まず、丸の内・コットンクラブ(ファースト・ショウ)。出演者は、ベルリン生まれ、米国育ちのジャズ・ピアニトであるベニー・ラックナーのトリオ。サイドは電気ベース(一部、コントラバスも弾く)のジェローム・ルガールとドラムのマチューシャ・ザレンク。彼はスネア、ハイハット、ベース・ドラム、シンバル2、タム2というシンプルなジャズ仕様セッティングながら、マレットや素手で叩いたりといろいろ工夫をする叩き方を見せる。2人とも欧州的な名前だが、面々はどこを拠点としているのか。

 詩的な指さばきを見せつつ、一部エフェクターをかましたエレクトリック・ピアノも弾くラックナーは、今様な響きに留意するピアニストと言えるか。とともに、ポップ・ミュージックとの接点を求めるように、彼はロック曲を取り上げたりもする。その様、ちょい小賢しい? この晩も、デイヴィッド・ボウイ、コールドプレイ(2006年7月18日)、ジミ・ヘンドリックスらのカヴァーを披露した。

 その演奏に触れて、リーダーの死去でとっくに解散したE.S.T.(2003年6月17日、2007年1月13日)のことを少し思い出す。基本的には1990年代の価値観のもと大飛躍し新境地を闊歩していた彼らの尻尾をなでる感じで今をうろうろしているピアノ・トリオが散見できるわけで……。先日、インタヴューしたルクセンブルグ人俊英ピアニストのミシェル・ライス(彼、7月に来日するはず。バークリー音大時代に知り合った日本人奏者たちとギグをする)もアコースティックながらトリオ表現はE.S.T.から薫陶を受けていることを隠さなかった。

▶過去の、コールドプレイ
http://43142.diarynote.jp/200607191428180000/
▶過去の、E.S.T.
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm
http://43142.diarynote.jp/200701141431470000/

 次は南青山・ブルーノート東京で、マット・ビアンコ(2001年2月5日、2013年8月24日)のシンガーのマイク・ライリーとオランダのラテン・ジャズ・ファンク・バンドのニュー・クール・コレクティヴ(2009年9月6日、2013年9月7日)の協調ライヴを見る。フェスで何度か両者は重なることがあり、一緒にやってみないかというライリーの申し出から、双頭アルバム『ザ・シングス・ユー・ラヴ』へと実を結んだ。

 8人編成のニュー・クール・コレクティヴによるインスト曲のあと、ライリーが入る。曲はアルバムに入っていた共作曲を披露。『ザ・シングス・ユー・ラヴ』はマット・ビアンコの人気曲「ドント・ブレイム・イット・オン・ミー」もカヴァーしていたが、ライヴではさらにマット・ビアンコの「フーズ・サイド・アー・ユー・オン?」や「イエー・イエー」(もともとは、ジョージィ・フェイム:2008年3月17日、2009年9月2日、2013年8月8日の曲)などもやり、素直にうれしい。

▶過去の、マット・ビアンコ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-2.htm
http://43142.diarynote.jp/201308281519499994/
▶過去の、ニュー・クール・コレクティヴ
http://43142.diarynote.jp/200909120649284792/
http://43142.diarynote.jp/201309161507226186/
▶過去の、ジージィ・フェイム
http://43142.diarynote.jp/200803201208100000/
http://43142.diarynote.jp/200909120645492039/
http://43142.diarynote.jp/201308110828525647/

 締めは、代官山・晴れたら空に豆まいてで、トロント在住のクリス・A・カミングスによる一人弾き語りユニットであるマーカー・スターリングを見る。彼、かつてはマントラーという個人ユニット名で活動していた。

 前座が2つあってもショウは始まっていて、ステージ上には太り気味で禿げたおじさんがいる。で、ピアノを弾きながら、移ろいやすいと形容できなくけもない歌を乗せている。曲によっては乱暴に原始的なリズム・ボックス音も用いる。総じて、はかなく、ポップな味わい。そして、ぼくはなんか『サムシング・エニシング』のころのトッド・ラングレン(2001年11月9日、2002年9月19日、2002年9月28日、2008年4月7日、2010年10月10日)のテイストを思い出す。杜撰なリズム・ボックス音に杜撰な重なり方を見せるところなども、そう。なにげに、カヴァーもやっていて、それはカヴァー・アルバムを出したこと繋がっているよう。ニール・ヤング(2001年7月28日)の「ライク・ア・ハリケーン」は良かった。

▶過去の、トッド・ラングレン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/LIVE-2001-11.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/200804081929500000/
http://43142.diarynote.jp/201010111257003810/
▶過去の、ニール・ヤング
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-7.htm

<今日の、無茶>
 帰国した翌日から、ライヴをはしご。最後の会場であった知人に、元気ですねーと驚かれる。いやー帰国後のリハビリですと、このときは余裕であったのだが。馴染みの店の開店七周年のパーティが金曜にあるのだけど所用があって行けないので、ほんとはこの後にちょい顔を出しておこうと思っていたのだが、それはさすがに自重したんだけどお………。