まず、丸の内・コットンクラブ(ファースト・ショウ)で、当代きっての女性ジャズ・ドラマー(2004年9月7日、2005年8月21日、2008年12月1日、2009年6月15日、2010年9月4日)のリーダー公演を見る。ほう、面白く、いい出し物だったな。

 前半と最後のほうは、ピニアニスト、コントラバス奏者、リード奏者を従えたカルテット演奏。彼女の2013年新作『マネー・ジャングル』(コンコード)はデューク・エリントンの異色ピアノ・トリオ作『マネー・ジャングル』(UA、1963年)を下敷きにするものであり、そこで披露していた曲を中心に演奏していたと思われるが、これがもうアブストラクト気味な感覚も少し抱えたイケてるストレート・ジャズを志向していて、一発でニンマリ。フュージョンぽい設定でもリーダー公演をするキャリントンだが、今回の彼女は男前っぷり8割増しぢゃ。叩き音は重くも凛としていて、伴奏者たちもそれに乗り遅れんと演奏し、全体の印象はリアル・ヘヴィ・ジャズという感じ也。

 そんなわけなんで、白人男性奏者のピーター・マーティンとザック・ブラウンのことをぼくは初めて見るはずだが、なかなか好印象。1曲目のマーティンのピアノ演奏はもろな、そして見事なハービー・ハンコック・マナーのそれで思わず頬が緩む。いろんな弾き方をしていたが、切れと線の太さを併せ持っていて、ぼくの好み。彼がソロ・パフォーマンスをやると聞いたら、これは見に行くなと思う。一方、まだ20代かもと思わせるブラウンはやはり骨太な演奏を出し、部分的にポール・ジャクソン(cf.ヘッドハンターズ)の電気ベース演奏を縦に移したみたいと思わせるところも。ようは、やはりぼくの好みであった。

 そして、各種サックス(変な小さな横笛を手にしたときも)を担当するアフリカ系女性奏者のティア・フラーはキャリントンの『マネー・ジャングル』でも吹いていた人であり、マック・アヴェニュー他から数枚のリーダー・アルバムを出してもいる人であったのだが……。当初は??? ストロング・ジャズ志向の総体に合わせアウト気味のフレイズを繰り出すのだが、なんか治まりが悪く、また音程が悪い。何か事故があって、不慣れなリードを使っているのかとも思ったが、なんかイヤだ。途中から少しはマシになったが、音程がいま一つという印象は拭えず。違う奏者のほうが、ぼくは落ち着いて聞けただろう。そんな彼女、見た目はビヨンセ(2001年6月25日、2006年9月4日)の女性バンドにいそうと思わせるものであったが、後から調べたら、実際ビヨンセのアルバムに彼女の名前がクレジットが出ているものもある。そうかあ。

 そして、中盤からの4曲(だっけ?)は、オーガニック派女性歌手のリズ・ライト(2003年9月17日)が加わる。おお、久しぶりに彼女を見る。前半のインスト部に触れながら、どうライトが重なるのか思ったら、自然な感じでヴォーカル付きパートに流れたな。彼女、カサンドラ・ウィルソン(1999年8月27日、1999年9月2日、2001年2月12日、2004年9月7日、2008年8月11日、2010年6月13日、2011年5月5日、2013年5月31日)の妹みたいな外見になっていたけど、奥行きを持つ低音気味ヴォーカルはやはり味がいい。この設定で聞くからこそ、よりスケールが大きくなったとも感じた部分はあったと思う。マル。1曲は、アル・グリーン曲をカヴァー。もうちょい彼女の歌をききたかったかもしれぬ。なお、今回の来日公演だけでなく、キャリントンとライトは海外でも現在重なる機会を持っている。演奏陣だけのショウは<マネー・ジャングル>、ライトが加わる場合は<モザイク・プロジェクト>と、キャリントンは称しているようだ。

▶過去の、キャリントン
http://43142.diarynote.jp/200409070203440000/
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200812141259213603/
http://43142.diarynote.jp/200906160735045241/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100904
▶過去の、ビヨンセ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-6.htm デスチャ
http://43142.diarynote.jp/200609070212050000/
▶過去の、ライト
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-9.htm
▶過去の、ウィルソン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm 
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/september1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-2.htm
http://43142.diarynote.jp/200409070203440000/
http://43142.diarynote.jp/200808121357410000/
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http://43142.diarynote.jp/201105101010399933/
http://43142.diarynote.jp/201306060609052151/

