ブラジル人のギター名手(2009年5月1日)とボサノヴァ弾き語りの日本人女性第一人者の小野リサの共演ステージは、六本木・ビルボードライブ東京にて。お、ぼく、小野リサを見るのは初めてだ。MCによれば、10年前に小野はネヴィスのプロデュースでアメリカの曲をボサ調で紐解くアルバムを作ったんだそう。ネヴィスも英語でMCをするが、本当に日本が好きなようだ。

 アタマの方はネヴィスの寛いだ、歌こみのパフォーマンス。バンドはフェビアン・レザ・パネ(2005年9月14日)、杉本智和(2011年4月10日、他)、吉田和雄(2010年7月6日)、ボブ・ザング(フルート)という面々。途中から、小野を呼び入れ、一時はバンドがさがる。名人が横にいるためか、小野はギターを持たずに歌う場合のほうが多い。ネヴィスは一部で、足下のペダルのコントロールでギター音に連動するキーボードっぽい音を出したりも。なんにせよ、特に夏にはありがたやーとなる清涼感あり。

 次は、丸の内・コットンクラブ。出演者のダン・ベイカーはUKジャズ・ファンク・バンドのザ・ベイカー・ブラザーズ(2008年12月11日、他)のギタリスト/キーボーディスト。O.M.D.とはワン・マン・バンドの略で、ようは彼の昨年暮れに出されたソロ・アルバムがそうであったように、一人でバンド音を出しちゃいます、という趣向のパフォーマンスを見せる。昔のポール・マッカトニーやトッド・ラングレンをはじめ、一人多重録音する人は少なくないが、彼のポイントはリアル・タイムでいろんな楽器音を出して、歌ってしまうこと。なお、すべての曲で彼は歌を披露するが、とっても一本気に朗々と歌う。
 
 まず独自なのはドラム音で、鍵盤ペダル一つ一つにハイハットやタムなどの各種ドラムのパート音を仕込み(13種類らしい)、器用に両足で鍵盤ペダルを踏んでドラム音を組み立てる。そして、それに合わせてキーボードかギターを弾きながら、彼は歌い、楽器ソロを取る。ベース音はキーボードを左手で弾いて出すが、ギターを弾いているときもそれは出ていたので、その場合は足鍵盤で出していたのかもしれない。基本、サンプラーは用いず、実直に一人バンド音をヴィヴィッドに出しながらのパフォーマンス。曲はスティーヴィ・ワンダー、ザ・ポリス、ジミ・ヘンドリックス、ザ・スペシャルズ、ブッカー・T・ジョーンズなどを取り上げる。カヴァーのほうが、その酔狂な回路の妙味はよく判りますね。個人的に、こりゃいいと思ったのは、スライの「イフ・ユー・ウォント・ミー・トゥ・ステイ」だったかな。

 アンコールを含めると、90分以上やった。さすがに幅が広いわけではないので途中からちょい飽きたが、なんか嬉しそうにやる様には、少年期からのささやかな夢の実現の成就と言えるかどうかは判らないが、ポップ・ミュージックにまつわる幸福な風景があったと思う。

 そして、3つ目のギグは、渋谷のバー・イッシーでのもの。(2010年1月9日、他)ハル宮沢(ギター)、泉邦宏(アルト・サックス、ソプラノ・サックス、クラクション。2010年1月9日、他)、不破大輔(電気ベース)、植村昌弘(ドラム。2010年6月7日)。渋さ知らズの初期メンバーが集ってのもの。珍しくも、興味深い出し物に、店は満員。4人の演奏は、けっこう立ったビート感覚のもと、ノンストップで、狼藉する感覚を孕みつつ、ぐばぐば流れて行く。やっぱ、おもしれー。ファーストの最後のほうの不破のベースはダグ・ローチ(サンタナ)みたいだった。泉はけっこう、2本くわえ奏法を見せる。やはり、素晴らしい吹き手。アンコールの2曲は“有り曲”のようで、マイナー・キーのブルース、そして渋さ萌芽期のリフ曲だったよう。

<今日の所感>
 日中、外に出ると、ある意味、素晴らしい日差し。週末に梅雨明けしたらしいし(今年は雨が少なかったはず)、もう完全に夏。ながら、今日は過剰に湿度は高くなく、風もほのかに感じる。ソウダ、私ハりぞーとニ来テイルノダ、と、無理矢理思う事にする。そう思えば、多少は楽しくなる、か。
 ここのところ、暑さもあるのだろう、寝ても4時間ぐらいで目が覚める。そのぶん、シエスタは気ままにとっている。寝たいときに寝て……、それもある意味リゾートの時間の使い方だよな。と、思う事にしよう。今、ほのかな願望は、ベッド・サイドに小さな冷蔵庫を置きたいナ。寝ていて喉が渇いたときに、台所まで出向かず、寝ぼけたまま冷水を摂るのを可能とするために。どんだけ、無精? あ、それでホテル宿泊感覚を得たい? そのうち、ルームサーヴィスお願いとか、寝ぼけて誰かに電話したりして。昨年の猛暑を経験して、こんなに暑い夏は今後そんなに経験することもないだろうと思ったが、今年ももしや……。