丸の内・コットンクラブ(ファースト・ショウ)。ウェスト・コースト在住の、通受けシンガー/キーボード奏者(2007年12月28日、他)の約1年ぶりの来日公演。本人、一体どこで購入したのと思ってしまう白地に派手な模様の入ったパーカーとTシャツを身につけていたが、ありゃ音楽性とは合わないナ。と、感じた人は少なくないはず。そろそろ、そういうほうまで留意したパフォーマンスを心がけてもいいんじゃないか。サポートは電気ベースとドラマー。二人は昨年と同じ人なのかな。ただ、今回は曲によっては鍵盤ベースをひいたり、ドラマーはマックとつながったパッドを指でちまちま叩いたり(けっこう、ドラムっぽい音をそれで出していた)も。

 マッコムの回りには、グランド・ピアノとフェンダー・ローズとウーリッツァーの三種の鍵盤が置かれる。オープナーはグランド・ピアノの前に座って、インスト曲をうれしそうにかます。ピアノ・ソロなんか延々取らずもっと歌えというのは、彼についての衆目の一致した意見だが、その様に触れて、ピアノ・ソロは日本に来ると余計にとってしまうんだろうなーと、ハタと気付く。だって、ちゃんと状態のいいピアノを用意してもらえる事はそんなに多くないだろう。そりゃ、目の前に普段あまり弾く機会のない立派なピアノがあったら、プレイヤーの性として弾きたくなるよな。「俺たちが回るようなクラブはどこに行っても、まっとうなピアノを置いていない。だから仕方なく、俺は持ち運べるキーボードを弾くようになったわけだ。それが、俺たちがピアノ・トリオからキーボード・トリオに移行した理由だね」という、MMWのジョン・メデスキー(2007年6月13日、他)の大昔の発言を思い出したりして。

 2曲目以降はグランド・ピアノに触ることもなく、全曲ヴォーカル・ナンバーを披露。もちろんソロも取るが、もしかして、これまでで一番歌が占める割合が高いショウだったかも。やっぱり、ファンの声は届いているんでしょうか。やはり、基本の味は抜群に良い。親しみやすいカヴァーとかあると、もっと良かったかも。

 続いて、南青山・ブルーノートで、イタリアの30代半ばぐらいの(わりかし、みんなルックスは整っているか)奏者たちが集まったハイ・ファイヴ・クインテットを見る。新作はブルーノート発で、まっとうなハード・バップを展開。とくにトランペットのファブリッツィオ・ボッソはピカ一の欧州若手トランぺッターとして評価が高いわけだが(彼は今様クラブ系ジャズにも関与)、なるほど早めの曲でのプレイはとくに引き込まれるナ。ただ、アレっと思ったのは音色が少し鼻づまり気味のそれだったこと。もっと、ブライトな音色だったら、ぼくはもっと感心したろう。トータルな行き方としてはもう少し破綻やエッジィな局面を埋め込んでほしいと思わなくはないが、ジャズ愛は溢れていたし、ジャズ研の学生が見たらジャズはやっぱ二管の正調クインテットにとどめを指す、なんて思いを新たにしたのではないか。