そんなに来ているのか。ぼくが過去公演ではっきり覚えている
のは、四半世紀以上前に中野サンプラザでやったコンサート。けっこう大が
かりなショウで、“ガル・トロピカル”って同名アルバムと連動しての出し
物だったっけか。イキがりたい年頃のぼくは、背伸びして、見に行ったんだ
よなあ。私の音楽暦の年輪も多少感じたショウでした。


バズコックス

2006年9月21日
 結成30周年となる、ロンドン・パンクを代表するバンド。フロントの二人
がピート・シェリー他オリジナル・メンバーで、それなりの見てくれを持つ
ベースとドラムは後から入った人なのかな。渋谷・デュオ。すげえ、人が入
っていた。同じ建物にあるO・イーストでもできたんではないか。やっぱり
、歴史に名を刻んでいるバンドは強いなー。ほんとんど切れ目なくザクザク
さととっぽさを併せ持つギター・ロック曲をつないでいくなか、前のほうの
客はモッシュ。パンク/ニュー・ウェイヴ期のころはそういう派手なライヴ
受容形態はなかったわけで、過去と今の合体があるなあと思ったか。もし、
黄金期をリアルタイムで聞いている人なら40才をとっくに過ぎているはずで
、客の平均年齢はそれよりは下に見えた。曲数はそうとうやったはずだが、
アンコールを入れてちょうど1時間ぐらい。ワイヤー(2004年2月29日)の
ときも短かったが、それでいいのだと思わせる音楽様式は確かにあるのダ。
 まず、渋谷・Oウェストで、セネガルのヒップホップ・チームのダーラJ
を見る。Oウェストは本当に久しぶりに来るが、ロビーがなかったりするも
のの、非常に天井が高い(フロア3階ぶんぶちぬきとなるのか)まっとうな
ヴェニューであると再認識。ショウはちょうど30分遅れでスタート。白人の
DJが回すなか、民族衣装ふうの服を来た3人のブラック・ガイが登場し、
肉声をかます。15年前のパブリック・エネミーを簡素にしたような曲をはじ
めDJ音はたいしたことないが、やはり3人の地声は強力。もっとアフリカ
要素をまぶした要素のトラックを使ってえというのはこっちの身勝手な感想
だが(だって、日本のラップ・チームに日本要素を入れて欲しいとは思わな
いもの)、強く弾む声が出てくるだけでこれはアフリカと繋がった表現なの
だと納得させるところがある。彼らはときにぽく吃音をラップの中に入れた
りもするし、レゲエ調曲(これは何曲かあった)では歌ったりもした。フラ
ンス語圏のはずだが、MCは英語にて。ラテン調というより、オゾマトリを
想起させる曲が終わると、グラシアスと彼らは言う(笑)。憎めない感じも
よろしげな人たち。

 最後まで見ることができずに移動し、丸の内・コントンクラブ(セカンド
)。ケニー・ラティモアとシャンテ・ムーア、ソロとして活動してきて、デ
ュオ・アルバムもリリースしている(次作もそうなる)夫妻による連名ステ
ージ。バックはキーボード、ギター、ベース、ドラムにコーラス3人(男1
、女2)。まず、ジーンズに趣味良く黒い上着を来た二人の、カジュアルで
清潔感のある格好がいいナと思う。二人によるデュエット曲を節目節目に置
き、各々が2、3曲ぐらいづつ交代で歌っていくといった構成。ムーアはと
っても綺麗な人、それだけでもフロントに立つべき人でしょう。歌の能力だ
けを見れば、年下の旦那のほうが少し上。それは、夫婦間にいいバランスを
与えるだろうなあと感じた。ラティモアは、リーダー作でも取り上げて
いたサザン・ソウル調の「アイ・ラヴ・ユー・モア・ザン・ユール・ネヴァ
ー・ノウ」(アル・クーパー作曲のブラッド・スウェット・ティアーズの曲
で、ダニー・ハサウェイもカヴァー)やザ・ビートルズの「ホワイル・マイ
・ギター・ジェントリー・ウィープス」も歌う。とくに、原曲のノリ(ゲス
トのエリック・クラプトンがソロを取っている)をひきづりギター・ソロを
フィーチャーしがちな後者をそれに陥ることのないアレンジでやっていたの
には少し感心した。デュエットでやる場合はベタベタ愛撫しあうかの如く歌
いあうというのはなしに(セックスを想起させる、なんてことはこれっぽち
もない)、実にジェントル&テンダーに事を運ぶ。でも、それが二人の風情
や格好にもあっていて、こういう円満かつ洒脱なソウル・デュエットがあっ
てもいいのだとぼくは大きく頷いた。いいショウだったな。二人はステージ
ですれ違うときに、お互いの手や顔にほんのちょっと触れたりして、それも
いい感じだ。

