昨年から始まった、米国サウス・バイ・サウスウェストのような東京発の音楽見本市(2010年9月3日、参照)のプリ・イヴェントで、5組の新進が出るもの。新宿・マーズ。

 会場に着くと、2番目の出演者であるような、生ギター弾き語りの女性がやっている。ぼくの好みとはあまりにかけ離れていて(でも、真っすぐな情緒は零れでていたかな)、以後もこういう音楽性の出演者が出てくるのかと危惧したら、続く3組は完全に洋楽と横並びの音を聞かせるバンドで、とってもにっこり。

 次に出てきたのは、Arisa Safu and the Rovers。伸びやかな風情を持つ女性シンガー/ギタリストをフロントに置く5人組で、なんと選任のハーモニカ奏者がいる! それだけで、J.ガイルズ・バンドやウォーが大好きなぼくのメーターはあがる。で、そんな彼女らは勘所をおさえたアーシィなロックを、なんとも瑞々しく送り出す。いいじゃないかっ。で、最初B1Fから見下ろす感じで見ていたんだが、こりゃたまらんと下のステージ・フロアに降り、真正面から受けとめる。すげえ、1曲でぼくのココロをつかんじゃったゾ。曲も作っているArisa嬢はインターナショナル・スクールを経てモントリオールの大学を出ているそうで作る曲は英詞を用いるが、普遍的なものとばっちり繋がった表現は地に足をつけつつキラキラ輝いていて、これは良い。昨年のフジ・ロックにも出ているようだが、ぼくがレコード会社のA&Rなら速攻で取っちゃうと思った。後で2010年制作の4曲入りCDを聞いたら過剰にのぼせ上がるものではなかったが、それも日々成長している証左であるだろうし、ライヴのほうが数段魅力的である(実演のほうが、黒っぽくも感じる)ほうが前途有望ではないか。

 続く、Metro Orgenは米国のスリル・ジョッキーからアルバムを出しているんですよと聞かされても、そうかと思ってしまう4人組。先のバンドより、よりコンテンポラリーな地点で洋楽に感化された自分たちの音を作ろうとしている連中と言えそうで、それにも好印象。ギターの2人が男性で(リード・ヴォーカルはうち一人が取る)、ベースとドラムが女性という編成も魅力的。2002年結成というからそれなりにキャリアはありそうだが、バンド活動に疲弊していると見受けられる部分も皆無だし、これも応援するにたる。その『EDEN』という新作も良く練られている。

 そして、この晩の最後の出演者はcounterpartsというギター・バンド。これももろに洋楽的な音(少し、マンチェ系?)を送り出す連中で頷く。昨年の同イヴェントで海外関係者から評価がたかったという話にも納得。そのバンド音志向への共感度は前の二つより少し落ちるが、彼らの場合、トリを務めるのを納得させるような線の太さ〜押しだしの明晰さのようなものを感じさせてくれたな。それも、バンド力、なり。

 皆さん、意気にもえて、頑張っていらっしゃる。ちょっと見ただけでも感心しっぱなしなんだから、現在やっぱり日本の魅力的な若手バンドは多いんだろうなーと思わずにはいられない。ま、主宰団体のセレクションも当を得ているのかもしれないが。ともあれ、本当にそれを追おうとするなら、気が遠くなる作業であるとも痛感。ぼくは洋楽中心で書いているものでポリポリという狡いエクスキューズが頭のなかに渦巻いた(本当は、そんなの区別するべきではないよね)が、邦楽をメインに仕事をしている方々、一体どうしているのだろう。

 ともあれ、見れて有意義と思わずにはいられず。同プリ・イヴェントの次回は7月7日だそう。そして、今年は10月23〜25日にわたって、正イヴェントは開かれるという。
http://tokyobotup.jp/

<今日の、新宿>
 会場に行くために、ひさしぶりに歌舞伎町にはいる。足を踏み入れるのは、新宿にリキッドルームがあったころ以来だから、8年ぶりぐらいか。驚いたことに、まだリッキッド・ルームの建物はあった。閉館となったコマ劇場もまわりに策が作られつつ、まだあった。新宿は基本、ぼくにはなんの縁もない街……。