アンジェロ・ドュバール&ルドヴィック・ベイエ・カルテット、サンセヴェリーノ
2009年9月23日 音楽 ジャンゴ・ラインハルト(ベルギー生まれ、全盛期〜晩年はフランス在住。1910〜1953年)はチャーリー・クリスチャン(もちろん米国人、1916〜1942年)とともにジャズ・ギターの開祖的な評価がしっかりされているが、非アメリカ人に何かと優しくない部分もある米国ジャズ界としてはそれはとても珍しいことではないだろうか。でも一つ、そうした高い評価を米国ジャズ界から得る事ができた理由として考えられるのは、ラインハルトの真価をとても認めていたデューク・エリントン(1899〜1974年)が彼を米国に呼んで、自分のオーケストラと一緒に回らせたことだろう。あの人が推すならば、実際すごい演奏するし……という感じで、ラインハルトはおおいに本場アメリカでもその実力を認められた(んじゃないかなあ)。
マヌーシュ(ジプシー)の家庭においてジャンゴ・ラインハルトは枠を超えた誇るべき偉大なアイコンであるわけだが、マヌーシュ・ギターの達人であるアンジェロ・ドュバールが国外に出ていつも感心させられるのは、ジャンゴ・ラインハルトの音楽が世界のあちことでこんなにも愛されているのかという事であるという。62年生まれの彼、実は少年期にはハード・ロック愛好者でドラマーになろうとしたそうな。が、住んでいたトレーラー・ハウスでドラムは叩けないので断念したとのこと。そんな彼はお洒落な、マヌーシュ系としてはかなり洗練された印象を与える(魚も大好きだというし)いい感じのちょい悪オヤジ。知らない人に、フランスから来た俳優なんですよと言えば、けっこう信じる人はいそうだ。彼とコンビを組むボタン式アコーディオン奏者のルドヴィック・ベイエ(78年生まれ。ローランドのアドヴァイザーをやっていて、何度も日本に来ているという。MCでは達者な英語を話していた)は非マヌーシュの音楽学校出で、二人が頭を張るカルテットのベーシストはイタリア人。そんな成り立ちを見ても、アンジェロ・ドュバール&ルドヴィック・ベイエのカルテットが普通のマヌーシュ・スウィング表現からは離れた味を持つのは当然ではないか。特に、二人双頭による新作『スウィングの空の下で』は歌/歌詞のあるシャンソン曲をいかにインスト表現として再提出できるかにのぞんだ、ずっと続いている二人の協調作業においてもとても異色作と言えるものだそう(他の双頭リーダー作と違い、きっちりリハをやってからスタジオ入りしたともいう)で、その流れも持つ今回の公演はよりメロウネスを感じさせるものだったは当然の成り行きだろう。なんでも、出自も年齢層も異なるドュバールとベイエが一緒にやりだした理由は、偶然やったらお互いにコレだァとなったとのこと。
その後に登場したのは、マヌーシュ・スウィングのがらっぱち/自在のスケール感覚を取り入れた情多い手作りヒューマン表現でフランス本国でかなりの人気を受ける(今回、日本公演をリポートする記者とカメラマンが同行しているそう)のサンセヴェリーノ(彼も非マヌーシュ)。ヴァイオリン奏者、ギター奏者2、縦ベース奏者を擁してのパフォーマンス。おお、こんなん人なのか。真四角な顔で(なぜか、ぼくはイアン・デューリーを思い出した)、ツンツン頭髪を立てて、入れ墨いっぱい。役者感覚たっぷりに、彼ならではの活劇世界を悠々と作り上げて行く。空気が笑い、カラフルに色付けされ、ときにぐにゃあと歪む。うぬ、任侠ありそう、とも感じた? そのサンセヴェリーノは先の『スウィングの空の下で』の2曲でゲスト入りしラップ調にて歌っている(その2曲はドュバールとベイエのオリジナル曲)が、最後には和気あいあいと一緒にやった。