  
<来日ミュージシャン、CMさんの日記>
 うわあ、今日は僕にとって最高の日だ。もう日本には何度か来ていて、い
い国だなとは思っていたけど、これで決定的になっちゃった。僕は日本に住
むべきなんじゃないか、なんて思ってしまったぐらい。僕は元々東京を歩く
のが好きだ。道は狭いし、お店もみんな小さい。でも、アメリカにいるとき
よりも背が高くなった気分になれるのがうれしい。それに、みんな優しく接
してくるし。で、今日は買い物に出てある靴屋さんに入ったんだけど、僕は
そこで目が点になったね。なんと、男性用の革靴にとっても底の高い靴があ
ったんだ。さっそく履いてみたら、ばっちりフィット。わお。この靴を履く
と、全然見え方が違うんだ。オー・マイ・ゴッド。背が高くなるってなんて
素敵なことなんだろう! アップライト・ベースだって、これを履いて弾い
たほうがしっくり来るだろう。よーし、ライヴも絶対にこの靴を履いて出る
ぞ。きっと、カッコ良く見えるだろうなあ。ワクワク。次に来たときは別な
靴を買いたい。次の来日が楽しみだ。

 以上、もちろん作り話です。マクブライドのファンで怒った方がいた
らごめんなさい。でも、新し目に見える厚底靴(わりと黒の革靴ふうなのだ
が、カカト高が10センチはあったはず。爪先側の厚さは4センチぐらい)を
履いていた彼の風体に退きつつ(やっぱ、あれは違和感あるというか、カッ
コ悪い。ジーンズ地のパンツはフレアーとかではなく、ストレートのくるぶ
しまでの長さのやつ)、嬉しそうにライヴする彼を見て、ぼくはそんな茶々
を入れたくなってしまったのだ。……デモ、誰カ彼ニしーくれっと・ぶーつ
ノ存在ヲ教エテアゲテ欲シイ。って、日本で買ったものでないかもしれない
けど。

 以下は、マジメな記載。少し前にローパドープから3枚組安価ライヴ盤『
ライヴ・アット・トニック』というのを出したマクブライド(2000年11
月1日)だが、そのときと同じレギュラー・カルテットでの来日。ジェフ・
キーザー(2005年1月18日)とロン・ブレイク(2000年11月1日)、そ
してテリオン・ガリーという布陣。キーザーはグランド・ピアノと電気キー
ボードを3台並べ、後者のほうを主に演奏。ブレイクはテナー、ソプラノ、
フルートを吹き分ける。ドラマーのガリーはNYのジャズ界ではけっこう伸
している新進と言っていいか。ジャッキー・テラソンの00年ブルーノート盤
あたりが最初のメジャーな仕事でジェルバ・ブエナの2枚のアルバムにも参
加している人だが、なるほど正確かつシャープながら微妙な癖を持つスティ
ック裁き(スネアを2種類並べていた)は見ててかなり面白かった。キーザ
ーやブレイク(彼もジェルバ・ブエナには2枚とも参加)もガリーのことを
自分のリーダー作で起用しているから、一緒にやっていてもとても印象深い
人なのだろう。ただ、照れ屋なのかも知れぬが、ブレイズの髪形と巨漢に似
合わず仕種は陰気。

 そんな4人ががっちりと、ときに硬派な、もう一つのフュージョンなるも
のを送りだす。マクブライドはウッド・ベース(かなり外見的にはボロって
たものを使っていた)を主に弾くものの、曲によってはかなりエフェクター
をかける。それじゃ、エレクトリックを弾いても同じじゃんと思わせるぐら
いに。ま、さすが所々に若手(1972年生まれ)で一番の売れっ子ジャズ・ベ
ーシストだなと思わせるところはあったのだけど。

