UK発新感覚のコンテンポラリー・ソウルの今後を担う男と言われてもう
15年がたつオマー(2001年3月25日、2004年6月28日)と、UKラ
ヴァーズ・ロック(スウィート・レゲエ)の美声実力者キャロル・トンプソン
が一緒の出し物。南青山・ブルーノート東京。セカンド・ショウ、最終日の
、最終公演。

 まず、トンプソンが登場。バッキング・バンドは、キーボード(日本にこ
れてとても嬉しいという感じで、一生懸命日本語でMCしようとしていた)
、ギター(ほとんど、存在を感じさせず)、ドラム(かなりイケる。気に入
った。ソロのときはダブっぽい音処理がなされたりも)、ベース(ソロ・パ
ートを与えられたときだけ、電気アップライト・ベースを手にする)、そし
て太っちょの男女コーラスという布陣。凛としつつ、しなやかに。まず、高
潔な人間性ありきと思わす、歌い口。大昔、取材したときも人間ができた人
だと思ったよなあ。そんな彼女の出番は25分弱、もう少し歌ってほしかった
ナ。

 そして、すぐに入れ代わりでオマーのパフォーマンス。バンドは彼のもの
で、白い肌した女性バック・シンガーはオマーの妹なのだという。顔つきも
、肌の色も、体格も(まあ、オマーも太り気味ではあるが)、どれも似てい
ない(が、名前を見てみたら、ライ・フックというファミリー・ネームは同
じ)。彼は喉を傷めていたという話も聞いたが、とっても声が出ていて、ぼ
くはそんなの気づかなかった。歌いつつ、合いの手を入れるような感じのシ
ンセ単音演奏も非常に存在感あり。デビュー時と根本的なものは何も変わっ
ていないが、彼が現在充実していること、彼がひどく美味しい個性の持ち主
であることを痛感。中盤以降はボサっぽい曲が並んだが、それもまた彼のデ
ビュー時からの持ち味。そういえば、フォーキーなオマーという感じも少し
あるヴィクター・デイヴィス(2001年3月19日、2003年7月17日)に
半月前に取材したとき、「ボサノヴァの要素を愛好するようになったのは、
スティーヴィ・ワンダーの表現を聞いてから。そのときはそれがブラジル音
楽の要素とは知らずに、そのテイストにひかれた」みたいなことを言ってい
たが、オマーも似た経路はあるかもしれない。話はズレるが、そのスティー
ヴィやEW&F(2006年1月19)のブラジル味はセルジオ・メンデス(
2005年8月9日)&ザ・ブラジル66から来ているというのがぼくの持論
だが。
 
 実は3月に出る彼の新作はスティーヴィ・ワンダー(2005年11月3日)
との共作曲が収められている。そこで、ワンダーは歌い、キーボード・ソロ
も弾いている。そのアルバム『シング』の解説を書いたから散々聞いた。だ
が、その後、レコード会社のA&Rからもしかするとワンダーの歌パートだ
け差し替えになるかもという連絡を受けたのだが、どーなるんだろうか。ア
ンコール時には、オマーとトンプソンが仲良く手を繋いで出てくる。些細な
ことだけど、そういうの良いな。そして、歌ったのはウィリアム・デヴォー
ンのカヴァー「ビー・サンクスフル」。アルバム(前作の『ベスト・バイ・
ファー』)ではエリカ・バドゥ(2000年11月19日)がデュエット役で
参加し、シングルのヴァージョンではアンジー・ストーン(2005年3月22
日)が歌っていた曲。ワンダーとの関わりや、そんな贅沢な事実が示すよう
に、オマーは大きな評価は得ていないが、アメリカの才ある今の本格派のR
&Bの担い手からは厚い支持を受けているのだ。