毎年師走恒例のケルト系ティストが集まる公演を、錦糸町・すみだトリフォニーホールで見る。今年はスコットランドのタリスク、アイルランドのウィ・バンジョー3(2015年12月5日、2015年12月10日、2017年10月16日、2017年10月22日)、同じくアイルランドのシャロン・シャノン(2003年12月20日、2013年12月7日、2016年12月3日)が出演する。また、ザ・ステップクルー(2011年12月3日、2011年12月10日)の一員でもあるというカナダ人ダンサーのクリスティーン・カーも各出演者の演奏に華を添えるように何度か登場して、ステップを軽快に披露した。

 今回、どのアクトも客が立ち上がる。それは、客あしらいのうまさ、面々が抱えた明快なビート感、人懐こい娯楽性などをしっかり3組が持っていたからだろう。クリスマス感は低かったかもしれないが、近年のケルティック・クリスマスのなかでは一番お客が盛り上がっていたんじゃないだろうか。観客がぴょんぴょん跳ねるのって、前にも見受けられた風景だっけ?

 一番手、タリスクの構成員はモーセン・アミニ(コンサーティナ〜小型蛇腹楽器)、ヘイリー・キーナン(フィドル)、グレアム・アームストロング(アコースティック・ギター)の3人。誇張して書けば、反復の鬼というか、生っぽいトラッド・トランスというか。テンポ、早っ。アコースティック楽器を持つ彼らのパフォーマンスには、ストンプ増幅音と同期ベース音が差し込まれる。音色はそんなに膨らませている印象はないのだが、ターボ・エンジン装着と書きたくなる、疾走感に富むトラッドを披露。カラっとした手触りを持つのも、聞き手を取り込みやすかったんだと思う。

 次のウィ・バンジョー3もまた、同期ベース音が聞こえた。前から、そうだっけ? エンダ・スカヒル(バンジョー、マンドリン)、ファーガル・スカヒル(フィドル、バウロン)、マーティン・ハウリー(バンジョー、マンドリン)、デイヴィッド・ハウリー(ギター、ヴォーカル)、2組の兄弟からなるグループで、日本語を上手に組み込んでブルーグラス要素も取り込んだアイリッシュ・トラッド表現を送り出していう様子は過去の流れにあるが、もっと受け手に与える間口は広くなっている。1曲、たしかソウル有名曲も歌入りでやってへえと思ったけど、いろいろあって家に帰ったらなんだったか忘れた。最後の曲はタリスクの3人も加わる。

 休憩を置いて、アコーディオン(1曲ではティン・ホイッスルも吹いた)のシャロン・シャノン率いるグループが出てくる。ジム・マレイ(アコースティック・ギター)、ショーン・リーガン(フィドル。1曲で、ヒューマン・ビート・ボックス)、ジャック・マー(エレクトチック・ギター、ヴォーカル)というサポート陣は2016年来日公演の際と同じ顔ぶれだ。3組のなかで格段にキャリアが長いし、一番“跳び”要素は少ないはずだが、まず出音の大きいことに驚く。もう、ぶりぶりアコーディン演奏の機微を受け止めることができたし、ダイナミズムを持つアイリッシュ・トラッドという呼称も思い浮かぶ。しかし、1991年にデビュー作リリースのシャノンは大御所になった現在もいまだ初々しさのようなものを遠目には抱えているように思え、すごいな。2曲ぐらいで、出だしの部分がスティング(2000年10月16日)の曲が始まりそうと思わせる場合があり、もしやスティングの曲にケルト性があるのかとふと思う。でも、スティング曲はロック界でトップ急にジャンル外の人たちからも一目置かれているので、逆かもしれない。

 アンコールはタリスクとウィ・バンジョー3、クリスティーン・カーらも加わり、まさに大団円。

▶過去の、ウィ・バンジョー・スリー
http://43142.diarynote.jp/201512091352434769/
http://43142.diarynote.jp/201512151502461490/
http://43142.diarynote.jp/201710181340402896/
https://43142.diarynote.jp/201710240958114009/
▶過去のシャロン・シャノン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-12.htm
http://43142.diarynote.jp/201312171612117786/
https://43142.diarynote.jp/201612090834062174/
▶︎過去の、ザ・ステップクルー
http://43142.diarynote.jp/201112091411311547/
http://43142.diarynote.jp/?day=20111210
▶︎過去の、スティング
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm

<今日の、予告情報>
 最後の出演者共演シーンを見て、ルーツと繋がった礎となる曲があり、皆んな素の笑顔のもと自分を出し合えるというのはいいなあと思った。ぼくの場合、著名洋楽曲しかそういうのないと思えるわけで、とほほ。イケテない、ぼく……。入場時にもらったチラシで、すでに来年のケルティック・クリスマス(東京公演は、12月5日)の出演者が出されていて、おお。来年は皆アイルランド勢で、アヌーナ(2007年12月15日、2009年12月12日、2011年12月7日、2011年12月10日、2014年12月4日、2014年12月6日、2017年2月16日)、4人組のザ・ハイキングス、ダンサーのデイヴィッド・ギーニー。まあ、興行というのはそのぐらい先行して当然だったりもするのだろうが、ミュージシャンは大変だなあ〜おちおち病気もできないよなあと思う。ぼくはその場しのぎというか、短期の予定の積み重ねでこれまで生きてきているわけで、1ヶ月以上先の要件(そりゃ、めちゃ楽しい案件だったらウェルカムだけど)が入るとキュークツでいやだなあと感じるタイプであるから。
▶過去の、アヌーナ
http://43142.diarynote.jp/200712161423560000/
http://43142.diarynote.jp/201001051620426983/
http://43142.diarynote.jp/201112171633334584/
http://43142.diarynote.jp/?day=20111210
http://43142.diarynote.jp/201412151250144917/
http://43142.diarynote.jp/201412221527313725/
https://43142.diarynote.jp/201702211429132450/