 丸の内・コットンクラブ、セカンド。満員。そして、そうとうに熱烈な反
応。それには、いささか驚く。彼ってそんなに人気があったの? 会場には
ブラッド・メルドー(2002年3月19日、2003年2月15日、2005年2月2
0日)のトリオで来日中のジェフ・バラードもいたようだ。なお、CMさん
はそんなにちびではありません。170センチぐらいかな。
 聞くべきポイントを持つアメリカのインディ・バンドを二つ集めた、お得
な公演。渋谷・クラブクアトロ。ともに、1時間ぐらいづつのパフォーマン
スをやった。

 まず、何かと印象的なアーティストを輩出するネブラスカ州オマハ出身の
カーシヴが登場。あら、彼らが先ですか。で、トランペット(ときにキーボ
ードも弾く)とサックス奏者(女性、日本人だったかも。日本で雇ったのか
な)を従えてのパフォーマンス(管奏者は両者とも譜面を前にする)。ちょ
っとアヴァンギャルド目なホーン・リフと拮抗するギター・サウンドを持つ
ミディアム調のオープナーはなかなかにカッコ良かった。朗々と歌いあげる
リード・シンガーの歌い口は好みではないのもの、陰影というかちゃんと襞
を持つグループ表現のあり方にはかなり共感を覚える。と、思っていたら、
ギター奏者がスライド・バーを使用した3曲目だか4曲目だかの綻びた情緒
を持つ曲はもろにキャプテン・ビーフハート&ザ・マジック・バンド影響下
にある曲じゃないか! ザ・マジック・バンドはトロンボーン奏者も擁して
いたりしてたので、彼らがホーン隊をつけた表現を求めるのもすんなり納得
できた。かなりおっさんくさい風体を持つバンドだが、ちゃんと年季を積ん
でいるだけのことはあるぞと思わせる連中。MCも非常に人間味のあるまっ
とうなもので、もっと聞かれるべき、嵐のココロを持つ大人のバンド、とい
う印象を強くする。

 30分近くの休憩を挟んで、カリフォルニアのトリオ・バンドのザ・ヴェル
ヴット・ティーン。おお、これはギターを弾いたり、コンピューターで音を
出しながら歌う(キーボードを弾いて歌った曲も1曲あったか)ジュダ・ラ
グナーのワン・マン・プロジェクトと言ってもいいのではないか。前はまた
違った感想を与えるものであったらしいが、ラグナーのふくらんだ妄想をリ
ズム隊が後を追いつつ補完していくという感じでショウは進んでいく。そし
て、個人の某弱無人さが全体を支配しているノリはザ・ホワイト・ストライ
プス(2003年10月21日、2006年3月5日)と重なる感じがあるとぼくは
思った。また、いくつかの曲調(ポップな曲調を披露する場合もある)で想
起したのは、ザ・マーズ・ヴォルタ(2004年1月7日)。どっちにしろ、ど
こか現代的とも感じさせる<とりとめのなさ>や<破綻の感覚>を持ってい
るわけで、人気が出ても不思議はないなと思った次第。もう少し、ラグナー
のキャラが立っていればもっと多大な支持を集めているはず。


