どんどん支持者を増やしているように思える、カメルーン出身の電気ベー
シスト/シンガー(2000年12月6日、2002年1月9日、2002年9月1
9日、2002年12月14日、2004年12月15日)。喋り好きで、耳が確
かな人(確かなイントネーションで、日本語の単語をすぐに覚える)。かつ
てユニヴァーサル・フランスに移籍した際に取材したとき、「ソニーのA&
Rはスティングの曲をカヴァーしろと言いやがった。なんで、昨日まで車の
セールスをやってような人間にそんなことを言われなきゃいけないのか。だ
から、俺は言ってやったんだよ。俺のなかにスティングなんかはない。ある
のは、アフリカとジャコ(・パストリアス)だけだ!って」。

 そんな人だから、フュージョンぽい何かをはらむのはしょうがない。でも
、全員国籍が異なるプレイヤーを従えてのパフォーマンスはいい音を出して
いた。小気味よくも温かく、いいインタープレイもあったし。MCによれば
、サックス奏者は米国シアトル出身、黒人キーボード奏者はオランダのロッ
テルダム出身、ドラマーはキューバのハバナ(だったっけかな?)出身、パ
ーカッションはコロンビアのボゴタ出身、ギター奏者はブラジルのリオ出身
とか。ただ、「アフリカの人間にとって歌うことと楽器を弾くこととは同義
語なんだ」と言うわりには、今回は歌パートが少なかったような。リーダー
作においては、歌の比重はどんどん増しているというのに。例によってジャ
コ在籍時のウェザー・リポートのカヴァーもあり。曲は「ティーン・タウン
」だったか(ウェザーのファンじゃないので自信ありません)。

 あと、ボナはやっぱり音を出している風情がよい。それが、マル。ブルー
ノート東京・ファースト。

 そのあと六本木・スイートベイジル139 で、塩谷哲(ピアノ)、TOKU
(フリューゲルホーン)、大儀見元(パーカッション)の3人ユニットを見
る。当人たち曰く、ヴォーカル・グループだそうだが、なるほど。皆、リー
ド・ヴォーカルをとったりハモったりする。大儀見とTOKUはちょい生ギ
ターを触るときもあった。ああ、塩谷と大儀見はオルケスタ・デ・ラ・ルス
にいたのか。89年にマディソン・スクェア・ガーデンでのサルサ・フェステ
ィヴァルを見たことがあったが、そのとき二人はあの華やかな舞台にいたん
だろうな。ともあれ、ときどきこの顔ぶれでライヴをやっているらしい。今
回この場所は三日間通し、客は女性が多い。

 まず楽曲ありきのグループか。ザ・ビートルズの「ブラック・バード」か
らオリジナル曲まで、まず歌いたかったり紐ときたかったりするネタを出し
合い、それをジャズやラテン他いろんな素養を持つ彼らが持ち味を軽妙に交
換しあいながら、やんわりと広げるといった感じ。聞き味は優しく、明快
。いろんな小業は効いているが、そうじては大人のもう一つのポップスとい
う感じも。へえ。