ザ・チーフタンズ(1999年5月29日、2001年5月20日、2007年6月1日
)の新ハープ奏者である、アイルランド生まれのもの静かなお姉さんの簡易
ショウ。彼女はずっとクラシックを学んでいたものの(大学はロンドンだっ
たとか)、ひょんなことからザ・チーフタンズに紹介されて一緒にやったら
パディ・モローニたちから気にいられ、2003年にアイリシュ・トラッド界に
転進しちゃったという、キャリアを持つ。ゆえに、いまだトラッド曲と出会
う日々は新鮮らしい。彼女のソロ『アイリッシュ・ハープ』はそういう日々
の積み重ねを素直にまとめたもの。クラシックのハープよりずっと小さいア
イリシュ・ハープは一時イングランドに統治されたときに、ケルト的色彩の
強い楽器であったためか、ご法度にされたことがあったという。もともと王
の前で演奏するような楽器で他のアイルランドのトラッド楽器よりは高尚な
感覚は強いそうであるが、そんな歴史もありハープはアイルランドの誇り高
き楽器と認知されもし、ギネス・ビールのマークにも冠されているわけだ。

 恵比寿・イニシュモア。やっぱり、清らかな音色/情緒を持つ楽器であり
、確実に聞く者を誘う不思議な力を透明感とともに持つ楽器。途中、和な格
好でスキンヘッドなこともあり坊さんみたいな感じを与える外国人が琵琶(
少し、尺八も吹いたか)で加わり、一緒にやはりトラッドぽいのを演奏。シ
ョーンという名の生真面目そうな彼はなんとトリーナのお兄さん。ずっと、
日本に住んで薩摩琵琶の道を究めんとしているそうだ。

 ザ・チーフタンズのツアーが空いたときトリーナや同行ダンサー/フィド
ラー陣(ビラツキ兄弟)はモローニに勧められたことがきっかけでザ・チー
フタンズのマット・モロイのパブで仲間を誘って“お楽しみライヴ”を行い
、それがトレッドというアイリシュ/カナディアンの若手混合グループの結
成に繋がった。彼らのアルバム『ライヴ・フロム・マット・モロイズ』はそ
ういうグループの成り立ちをタイトルに持ってきたスタジオ録音作だ。そのト
レッドは12月にやってくることになっている。ルーツと人の情が導く、尽き
ぬ連鎖......。