エイモス・リー

2006年9月13日
 アメリカのブルーノートが送りだしている男性シンガー・ソングライター
。今回の公演はセカンド作リリースをフォロウする、ショーケース・ライヴ
。短めの演奏時間でありセット・リストにはアンコール曲も書いてあったの
に、アンコールをやらないのはちょい印象が悪い。前回(2005年9月8日)
と同じ面子のバンドを率いてのもの。前回のときよりこなれていて、前回以
上にいい印象を持ったかな。原宿・アストロホール。
 ジャズ・ピアトニストとのデュオで行った前回公演(2005年9月2日)と
異なり、ちゃんとバンドを連れてのもの。前と同じ21歳童顔ピアニストに加
え、縦ベース、ドラム、エレクトリック・ギター(ときに、生理的に爆裂し
たソロを取る)というサポートのもと、アコースティック・ギターを持って
彼女は歌う。なんでも、この4月から(同月に米国ではデビュー・アルバム
を出した)いろいろと回っているらしい。編成が異なっているから違って聞
こえて当然なのだが、ロックっぽくなったナという印象を持つ。それは本人
も認知していることで、次作でやってほしいプロデューサーで頭に浮かぶ人
は誰なのと聞いたら、まずナイジェル・ゴッドリッチ(レイディオヘッド、
U2、ポール・マッカトニー他)の名前を出した。来年はボナルーに出るこ
とが決定しているとか。ともあれ、そうであっても頑にアップライト・ベー
ス奏者を起用しているのは非常に共感するところ。歌い方はジャジーという
より、今回はとてもソウルに影響を受けた歌い方をするんだと感じた。ただ
、声が全然黒っぽくないだけで。来年の3月には18歳になるので、そしたら
親元を離れNYに出るのだとか。一人で? それとも誰かと一緒に暮らすのと
という問いには、悪戯っぽく答えを濁しました。

 丸の内・コットンクラブ。セカンド・ショウを見たが通常よりも1時間早
い8時半のスタート。その理由をお店の人に聞いたら、未成年だからとのこ
と。ちなみに、本国ではフツーに夜遅くもショウをやっているそう。

ブロンディ

2006年9月7日
 パンク/ニュー・ウェイヴ期にヒットを連発した、デビー・ハリーをフロ
ントに立てたNYのポップ・バンド。彼女に加え、ギター2、キーボード、
ベース、ドラムという布陣だったか。ハリー以外にオリジナル・メンバーは
二人と、誰かが言っていたよーな。と、なんか投げやりに書いているようだ
が、ぼくはもろにリアル・タイムながら、それほど彼女たちの表現に浸って
いない。なんか、ぼくにはバブルガム過ぎて、あまり興味が持てなかったん
だよなー。渋谷・Oイースト。

 とはいえ、かなり耳馴染みの曲はある。客層は普段のロック・コンサート
よりは年齢は高め、曲によってはけっこう一緒に歌っていたりもしたな。ハ
リーさんはだいぶ太っていた(時代遅れの緩いボディコンみたいなのを着て
た)が、もう還暦を過ぎているわけで、それを考えたら凄いかも。途中で、
なぜかロキシー・ミュージックの「モア・ザン・ディス」をソツなくカヴ
ァーしたりも。
 昨年(7月31日、8月2日)に続いて来日する、サトーお気に入りの新進
UKロック・バンド。基本の味は変わらないが、線が太くなっているし、見
せ方もより上手くなっているし、確実に成長しているナ。パッションあり。
みんなで声を出し合う曲など約3分の1の演目はXTCをやはり思い出させ
るが、王道のUKキンキー・ロック道を歩んでいるゾと思わせるところも出
てきた。渋谷・Oイースト。

ビヨンセ

2006年9月4日
 ちょうど、この日がビヨンセ25歳の誕生日であるとか。日本武道館、誕生
日を祝う会というのが名目になった、ショーケース・ライヴ。すべて招待者
、会場は満員。

 全員女性のバンドを従えてのパフォーマンス。ギター、ベース、キーボー
ド2、管楽器奏者3、ドラム2、パーカションという布陣。うわあ、ツイン
・ドラムだ。打ち込みっぽい音を開かれた場で生バンドで披露とするときに
ツイン・ドラムで事にあたるという送り手は、ファレル・ウィリアムス(20
06年4月2日)、マッシヴ・アタック(2006年8月13日)に続いて、ぼく
が見ただけでも今年3組目。ツイン・ドラムの効用について、思いをはせず
にはいられなかった。

 イントロだけの曲を除いて、ビヨンセがちゃんと歌ったのは5曲。うち1
曲はかつて組んでいたデスティニー・チャイルド(2001年6月25日)曲の
メドレーで、3曲が新作『B’DAY』から。あまり変わらないぢゃんとい
う声も渦巻く新作だが、前にちょっと触れたようにぼくは大いに評価する。
だって、変わらなくていい過激、狼藉、グダグダ(それらは、偉大なアフリ
カン・アメリカンの種を胸がすくぐらい引き継ぎ、蓄積したものである)を
胸を張って展開していると思うから。
 
