いやあ、アルゼンチンの奏者たち、水準高すぎ。もう、接しながら、ため息ばかりついていました。

 毎年恒例の日本各地をいろいろと回るアルゼンチン・タンゴのイヴェントを中野サンプラザで見る。ぼくは昨年初めてこの催しを見に行ったら(https://43142.diarynote.jp/?day=20190122)、かなり感銘を受けてしまい、今年も見に行くことにした。

 今年のバンドは、キンテート・グランデという、ヴァイオリン奏者のマティアス・グランデがリーダーとなる五重奏団。他に、ピアノ、コントラバス、バンドネオン、チェロ奏者という布陣。チェロ奏者は代役のようであるが、とっても綺麗っぽいお姉さんでいいじゃないか! グランデが、そして2015年結成となる彼のクインテットが本国やタンゴ通の間でいかなる評価を受けているかはまるで知らないが、現代タンゴの魅力、アルゼンチン人プレイヤーの力量の高さは門外漢ゆえにすうっと理解できちゃうところはあったかもしれない。

 2部制で持たれたショウの演目は1910年代のタンゴ曲からピアソラの「リベルタンゴ」、さらにはメンバーのオリジナルまで様々。バンドの編成は弦楽器3つに鍵盤楽器2つというのものだが、弦奏者たちはなにげに皆弓弾きしている曲が多い。コントラバス奏者は指弾きするときも、弓を持ったまま弾いていたのではないか。というのはともかく、それは優美な調べを導くのは当然として、一方では随時パッションやある種のビート感に溢れていたのはどうしたことか。ピアノなんかもときに相当にパーカッシヴな演奏を見せていたなー。とともに、コントラバスとチェロの弓弾きの波が強力なのか。

 バンドの単独演奏曲もあるが、そこに3組の男女ダンサーたち(←それを目当てに来てる人も多いのだろう)や、歌声がよく通る女性シンガーが曲によっては入ったりもし、起伏や変化はたっぷり。いやあ、周到に練られている。そういう面でも、賞賛される出し物であると思えた。また後ろのヴィジョンにはいろんな情報が映されるし(歌が入る場合は歌詞も)、入場時に配られたフライヤーも出演者や演目について知りたいと思える情報はばっちり開示されていて、それも良い。そのうち、毎日新聞夕刊にライヴ評が出ます。

 その後は、六本木・ビルボードライブ東京で、現代ジャズ/R&Bの人気ドラマーであるクリス・デイヴ(2009年4月13日、2009年12月19日 、2010年12月16日、2012年9月21日、2013年9月28日、2015年8月18日、2016年1月25日、2016年10月11日、2018年6月2日)のグループを見る。

 けっこう来日している彼だが、過去の同行常連者である鍵盤のボビー・スパークス(2007年12月13日、2012年12月5日、2016年1月25日、2018年6月2日)やギターのアイザイア・シャーキー(2012年9月21日、2013年9月28日、2015年8月18日、2016年1月25日、2016年12月12日、2018年6月2日)はおらず。前回来日時は同行していなかった(よな?)打楽器のフランク・モカ(2016年1月25日、2016年10月11日、2017年10月6日)は留任で、あとはヴォーカルとラップのアーロン・カンパー、すでにブルーノート東京でリーダー・バンドで出たことがあるキーボードのダニエル・クロウフォード (2015年6月16日)、ジャガー・ライトやミュージック・ソウルチャイルド(2009年9月26日、2015年2月21日)らのアルバムに名前が見られる4弦のエレクトリック・ベースを弾くサディーアス・トリベットという人たちが加わり、5人にてパフォーマンスはなされる。

 サディーアス・トリベットとダニエル・クロウフォード、2人によるインプロヴィゼーションからショウは始まる。その後、他のメンバーがだらだら出てくるわけだが、フランク・モカのアフリカ部族調(?)の格好は目立つとともに、より機材を並べるようにもなり、彼のバンド表現にしめる演奏の割合は大きくなった。そのぶん、クリス・デイヴはこれまでで一番叩かなかった? でも、2人の重なりはやはり強力というしかない。

 なあなあで曲やリフを重ねていくジャム調というノリはこれまでと変わらず。面々、アイコンタクトではなく、「アウアウアウ」みたいな擬音でボイス・コンタクトをし合う場合もあり。それ、コントみたいだった。

 半分ぐらいで絡む肉声担当者のアーロン・カンパーがかなりの実力者で頷く。ラップをかましたときは、ロバート・グラスパー(2007年10月3日、2009年4月13日、2009年12月19日2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日、2015年6月8日、2016年12月20日、2017年6月5日、2018年1月3日、2019年1月12日)の新作『ファック・ヨ・フィーリングス』みたいだと思えたし、歌も朗々としていてマル。彼はスティーヴィ・ワンダー(2005年11月3日、2010年8月8日、2012年3月5日)の曲(曲名、失念)とともに、ザ・ビートルズの「イエスタデイ」も見目麗しく歌ったが、ザ・ビートルズのほうは歌詞を聞き取らないとあの有名曲とはなかなか分からない改変がされていた。タッパもある彼はコンポーサーとしても活動し、ジェイ・Z(2010年8月7日)やジル・スコット作らに関与しているが、いいタレントだ。彼の活躍もあってか、これまでで一番R&B濃度の高いデイヴの実演だったと言えるかもしれない。

