ひえ〜、ステージ上には禿頭だらけ。みんな白人だったかな。丸の内・コットンクラブ(ファースト・ショウ)。日本で言うところのAOR系の米国人シンガー・ソングライター(2006年7月2日)が、自分のバンド(なのかな? キーボード、ギター、ベース、ドラム)を率いて出演。キーボードを弾きながら歌うラバウンティは歌はそれほどうまくはない。これでいいのダと思わせるときが少なくないが、ときにこれはマズいっしょという時も。でも、悪びれる事もなく、質あるアダルト・ポップの作り手であるのを飄々と出して行く。そして、途中からはフュージョン・ギター名士のラリー・カールトン(2007年9月19日)が出てきて、笑顔で加わる。安い格好をした彼はなんかとてもいい人そうだった。

 歌が下手でも聞かせきる人はいろいろいる。ブルージィなR&Bが得意な大御所ボビー・ブランドをはじめ。ロックだとすぐに思い浮かぶのは、名映画/TV番組音楽作家でもあるランディ・ニューマンだな、ぼくの場合は(次点はイアン・デューリー?)。客観的に見れば、いかにも彼のヴォーカルは下手。だが、ぼくはそのヘタさにいらついたことも失望した事もない。その不安定さは決して嫌なそれではなく、しっかりと確かな音楽観と社会観を持つ彼のメロディやサウンド(それもけっこうパターン化しているんだけど、飽きない)としっくり噛み合うものであり、しっかりと聞く者の中に入ってきて、確かな余韻を残すのだ。ほんとに、音楽って不可解で、素敵だ。実は、ぼくが最初にインタヴューした人がランディ・ニューマン。新卒で出版社に入ったときに企画を通して実現したもので、9時から5時でちゃんと事務所に行って作曲しているとか、いろいろ興味深い話をしてくれたっけ。もう四半世紀も前の話。彼の来日公演はあのときが最初で最後だったのかな(イヴェンターは確か、今はない音楽舎。当時、イケてるロックの外タレを一番呼んでいる会社だったのではないか)。で、その際、取材はしたものの忙しくてライヴには行けなかったのだ。あ、そういう悔しさが積もって、ぼくはよりライヴに行くようになったのかもしれない。うーん、今こそ彼の実演に触れてみたい。とっても。