飯田橋のアンスティチュ・フランセ日本のホールで、仏ノー・フォーマ!と契約する、現在パリを拠点に置く2組が出演する出し物を見る。ぐうぜん、ぼくは先週にパリやブールジュで取材した人たち。だったら、東京でやっても同じぢゃん。とは、言うまい。現地でしか得ることが出来ない機微があるのだよと、なんの根拠もなく言っておく。ヒヒヒ。

 まず、ステージに登場したのは、クラシックからテクノまでを俯瞰するピアニストの中野公揮とあらゆる音楽に清新に適応するチェリストのヴァンサン・セガール(2016年4月13日)。実のところ、ベルリンはあっても、中野にとってパリという地は住む場所として頭の中になかったという。だが、ヴァーチュオーソたるヴァンサンと一緒に出来ることになったこと、ノー・フォーマ!とのディールが取れたことで、パリに住むようになったという。

 2人は一見淡々と、だが密接かつ緊張感の高いアンサンブルを、生理的に尖り、かつ広がる楽曲のもと披露する。驚いたことに、その協調演奏は完全に中野の楽譜下にあり、セガールはプロの演奏家として、その状況を心から楽しんでいるという。ハイセンスなモダン・クリエイティヴ、なり。まだ20代だろう優男の中野だが、これからどんなふうに動いて行くのか、その行方への期待も、2人の重なりに触れつつふくらんだ。

 アラ・ニ(2016年4月16日)はギター奏者を従えて、パフォーマンスをする。そりゃ、フランスで先日見たようにチェロ奏者がいたほうが幽玄さは出る訳だが、デュオでもその浮世離れした、しなやか柔和世界は味わえる。四季をテーマにした彼女のデビュー作『ユー・アンド・アイ』には「チェリー・ブロッサム」という曲が収められているが、親日家の彼女はそれに日本語歌詞をつけた「サクラ」を新たに録音し、PVも制作。この日は、それもしっとり披露する。実はそれ、日本語歌詞を新たに付けた洋楽曲としてはトップ級の出来となっているのではないか。

 先に見た時よりもっと近くでショウに接したせいもあるかもしれないが、彼女がとてもくつろいでパフォーマンスしているように感じる。そんな彼女はいくつかカヴァーも披露。リッチー・ヘイヴンスやジミー・ウェッブなど。渋い。でも、インタヴューで言っていたが、一方で彼女はエイドリアン・ヤング(2016年3月21日)も大好きだったりするんだよね。今後どう広がって行くのか、興味はつきない。しかし、ノー・フォーマ!っておもしろいレーベルだと、再認識もしました。

▶過去の、中野公揮とヴァンサン・セガール
http://43142.diarynote.jp/201604271334589018/
▶過去の、アラ・ニ
http://43142.diarynote.jp/201605111552577552/
▶過去の、エイドリアン・やング
http://43142.diarynote.jp/201603230835051084/

<今日も、しんどい>
 帰国後、風邪をひいてしまった。東京がフランスやルクセンブルグよりも暖かく油断したのと、やはり疲れの蓄積からか。10日間も海外に出たのは久しぶりだしな。とにかく、しんどい。だけど、頑固に医者には行かない。薬の類も摂らない。ポンコツだけど、まだ自然治癒を信じている。というわけで、少し周りから同情を買っておる。……ライヴ後、自重することなく知人たちと2軒はしご。それは体調とは別腹(?)か。