 有名ジャズ曲でやったのは、コルトレーンの「ジャイアント・ステップ」だけだったか。それとも、ぼくの知らない曲の断片もやっていたか。ギターレス編成であったが、ダニエル・クロウフォードはキーボードでけっこうギター調の音を出していた。このセカンド・ショウは、90分ほど演奏された。

▶過去の、クリス・デイヴ
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120921
http://43142.diarynote.jp/?day=20130928
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
http://43142.diarynote.jp/201610141747514263/
https://43142.diarynote.jp/201806051311346158/
▶過去の、ボビー・スパークス
http://43142.diarynote.jp/?day=20071213
http://43142.diarynote.jp/?day=20121205
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
http://43142.diarynote.jp/201610141747514263/
https://43142.diarynote.jp/201806051311346158/
▶過去の、アイザイア・シャーキー
http://43142.diarynote.jp/?day=20120921
http://43142.diarynote.jp/?day=20130928
http://43142.diarynote.jp/201508200741137207/
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
http://43142.diarynote.jp/201612171246253699/
https://43142.diarynote.jp/201806051311346158/
▶︎過去の、フランク・モカ
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/ クリス・デイヴ
http://43142.diarynote.jp/201610141747514263/ クリス・デイヴ
https://43142.diarynote.jp/201710071225329957/ エリカ・バドゥ
▶︎過去の。ダニエル・クロウフォード
https://43142.diarynote.jp/201506180954176007/
▶過去の、ミュージック・ソウルチャイルド
http://43142.diarynote.jp/201502231815384234/
http://43142.diarynote.jp/200909291504366263/
▶過去の、ロバート・グラスパー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/
http://43142.diarynote.jp/201506091124003170/
http://43142.diarynote.jp/201612211059578863/
http://43142.diarynote.jp/201706061756141899/
https://43142.diarynote.jp/201801042046591963/
https://43142.diarynote.jp/201901141233456475/
▶過去の、スティーヴィー・ワンダー
http://43142.diarynote.jp/200511130015240000/
http://43142.diarynote.jp/201008261618276388/
http://43142.diarynote.jp/201203062006429595/
▶過去の、ジェイ・Z
http://43142.diarynote.jp/201008261617154352/

<今日の、覚え書き>
 売れっ子クリス・デイヴはいろんなレコーディング・セッションに呼ばれており、2019年リリースものに限定しても、元ザ・バンドのロビー・ロバートソン、ラファエル・サディーク(2009年6月30日)、ロバート・グラスパー(先に触れた、『ファック・ヨ・フィーリングス』)らのアルバムに関与している。そんななかでも目を引くのは、ヴァン・モリソンやグレン・ハンサード(2009年5月20日、2009年1月15日)らもシンガー参加しているロバートソン久しぶりのリーダー作の『Sinematic』(Universal)か。そこではジム・ケルトナーなんかも叩いているが、かつてマヌ・カチェ(2011年1月28日、2012年1月13日、2016年4月13日、2019年12月2日)を雇ったこともある彼(それをECM社主マンフレート・アイヒャーが聞いて、ヤン・ガルバレク〜2002年2月13日、2004年2月25日〜のレコーディングにカチェを誘った)、やはりビートにも留意する人なんだよな。かつて、ザ・バンドが曲によってはツイン・ドラムであったこともそれと繋がっている? 2016年だかに出した自伝をもとにしたロバートソン視点でザ・バンドを扱うドキュメンタリー映画「Once Were Brothers: Robbie Robertson and The Band」(監督は、ダニエル・ロアー。いまだ、ロバートソンに音楽づくりのインスピレーションを与えているマーティン・スコセッシがエグゼクティヴ・プロデューサーを務める)を早く見たいなー。そのトレイラーは、
https://www.youtube.com/watch?time_continue=42&v=ZYTpMZjZxwI&feature=emb_logo
▶過去の、ラファエル・サディーク
http://43142.diarynote.jp/200907131157415716/
▶︎過去の、グレン・ハンサード
http://43142.diarynote.jp/200905221027321644/
http://43142.diarynote.jp/200901161818098587/
▶過去の、マヌ・カチェ
http://43142.diarynote.jp/201102081259129769/
http://43142.diarynote.jp/201201141645353138/
https://43142.diarynote.jp/201604271334589018/ 取材
https://43142.diarynote.jp/201912030740028983/
▶過去の、ヤン・ガルバレク 
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-2.htm
http://43142.diarynote.jp/200402251031510000/