トクマルシューゴ

2012年12月14日 音楽
 トクマルは、自分の世界/風景をマノラミックに積み上げる、シンガー・ソングライターだ。たとえば、七尾旅人(2011年4月16日、他)を初めて聞いてときもそうだったが、親のコレクションがあったりと最初から横に当たり前のもののように洋楽があった世代なんだろうな、なんてことも、彼のアルバムを聞くと思わせられる。彼の場合はその業界スタートが、NY インディ発のアルバムだったという事実は別としても。ともあれ、ちょっと中世的な歌声は好みじゃないが、パっと聞いても持っている音楽習熟度や具現能力が鮮やかと思わせる担い手だと思う。なんだかんだ、ぼくの知り合いの中には天才と言い切っている人もいるもの、な。そんな彼のライヴに触れるのは今回が初めて、結構楽しみで行きました。渋谷・アックス。

 卓録でなされたアルバムの音(ただし、この人はローファイではなく、ハイファイ)を、5人のミュージシャン(ベーシスト以外は、いろんな楽器や装置を担当する。曲によってはもう1人加わる)とともに、無理なく開いて行く。けっこう、アフリカの音楽を聞いているのかなと思わす、アレンジの曲も何曲か。ライヴ会場限定で本人と5人のサポート・メンバーたちが1曲づつ出した6曲入り500円のCD も販売しているというから、相当に仲間意識をもっているんだろう。

 意外に朗々と歌う人でもあり、いっぱいしゃべる人。そして、思った以上にフォークな手触りを感じさせる人であるとも、ぼくは感じた。それは濁りの感覚を持たないことから得た所感でもあるか。

<今日の、驚き>
 公演前の場内音楽に、わッ。タイのグループの昔の曲が流されたから。それ、ザ・ビートルズの「ペイパー・バック・ライター」とザ・ナックの「マイ・シャローナ」を技アリにマッシュ・アップして、タイ語で歌ったもの。グランド・EX’という男性4人組による。ぼくがその曲を知ったのは、1980年代の後半。タイに行ったとき、音楽カセットを売っているおばちゃんだかおねーちゃんだかにおすすめはと聞いて買ってかえって来た10個強のなかに、グループ・サウンズ然とした彼らのカセット(他の曲は皆つまらない)も入っていたのだ。いらい、ぼくのなかでは、<脳みそとろけそうな、技アリのモンド曲>として、重宝視されている。話はズレるけど、遊びごころを持つトクマル一座は途中で、サンダーバードのテーマ曲を嬉々として披露する。<2012年4月10日>の項にあのようなことを書いているように、ぼくはとうぜんニンマリ。30代あたまの人にもサンダーバードは身近なものなのか? 彼らが歌ったのは、日本語歌詞によるもの。ぼくが見ていたときは、そんなものは作られていなかった。