 曲によっては女性ダンサーが4人。彼女たちはスタイリッシュな恰好をし
ているビヨンセに合わせた恰好で、一緒にワザありで踊り、ポージングをす
る。素晴らしい。といったように、まさにこれからやるだろうツアーを抜粋
したようなショウ。立派。うきうきできる。感心もできる。これだけ、ちゃ
んとやっているなら、コーラス隊もつけて欲しかった。ちゃんと生演奏で行
こうとするくせに、コーラスだけは仕込み音で聞かされるのは少し違和感が
ある。

 ヴィジョンに映されたビヨンセはとっても綺麗で、スタイル良好。まさし
く、スターだな。40分弱の実演。バンドが出てアンコールに応えかかったが
、スタッフが演奏を止め、イントロだけで終わる。

東京JAZZ

2006年9月3日
 毎年やっている、ジャズ・フェスティヴァル。今年は有楽町・東京国際フ
ォーラムのホールAで開かれた。この日は二日間やるうちの、二日目。

 ぼくはブルーノート東京が仕切っている昼の部の最後の出演者であるイン
コグニート(2002年12月20日)から見る。メンバー紹介のとき一人一人
、ちゃんと出身国を言う。へえ、名UKドラマーのリチャード・ベイリーは
なんとトリニダード・トバゴ出身なのか。シンガー陣はスリランカとジャ
マイカとセントルシアの出。かつては、歌手だけは積み重ねと上手さでア
メリカ人を雇うとブルーイは明言していたが、ライヴ・メンバーの場合はそ
うじゃなくなったのね。最後に、「肌の色なんか、関係ない。我々は、ワン
・ネイション・アンダー・ア・グルーヴ。そして、ワン・ラヴ」みたいなM
Cで締めくくり、メンバーはボブ・マーリーの「ワン・ラヴ」が流れるなか
引っ込んだ。臭いけど、本当にリーダーのブルーイってそういう人なんだよ
なあ。なお、場内かなり音が響いていて、音質は悪かった。

 夜の部は、マーカス・ミラー(2001年6月14日、2003年8月19日、
2005年8月21日、他)のバンドから。プージー・ベル他、お馴染みの面
子に加え、今回はカサンドラ・ウィルソンで来日もしているNYで一番のハ
ーモニカ売れっ子のグレゴア・マレ(2004年9月7日)が同行してい
るのが目新しい。前にマイケル・ケイン(2003年11月18日、23日)も
あいつはいいよねと言っていたことがあったけど、なるほど情緒を持ちつつ
吹ける人。MCで欧州のどこかの国出身と言っていた。ミラーは祭りだから
という気分はあったか。リズム隊だけでずんずん進んでいくような美味しい
ラフさを見せるときもあったし、やった曲は自作はなしにしてスティーヴィ
、マイルス、ザ・ビートルズの曲カヴァーだけを披露(自分のアルバムで
も披露済の曲だけど)。お馴染みのバスクラも吹かず、持ってきてなかった
んだろうけど、今回のライヴ内容じゃ確かに必要はない。それから、今回は
なんとフランク・マッコム(2004年4月15日)がフィーチャード・アーテ
ィストとして登場するのが売り。ミラーとマッコム、意外な組み合わせだが
、これはミラーのリクエストであるという。マッコムは3曲目から加わり、
自作曲とハサウェイ曲を歌う。フェスの出し物らしい、軽さと広がりが悪く
なかった。

 続いて、チック・コリアと上原ひろみ(2004年11月25日、2005年
7月31日)のデュオ。グランド・ピアノを互い違いにおいて、二人は顔を見
合わせながら演奏する。まだ上原が静岡県の高校生のときに、彼女を認めた
チックの来日コンサートでデュオ演奏したことがあったという。ステージ背
後のヴィジョン(それにしても、どうしてあんなに粒子の粗い、鬼のように
解像度の低いものを使用していたのか。見づらくてしょうがない。NHKが
オーガナイズするイヴェントなのに嘘みたい)を見ると、本当に二人は嬉し
そうに弾いている。受け手も大方大喜びだったようだが、ぼくにはなんかや
りとりが軽いと思えた。

