1943年生まれと41年生まれ、ルーツ・ミュージックに対する愛好と理解を根に置きながら70年代に視点ありのノスタルジックさや&洒脱さを時代の先端を行くような感じで広げて天下を取ったり、きっちり米国音楽史に居場所を作ったヴェテランの女男が共演した公演を見る。六本木・ビルボードライブ東京、セカンド・ショウ。

 バンドは、ピアノ、ギター(帽子ともども、近年のジェイムズ・テイラーに見てくれが似ている?)、ウッド・ベース(女性)、ドラムという布陣。それ、マルダーの新作にも名前が見られる人たちなので、マルダーのバンドだろう。で、彼らがかなりまっとう。渋く、どこか粋でジャジーな伴奏を飄々と紡ぐ様はいい感じ。それゆえ、マルダーの前回公演(2006年8月23日)のバンドは一体なんだったのかとも思ってしまったが。ミレニアム以降もとっても順調にリーダー作を出しているマルダーだが、残念ながら喉のほうは駄目になっている。だが、このバンドと重なるのならOKとも思えたわけで、ちゃんと大人の枯れた米国のお伽噺みたいなものを浮かび上がらせていましたね。

 彼女が数曲歌い、そこにヒックスが登場し1曲共演し、その後はマルダーが退出しヒックスのパフォーマンスが続けられ、後半はまたマルダーが出てきて一緒に数曲やり、そしてアンコールという構成。ようは、対等のフィーチャーのされ具合なり。いや、後に出てきたぶん、ヒックスのほうの印象が強くなるか。

 生ギターを弾きながら歌うダン・ヒックス(2009年5月27日、他)のほうもそりゃ全盛期から見ればだいぶ老けてはいるが、お茶目な踊りや仕草をはじめ、この人だけが持つ豊穣な何かがあふれるもので文句なくニッコリできる。バンドとの噛み合いも良好。というか、ジャジーという観点ではマルダー・バンドのほうが今の彼のワーキング・バンドより達者であるのは間違いなく、通常のヒックス公演とは別の妙味が出されていたのではないか。なんか、いい時間を過ごさせてもらっているという気持ちになりました。