パリから列車や車で2時間半の、フランスのちょうど中央にある小都市のブールジュで開かれる“春のブールジュ”と名付けられた音楽フェスティヴァルを見に来た。フェス自体は12日(火)から17日(日)にかけて持たれるが、初日と最終日は小規模設定で、水曜日から土曜にかけての4日間が大々的なフェス開催となる。平日が3日間も入っているが、昼間にあるのは新人系の小さめの出し物と(ゲリラ的?)無料ライヴで、その多くのプログラムは夕方から夜中にかけて持たれる。深夜になってもおかまないなしにドンドコ状態で、会場からけっこう離れたホテルに深夜に帰ってもDJ音は聞こえた。なんでも、ブールジュがこのフェスで得る経済的効果はフジ・ロックにおける湯沢町のごとしのようで、かような迷惑も自治体/住民は許容しているように思える。

 サマー・シーズンに仏各地で山ほど行われる音楽フェスのなかではもっとも早い時期に行われる大フェスとして広く知られているようで、今年で40回目をむかえるようであり、その規模はデカい。同地の公園や既成のホールやアリーナを用いて行われ、一番デカい会場はテントが設営され、それはフジのレッド・マーキーを二周りほど大きくしたようなもので(一応、定員6500人と記されていた)、後部にはスロープ上の座席も設けられている。有料のステージは全部で10個以上ある感じで、そこにロック、ヒップホップ、エレクロト系アクトが次々に出る。各種売店の出店も多く、他のいろいろなフェスと同様、お祭り状態ですね。

 昼間ブールジュ駅前で、ルクセンブルグで取材したばかりのノー・メタル・イン・ザ・バトルのベース君とばったり。彼、観客として見に来たという。駅近くのホテルを彼は取っていたようだが、一切キャンプ・スペースのようなものはなく(寒目で、けっこう雨も降るとなれば、キャンプは無理とも思えるが)、街の規模からいってもホテルが数多くあるはずもなく、宿泊できる人の数は限られそう。すると、層の広い観客はどこから来ていたのか。

 基本、フランス人の担い手が多いが、海外アーティストも出演する。前日には米国南部ソウルの新星、リオン・ブリッジズのライヴもあったようで、それは見たかった。下にあるように取材おえてから、会場内を少し研究(?)し、和み、21時近くになってから、ライヴ・ショウを享受。

 スタジオコーストをデカくしたみたいな常設会場(普段はスポーツなどもやる場のよう)で、ぼくの大好きなカナダのパトリック・ワトソン(2008年11月12日、2009年8月8日、2010年1月21日)をまず見る。おおデカい会場に合うステージ美術がうれしいじゃないか。ライヴの人員が多くなったなかで“響くロック”を、彼らは堂々展開する。それから、モザンビーク・ルーツの自作派ヒップホップ・ソウル歌手のトカイ・マイーザやダンス調ポップを趣味良く聞かせるランペラトリースらを見る。マイーザはかなり一般層にアピールしそうなことをしている女性だが、ライヴを見て、なんか妙に癖になりそうな引きを持つかも。あれ、後は何を見たっけか?

▶過去の、パトリック・ワトソン
http://43142.diarynote.jp/200811131201183307/
http://43142.diarynote.jp/200908181435528052/
http://43142.diarynote.jp/201001241245595036/

<今日の、仕事>
 夕方に会場の取材用にあてられた建物で、フェス出演者3組にインタヴュー。それは全部このフェスの広報部門のようなところが仕切っていて、前日にならないと(ある程度の候補は聞き、こちらの意向も出していたが)取材アーティストが判明しないのには少しまいった。ひゃはースリル満点、まさに知識の蓄積と融通の効くジャーナリスト資質が問われる状況、なり。取材したのは、▶ランペラトリース;アルバムを聴くとエレ・ポップ調だが、皇后という意味を持つ大所帯の20代グループで、リーダーはなんと細野晴臣(2009年10月12日、2010年4月15日、2010年11月21日、2011年8月7日ち2012年8月12日、2012年9月5日、2013年1月29日、2013年8月7日、2013年8月11日、2015年10月25日)が大好きとか。▶J.C.サターン。歌手とベーシストはイタリア人女性の(男性陣はフランス人)、ある意味オールド・スクールなロックンロール・バンドで、面々はお酒のボトルを回し飲みしながら、平和&友好的に取材を受ける。でもって、メンバーは汚い刺青だらけ。長身のキーボード奏者だけ、俺は彫らねえと頑な態度を見せる(笑い)。大昔のフランスにテレフォンという男女混合のイケているロックロール・バンドがいたことをふと思い出した。彼ら、けっこうT・レックスみたいな聞き味もあり。▶トカイ・マイーザ;モザンビーク出身(その出自は今の表現にも活きているはずと、彼女は言う)、現在はオーストラリアに住む、まだ二十歳のシンガー/ラッパー。米カートゥーン・ネットワーク流れのアニメを用いるPVは魅力的、仏キツネ・レーベルの女性がついていた。