まず、九段下・日本武道で、フィリー出身のソウル・コーラス・グループのボーイズ2メンを見る。同業者も言っていたけど、そこそこ入っていて、いまだちゃんと人気を持つのだな。んなわけだから、日本にはいろいろと来ているはずだが、ぼくが彼らをみるのはモータウン勢が複数出た98年の東京ドームのイヴェント以来のこと。その後、彼らは4人から3人組になり、モータウンからも離れたわけだ。ショウに接し驚いたのは、バンドを雇っておらず全面的にプリセットのトラック使用で、3人(スーツ着用、違和感はない。ああ、今はボーイからおっさんになっているのだなと、少し思わせれたか)だけですべてを済ませていたこと。そりゃ歌自体は悪いものではないが、コーラス部の歌パートも事前データーでまかなっている部分があるんじゃないかとか思わせたりもし、興を削ぐ部分はいろいろと出てくる。そのぶん(?)、背景ヴィジョンには臆面もなくヴィデオ・クリップを流したり(けっこう、邪魔に感じました)、どんくさい風景写真を映したりとか。そうした安いディレクションで通す様にはいい根性してんじゃんと思う。

 ところで、今回は“シングス・モータウン”みたいなタイトル付けもされていて、黄金のモータウン曲を主に取り上げるのかとおもいきや、それは3つのブロックのうちの真ん中だけで(ミラクルズ、マーヴィン、エドウィン・スター他の曲を歌う)、少しがっかり。どうせなら、80年代のモータウン曲なども歌い、そこから彼らの持ち歌に流れ、僕たちも偉大な系譜のなかにいるんです、みたいなノリを出したら、耳年増な聞き手はうれしくなるのに……。それでも、ちゃんと1時間半のショウを成り立たせていることについては、褒めてもいいのかな。とにかく、経費は安くあがっていそうで、上がりはでかそう。

 最後までは見ずに、やはりはしごをするという会場で偶然あった知人とタクり、丸の内・コットンクラブへ。こちらは、作編曲家〜プロデューサー的な才も十分に持ち(最終的には、女クインシー・ジョーンズみたいになりたいらしい)、しなやかに自立した風情を与える、NY(ニューアーク)在住の女性の公演。前回来日時のショウには感服しきり(2004年7月1日)だったが、今回はバンドの質も高かったし、それ以上に良かった。高揚し、共感もできた。お酒も、めちゃ弾みました。

 エレピを弾き歌う彼女に加え(今回は鍵盤から離れ、中央に立って歌う場面も)、キーボード、ベース、ドラム、女性ヴォーカルという布陣にてフォーマンス。米国黒人音楽要素をいろいろと俯瞰する感覚を持つ、起伏とストーリー性に富んだ、スペクタクルな今様R&B……。「多くの人がアリシア・キーズと私を比較するけど、それは賛辞みたいなものね(笑)。ただ、私たちが出る以前の女性アーティスト、たとえばパトリース・ラッシェン、アレサ・フランクリン、アンジェラ・ウィンブッシュ、ヴァレリー・シンプソンみたいな、シンガー、ソングライター、ミュージシャンとしてすばらしい人達がいる事に私はもっと誇りに思う。ジル・スコットやローリン・ヒル、インディア・アリーもすばらしい。ポジティブでソウルフルで、メッセージを持っている!」。これは、少し前に新作『ア・ウーマンズ・タッチ Vol.1』(Purpose)を出したときに取った彼女の発言。アリシア・キーズというのは分からないけど、少しは彼女の持ち味を理解してもらえるかな。