午前中、ちょい外に出たが、日差しビンビン。ようやく本日、梅雨明けが告知される。夕方、京橋・テアトル試写室で、モハメド・アリを扱ったドキュメンタリー映画を見る。ピート・マコーミックによる、2008年米国/カナダ映画だ。

 アリを収めたフィルムはいろいろとあるはずだが、版権の問題があるのか、それほど豊富には使われていない。そのかわりかどうかは知らないが、ここでマコーミック監督は、アリと対戦した10人のボクサーを証言者として引っ張りだしている。それが、本作の大きなポイント。映画は、アリの戦いの歴史をいちおう時系列的に追い、その10人の発言をいろいろとインサートする。一人づつ10人10話ぶんをつなのかと思ったが、そうではあらず。だったら、側近の人とか、アリが傾倒した“ネイション・オブ・イスラム”の同志とか、徴兵拒否に伴ってのチャンピオン剥奪に対抗する裁判の際の弁護士とか、別れた妻たちの言質とかもとれば、“人間アリ”の奥行きは増すのではないかと思って見ていた。……ものの、なるほど、拳を合わせたボクサーだけでまとめたからこそのワビサビはあるか。確かに、ボクサーの方々、それぞれに”人生”を持っているしね。英国白人のヘンリー・クーパーは引退後人気パーソナリティになってサーの称号をもらい、ジョージ・フォアマンはしゃべり方にやたら説得力というか味があるナと思ったら現在プリーチャーをしているのだとか。そのクーパー他3人は映画収録後、亡くなってしまったそう。

 ボクシング・ファンじゃないと分りにくい部分もある(顔も名前も覚えられなくて、今発言しているのは誰だっけと、ぼくはなった)が、“持たざる者”が成り上がる手段とする特殊スポーツたるボクシングの罪深さと、それを生業としつつキャラとスマートさで誰もかなわないカリスマとなったアリの特異な個体はすうっと浮かび上がるか。あと、米国社会の陰影も。それから、アリのリング上のステップに、ドライなファンク・インスト(が、映画で使われていた)は合う。ぼくは格闘技が苦手(痛そうなのを見て、何が楽しのだろう?)なので、一歩引いて見てしまうところがあるかもしれないが。8月25日から渋谷や銀座などで公開。


<先週の、ボブ・マーリー映画>
 先週は、ボブ・マーリーのドキュメンタリー映画、「ボブ・マーリー ルーツ・オブ・レジェンド」(米国/英国2012年映画)を渋谷・ショーゲート試写室で見た。スコットランド生まれのアカデミー賞受賞監督(ケヴィン・マクドナルド、1967年生まれ)によるもので、マーリーの遺族が全面的に協力したもののよう。こんな映像あるのかという興味深い映像と豊富な関連者証言をクールに噛み合わせた好作品。マーリー初心者は、アルバム群を含めてこれから入るのもアリではないか。一番の収穫(?)は、マーリーって下半身が暴れん坊な人でもあって、7人の女性を相手に11人の子供を得たという事実。うち、相手の1人は1976年ミス・インターナショナルの1位を得たジャマイカ代表。わお。彼女もちゃんと映画に出てくる。9月1日より、有楽町、渋谷、吉祥寺の3カ所で公開される。