 最後は、ザ・グレイト・ジャズ・トリオに渡辺貞夫(2002年12月14日、2
004年12月17日、他)が加わるという出し物。名手ハンク・ジョーンズ(
なんと、現在88歳)が下の世代の立ったリズム感を持つリズム・セクション
と組むことで溌剌としたピアノ・トリオ表現を実現しようと大昔に企画され
た人気グループで、今回はジョン・パティトゥッチ(ベース)と普段はシッ
ク(2003年4月15日、2003年8月24日、2006年4月11日)で来日してい
るオルー・ハキム(ドラム)が協調者となっている。3曲目から渡辺貞夫が
加わったが、旧ザ・グレイト・ジャズ・トリオ(リズム隊はロン・カーター
:2001年6月7日、2004年1月14日と故トニー・ウィリアムズ)と渡辺
は76年と77年に一緒に共演作を作っている。この顔ぶれで、翌日にレコーデ
ィングすることになっているとか。最後はビル・エヴンスの「いつか王子様
」がやるが、このときチック・コリアと上原ひろみとまだ15歳の米国人ジャ
ズ・ピアニストのオースティン・ベラルタ(前日に出演した)も登場し、そ
れぞれにピアノを弾く。破綻していたが、上原が一番アトラクティヴだった
。そしてアンコールではまた皆で登場、はしばし相談(ブールスで行くか。
じゃテーマはなんにする、キーは……というようなことを話していたのだと
思う)し、なんとセロニアス・モンクの「ブルー・モンク」を始める。この
とき、ピアノは2台置かれており、最初はコリアが一人弾いていたが、その
あとはコリアとジョーンズ、上原とリベルタが仲良く一つのピアノに向かい
連弾、つまりは4人一緒にピアノを弾く。なんか、ひねくれ者のワタシもそ
の図はいいナと感じた。

 なぜか成り行きで会場内で開かれた打ち上げに顔を出したのだが(11時ぐ
らいだったかな)、最初に出たマーカスたちもみんな帰らずにいるんだよな
あ。おおぜい。昼の部のロベン・フォード(2004年4月21日、10月22日
、他)とかもいたなあ。そのとき、ジョーンズとベラルタがじっくり話し込
んでいたりとか、いろいろ興味深い図が見られました。
      

ブランドン・ロス

2006年9月2日
 あっち側を見つつ、かなりこっち側で淡々と語ろうとした実演と言えるだ
ろうか。NYのお洒落な特殊ギタリスト/シンガー(2004年9月7日、20
05年6月8日、同9日)の単独公演は弟分であるツトム・タケイシ(2004
年5月28、同29日。2005年6月8日、同9日)とのデュオ・パフォーマンス
によるもの。それゆえ、エレクトリック・ギターは使わず大小のアコーステ
ィック系ギターを4本並べて用い(でも、ストラップを付けていたギターは弾
かなかったはず)、タケイシもガット・ギターみたいなベースを弾く。単音
使いではあるけれどベース音がギターの音に似ているので、ギターのデュオ
という感覚もそこにはあった。二人とも椅子に座っての演奏でした。

 丸の内・コットンクラブ。ファーストとセカンドの両方を見る。やはり、
ヴォーカル・ナンバーは良い。もっと歌ってほしい、とくにこういう簡素な
設定のライヴならば。セカンド・ショウのほうが多少迷宮にもっと入ろうと
したところはあったか。あとセカンドでは、ロスは裸足でステージに登場し
ていた。蛇足だが、今回ロスを見て、実はP-VineレコードのR&B系A&R
のY君にそっくりであることを発見し、口あんぐり……。

 
 ぼくはロスのことを最初、オリヴァー・レイク(2003年11月18、同22
日)のレコードで知った。80年代初頭のころか。その前任者はやはり不思議
な感覚をたっぷりと持つマイケル・グレゴリー(・ジャクソン)だったわけ
で、ロスの演奏や佇まいに触れながら、ぼくは彼のことをすうっと思い出し
たりも。もう10年近く音沙汰がないような気もするが、彼は元気かなあ。な
んだかんだ言ってマイケル・グレゴリーはいろいろとリーダー作を出してい
るが、ぼくのなかで一番印象に残っている彼のアルバムは、84年ごろにアイ
ランドから出したザ・ポリスみたいなポップ・ロック盤『シチュエイション
X』。なんか、あれ妙な切実さがあったんだよなあ。