といった感じで、マヌーシュ・スウィングと繋がりを持つフランスの二組が出た公演だったのだが、実はそれぞれ、デューク・エリントン曲を演奏した。前者は「キャラヴァン」で、後者は「A列車で行こう」。それで、ぼくは冒頭に書いたようなことを思い出したのだ。ああ、愛しの”サー・デューク”。有名な話ですが、スティーヴィー・ワンダーの同名曲はエリントンに捧げられていますね……。そして、ドュバールやサンセヴェリーノもきっと同じ気持ちか(いや、もっともっと濃いんだろうな)。荻窪・杉並公会堂/大ホール。
マヌーシュ(ジプシー)の家庭においてジャンゴ・ラインハルトは枠を超えた誇るべき偉大なアイコンであるわけだが、マヌーシュ・ギターの達人であるアンジェロ・ドュバールが国外に出ていつも感心させられるのは、ジャンゴ・ラインハルトの音楽が世界のあちことでこんなにも愛されているのかという事であるという。62年生まれの彼、実は少年期にはハード・ロック愛好者でドラマーになろうとしたそうな。が、住んでいたトレーラー・ハウスでドラムは叩けないので断念したとのこと。そんな彼はお洒落な、マヌーシュ系としてはかなり洗練された印象を与える(魚も大好きだというし)いい感じのちょい悪オヤジ。知らない人に、フランスから来た俳優なんですよと言えば、けっこう信じる人はいそうだ。彼とコンビを組むボタン式アコーディオン奏者のルドヴィック・ベイエ(78年生まれ。ローランドのアドヴァイザーをやっていて、何度も日本に来ているという。MCでは達者な英語を話していた)は非マヌーシュの音楽学校出で、二人が頭を張るカルテットのベーシストはイタリア人。そんな成り立ちを見ても、アンジェロ・ドュバール&ルドヴィック・ベイエのカルテットが普通のマヌーシュ・スウィング表現からは離れた味を持つのは当然ではないか。特に、二人双頭による新作『スウィングの空の下で』は歌/歌詞のあるシャンソン曲をいかにインスト表現として再提出できるかにのぞんだ、ずっと続いている二人の協調作業においてもとても異色作と言えるものだそう(他の双頭リーダー作と違い、きっちりリハをやってからスタジオ入りしたともいう)で、その流れも持つ今回の公演はよりメロウネスを感じさせるものだったは当然の成り行きだろう。なんでも、出自も年齢層も異なるドュバールとベイエが一緒にやりだした理由は、偶然やったらお互いにコレだァとなったとのこと。
その後に登場したのは、マヌーシュ・スウィングのがらっぱち/自在のスケール感覚を取り入れた情多い手作りヒューマン表現でフランス本国でかなりの人気を受ける(今回、日本公演をリポートする記者とカメラマンが同行しているそう)のサンセヴェリーノ(彼も非マヌーシュ)。ヴァイオリン奏者、ギター奏者2、縦ベース奏者を擁してのパフォーマンス。おお、こんなん人なのか。真四角な顔で(なぜか、ぼくはイアン・デューリーを思い出した)、ツンツン頭髪を立てて、入れ墨いっぱい。役者感覚たっぷりに、彼ならではの活劇世界を悠々と作り上げて行く。空気が笑い、カラフルに色付けされ、ときにぐにゃあと歪む。うぬ、任侠ありそう、とも感じた? そのサンセヴェリーノは先の『スウィングの空の下で』の2曲でゲスト入りしラップ調にて歌っている(その2曲はドュバールとベイエのオリジナル曲)が、最後には和気あいあいと一緒にやった。
といった感じで、マヌーシュ・スウィングと繋がりを持つフランスの二組が出た公演だったのだが、実はそれぞれ、デューク・エリントン曲を演奏した。前者は「キャラヴァン」で、後者は「A列車で行こう」。それで、ぼくは冒頭に書いたようなことを思い出したのだ。ああ、愛しの”サー・デューク”。有名な話ですが、スティーヴィー・ワンダーの同名曲はエリントンに捧げられていますね……。そして、ドュバールやサンセヴェリーノもきっと同じ気持ちか(いや、もっともっと濃いんだろうな)。荻窪・杉並公会堂/大ホール。