 その後、代官山・晴れたら空に豆まいて に向かう。久保田麻琴(2004年5月7日、2009年10月12日、2010年12月4日、2013年2月5日、2013年9月20日)が仕切る出し物(例により、卓を担当する)で、彼が関与する二組のアーティストが出る。会場に着いたときは、先発のタクシー・サウダージのソロ・パフォーマンスは終わって、休憩中。この後に出るBLACK WAXと彼らの地元である宮古島に行ったとき知り合ったという勝井祐二(2000年7月29日、2000年9月14日、2002年9月7日、2002年9月14日、2003年3月6日、2003年7月29日、2004年1月16日、2004年5月28日、2004年5月31日、2004年6月2日、2004年6月3日、2004年11月19日、2005年2月15日、2005年2月19日。2005年4月11日。2005年10月30日、2006年5月30日、2006年7月7日、2006年8月27日,2006年12月3日,2006年12月28日、2007年6月29日、2008年1月30日、2008年2月18日、2012年12月23日、2013年1月7日、2013年2月11日、2013年6月6日、2014年7月8日)さんが来ていて、少し話す。彼は前回もBLACK WAXが東京に来たとき会場に足を運んでいるようで、義理堅いな。いや、BLACK WAXが同業者にも繰り返し見させる力を持っていると判断すべきなのだろう。

 各種リード楽器(女性)、キーボード(女性)、エレクトリック・アップライト・ベース(男性。最後のほうは、電気ベースに持ち替えた)、ドラム(男性。リーダーであるよう)という4人で、熱量を持つジャズ・ファンクを聞かせる。けっこう、レゲエ・ダブ的要素介したりもしていて、”キング・カーティス&ザ・キング・ピンズ、ジャマイカに行く”といった感じの曲もあって、それにはおおいに発汗もした。ジャズ有名曲の「キャラヴァン」や「ソー・ホワット」も立ち気味のビートを介して、イナセに彼女たちは披露。また、宮古島の民謡をアレンジした曲もやった。

 しかし、こんなに堂にいったイケてる混合インストゥメンタル・バンドが宮古島にいるなんてビックリ。とは、接した者なら誰もが思うはず。Uターン組だったりとか、他の場所を知っている先におおらかな環境で育まれるBLACK WAXの表現があるようだが、そうした複数の環境を4人が知っているのは強みであるだろう。ほうと思ったのは、MCもこなすサックス奏者。実はキーボード奏者はほとんどソロを取らず、そのグループ音の大半はサックス音が前に出ていることで成り立っている。すごいテクニシャンだとは思わないが、その気っ風のいい(アルトの音なぞ、太かったなー)、歌うサックスはお見事。また、素朴にして天然の入ったMCも面白い。MC嫌いのぼくが、イヤに感じなかったのだから、これはすごい。

 途中、普段は秩父のタクシー運転手をしている60歳ちょいのタクシー・サウダージが出て来て1曲「イパネマの娘」を日本語で弾き語りし、BLACK WAXの面々が伴奏を付ける。また、終盤には梅津和時(2001年9月2日、2001年9月21日、2004年10月10日、2005年7月29日、2006年1月21日、2008年11月14日、2009年2月8日、2009年6月5日、2010年3月20日、2011年4月1日、2012年2月10日、2012年11月21日、2012年12月8日、2013年11月20日)がアルト・サックスを持って出て来て、重なる。サックスのMarino嬢は忌野清志郎(2004年10月19日、2005年7月29日)の大ファンであるとか。それゆえ、忌野の側近奏者であった梅津のゲスト入りであったのか。

▶過去の、久保田
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▶過去の、勝井
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▶過去の、梅津
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-9.htm タラフ+コチャニ(2日)、エスマ(21日)
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▶過去の、忌野清志郎
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<今日の、戸惑い>
 昨日まで3連休(天候にも恵まれた)で、ぼくも人並みに休みをとり、ネットから一切離れる生活を送った。で、今日は朝から、さあ背筋を伸ばして行くゾであったのだが、さっそく原稿を打とうとしたら、平仮名とカタカナの区別が一瞬あやしくなり、戸惑う。えええ。脳が死んでいる。そういえば、キャリントンの『マネー・ジャングル』の日本盤解説を書いたのをすっかり忘れていて、見ている途中で思い出したりもした。リズ・ライトも1枚ライナーノーツをかつて書いたことがあるような気がするが、確信は持てない……。

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