 日比谷野外音楽堂。順に、渋さ知らズ、ROVO、コノノNo.1(2006年8月
26日)が出演するという、豪華イヴェント。もちろん、立ち見も沢山出ての、
満員。

 渋さ(2006年1月14日、21日、他)は楽曲にマンネリ感はあるものの
、かなりの好演。もう、聞き手はしっかりついている。だったら、レパート
リーでもっと冒険すべきではないか。って、そうすると、きちんとリハが必
要になってくるのかな? 相変わらず腰が低く見える不破大輔(2005年12
月22日)がスケージ上でかけているダサいショルダー・バッグが気になっ
た。

 続いて、近くスタジオ新作(非常に、大人な仕上がりという印象を得た)
を出すROVO(2006年7月7日、他)。別に派手な動きをするわけではな
いが、6人がタペストリーのように絡んでいく様を目の当たりにできる実演
はみらりおいしい。勝井祐二(2006年5月30日、他)は自己バンドのほう
に備えて、渋さのほうには出ていなかった。

 そして、コノノNo.1。偶然もらったホイッスルをピーピー吹きながら見る
。超たのしかった。それに関して、今年一番。もう、イっちゃったナ。そし
て最後には、ROVOや渋さの人たちも参加してて、和気あいあいの怒濤。

コノノNo.1

2006年8月26日
 デカい音を出せるヤツが偉い! といった具合で、伝統的なパーカッショ
ンのアンサンブルに原始的手段でアンプリファイドしたリケンベ音(親指ピ
アノ)を注ぎ込んだら、なんとも胸の空くイってるダンス・ビート送出グル
ープに、という図式を持つ、アフリカのコンゴ民主共和国のリケムベ・グル
ープの代表格。もともと、結成されたのは35年強も前だという。その電気化
音はチープな装置経由ゆえノイズまじり(現在は他の経路でも音を出してい
るが、彼らは30年前の学校が使っていたような大きな朝顔型のスピーカーを
拡声手段として用いている。今ツアーにも彼れらはデコボコになったそれを
二つ持ってきてステージ左右に並べているが、一つは壊れてしまってダミー
となっていた)。だが、それが逆にいい味/いい感興を導き出したりする。
その面白さは、レゲエのダブ誕生過程やハウスの808使用法の妙味にも繋
がる、ポップ・ミュージックの美味しくも不思議なツボでありますね。

 今回の来日メンバーは、グループ創始者で70歳を越えているマウング・ミ
ンギエディを中心にリケムベ奏者が3人、打楽器奏者が3人という布陣。多
くは歌も烏合の衆的に歌う。オリジナル・メンバーは戦争によって多くが行
方不明になってしまったというバイオどおり、ミンギエディ以外の人たちは
若めだ。リケンベのうち一つは強力なベース音担当でまるでベース奏者がい
るみたい。打楽器奏者のうち、前方中央に位置する女性(紅一点)は複数の
カウベルのようなものを叩き、後ろに位置する男性二人は手作りっぽい銅の
長い太鼓を二つ並べたもの、スネアと錆びたボロボロの鉄板を重ねたシンバ
ルをそれぞれに叩く。パフォーマンスだと、ミンギエディは後ろのほうで地
味にリケムベを弾いているだけで、現在の生演奏の主導は若い人たちが取っ
ているように見える。

 メンバーの「踊ッテクダサイ」という日本語の掛け声もなかなか(そうい
うえば、マイクで拾う人の声も最初から濁っていました:笑い)。当初はま
ばらだった会場も音と歌声が出たとたんに人がどばあって集まり、大ダンス
大会に。アルバムで聞けるまんま、それ以上何を欲する? 脳味噌とろけそ
うな快感とダンス衝動がそこにはたっぷり。途中出てきて女性奏者とダンス
で絡んだ人は、コンゴ出身日本在住のミュージャン/ダンサーであるそう。
ステージ下手には手書きの“雰囲気な" 看板が立てかけられている。客席側
から見ると、その上にターンテーブルが置いてあるようにも見えて、いつDJ
が出るのかと期待した人がいたかも。その雑食狼藉音はDJでもなんでも来い
! というものであったし。

