渋谷・映画美学校で、2017年ベルギー/フランス/レバノン映画(原題「Insyriated」)を試写を見る。今日日こんなことが起こるのかと思わせもするシリア内戦を介する人間劇で、言葉はアラビア語。監督と脚本は、ベルギー人のフィリップ・ヴァン・レウ(1954年生まれ)が担当する。

 主となる登場人物は、共同隠遁生活を送る一家+(母、義理父、娘2人、息子ひとり、お手伝いさん、娘のボーイフレンド、同じアパートに住んでいて一緒に住むようになった母と赤ちゃん)。ほとんどの人が戦禍から逃げているなかとどまることを選んだ彼女たちはアパートのなかでひっそり生活していて、その朝から翌朝までの出来事を描いている。カメラはギリのところで暮らす女性たちを、アップ多用かつ動的なカメラ・ワークで追う。とはいえ、部屋の中は暗めだし、部屋が何室もあるとはいえアパートの一戸のなかでのもろもろを追うので、どこかまったりとした質感も持つか。戦闘シーンや市街の様子などは一切映らないが、彼女たちが置かれた境遇がおいつめられたものであり、悲惨なことが起こったりもし、緊張度は低くない。

 主役のお母さんを演じるヒアム・アッパスは、映画「カザの美容室」(2018年2月27日)に出ていた。室内での女性模様を追いつつ、戦争の悲惨さや不毛さを浮き上がらせるということで、この映画と「カザの美容室」(2018年2月27日)は重なるか。また、老人役のディヤマン・アブー・アッブードは「判決、ふたつの希望」(2018年6月6日)では弁護士を演じていた。

 音楽は、1960年生まれの現代音楽畑ベルギー人で、モンス王音楽立院大学で教鞭も取る作曲家/ピアニストのジャン-リュック・ファシャン。サブ・ローザからリーダー作を出していたりもする彼は、なるほどそれふうの音楽を控えめにつけている。8月22日より、ロードショウ公開が始まる。

▶︎過去の、2本のシリア内戦を扱うドキュメンタリー映画。映画「ラッカは静かに虐殺されている」、映画「ラジオ・コバニ」
https://43142.diarynote.jp/201802141255168037/
▶︎過去の、、映画「カザの美容室」
https://43142.diarynote.jp/201803011223342076/
▶︎過去の、「判決、ふたつの希望」
https://43142.diarynote.jp/201806081019169133/

<今日の、所感>
 戦禍を避けるため家に軟禁状態にある人たちを描いた、この映画を見ながら、これが3月だったら、辛すぎて見ていられなくなるかもと思った。ヘタレなもので。そういえば、1月下旬だか2月初旬だったか、家に入る光TVチャンネルに米国TVドラマ「ザ・ラストシップ」(シーズン5まである)が入っているのを見つけ、一瞬見かけたんだが、<新型細菌に世界中が侵されバースト、ワクチンを持った唯一の米国軍艦が世界を救う>(とっても、雑な要約)という内容が新型コロナ・ウィルス禍のなかではヘヴィすぎて、ぼくは途中で見るのをやめたんだよな。ぼくは薬禍という単語をときに用いるために禍という漢字を使っていたけど、“禍”は普段なかなか使われないながら急に使われるようになった漢字になるのではないだろうか。