 この日のパフォーマンスは修善寺・サイクリングセンターにおけるメタル
モルフォーゼ06への出演(ソーラー・ステージ)。会場横には、スポンサー
ドしているローランドやコーグなどの、最新の技術をいかにフィードバック
しようかと奮闘している電気楽器/装置メイカーの看板が出ているわけで、
その対比も実に愉快。酔っぱらった頭で、ひゃははははあとなった私であっ
た。全体にPA音が小さすぎるような感じがしたが? 卓は同行の若い欧州
人がやっていた。
 デビュー・アルバムが英国1位になったそうな、21歳という英国人シンガ
ー・ソングライター。恵比寿・リキッドルームでの、ショーケース・ライヴ
。とっても地味な弾き方をするキーボード奏者をバックに、アコースティッ
テック・ギターを弾きながら7曲披露する。

 甘いマスクの人であり、ちゃんとパフォーマンスの出来る人。ぼくの好み
では陰影をあまり持たないレット・ミラー(2003年2月21日、2006年6月
9日)より魅力的、となるかな。曲はこの前のテディ・ガイガ(2006年6月
14日)ーのほうが好きか。でも、枯れ気味の声も悪くないし、パフォーマン
ス能力は彼のほうがある。最後にキーボードだけの音で歌った「ザ・ラスト
・グッバイ」はなかなかスタンダード的な曲。けっこう、そういう曲が似合
う人なのだな。
 まず、渋谷・クラブクアトロでマデリン・ペルーを見る。ユニヴァーサル
・ミュージックがわざわざ打った公演、この大人のヴォーカル表現は売れる
と大いに踏んでいるんだろうな。ぜんぜんステージ上の姿が見えなかった昨
年の来日公演(2005年5月10日)と異なりばっちり見える。バッキングは
キーボード、縦ベース、ドラム。キーボード奏者はピアノも弾くが、オルガ
ンを弾いたときのほうがより印象的。と思ったら、MCで紹介れた名前は、
ジョシュア・レッドマン(2003年1月16日)やビル・フリゼール(2006年5
月14日)でブルーノート公演に同行しているサム・ヤエルだ。ノラ・ジョ
ーンズもお気に入りのヤエルはペルーのアルバムに参加しているが、リズム
隊の人たちもそうなのだろうか。

 その3人による、腹6分目のように非常に抑制されたバッキング音になぜ
か感心。だって、それがちょい醒めた彼女の歌(ギターを持って歌う場合が
多い)に合う。へえ、こんな妙味を持つ人であったのか。その感じにルック
ス(大昔から見ると、痩せたという印象を得る)やちょい斜に構えたような
キャラも合っていて、こりゃなかなかのタレントではないかと思った次第。
不思議に今っぽい、誘いがあった。昔から知っているが、初めてペルーを心
底いいと思ったナ。終盤はスタンダードっぽい歌を歌って、彼女がジャズ畑
出身であることを認識させる。

 そして、深夜に南青山・マンダラへ。この8月11日にもやっている、恒例
<ナッシン・バット・ザ・ミッドナイト・スペシャル>。この晩は、沼澤、
スザーノ、モウラに加え、エマーソン北村(2003年3月11日、他)と大
儀見元(2006年2月16日、7月10日、他)が加わる。ようは、打楽器系奏
者3人と鍵盤系奏者が2人という内訳のセッション。沼澤とスザーノ以外に
打楽器奏者が入ることは珍しいような……。

 当初、キーボード奏者二人によるニュー・エイジ風の調べから、打楽器奏
者が入っていき、演奏は加速度を増し、いろいろと局面を鮮やかに変えてい
く。2時間ほどの、ノンストップ・セッション演奏。音に絡む映像は迫田遙
(2006年5月30日、他)。ステージ背景に映る絵と天井部に映る絵は同じ
ものながら映り方が違うなと思ったら、3つのプロジェクターを使っている
とか。なるほど。

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