現在、音楽の街ニューオリンズはレコード屋が1軒しかない。被災後、H
MVが撤退し、タワー・レコードがなくなってしまい、今はフレンチクォー
ター(ハウス・オブ・ブルースのとい面)にあるルイジアナ・ミュージック
・ファクトリーという店だけになってしまったのだとか。話はそれるが、ぼ
くは滞在中に本屋は一軒も見つけることができなかった。そっちのほうはや
はりネット売り商品になってしまっているのか。

 ともあれ、そのミュージック・ファクトリーはびっくりできる、素晴らし
い店。いろんな都市のレコード屋にいろいろと行っているが、ぼくのなかで
筆頭に挙げることができるお店。1Fは出身者も含め、ニューオリンズ関連
アーティストが鬼のように並んでいる。ウヒっ。ファッツ・ドミノとかプ
ロファッサー・ロングヘアーとか有名/重要アーティストだとエサ箱3列ぶ
んぐらいあったりして。2Fは中古盤が置かれていて、CDだけじゃなくL
Pやドーナツ盤もならんでいる。書籍やヴィデオも興味深いものがあったし
、欲しいものだらけで、最初に行ったときはマジ気分が悪くなってしまった
。いくら、お金があってもおいつかない。あと、店に流れているヴァイブが
なんとなくいいんだよなあ。落ちつける。ジャズ&ヘリテッジ・フェスのと
きはインストア・ライヴなどもやり、かなり混むようではあるが。

 夜も深まり、ヨロラ大学の前を通ってメイプル・リーフへ。ジョン・グロ
ウや山岸潤史ら5人組のパパ・グロウズ・ファンク(2004年3月30日、20
05年7月30日)は外にツアーに出ていない限り、毎週月曜にここに出るとい
う。彼らは先週まではコロラド他のツアーに出ていたそうで、去年はとって
もライヴをやった年であったとか。パパ・グロウズ・ファンクはテーパー録
音を認めるバンドであるが、ツアーのオファーが多いのはジャム・バンド愛
好層の支持を受けていることもプラスに働いているらしい。そんな彼らはツ
アーの積み重ねを反映させたスタジオ録音新作『ミスター・パターソンズ・
ハット』を近くリリースするが、なんと7曲がヴォーカル・ナンバーとなる。
前から山岸はグロウにもっと歌えと言っていたそうだが、そのタイトル・ト
ラックはカトリーナ被災後の気持ちを綴った曲で、言葉に表したい事がハリ
ケーン後に増えたというのもヴォーカル曲が増えた理由らしい。実はグロウ
って、ランディ・ニューマンのような人も大好きなんだよね。

 8ドル、タダで入れてもらったけど。ぎっとり。寛ぎ、ぐりぐり。ときに
、洗練を少しまぶして。白人、黒人、東洋人と、メンバー構成もガンボなの
ね。なるほど、グロウが歌う頻度は増えている。途中で、連帯の気持ちを表
するために(?)ザ・ビートルズの「カム・トゥゲザー」のカヴァーも。い
いじゃん。『ヴードゥ・ビートルズ』を作りなよと、進言する。また、終盤
にキーボード、ドラム、ギターなんかが遊びに来ていた人達に変わる。白人
ギターは山岸のトラをやったりする人とか。ニューオリンズのバンド、Nori
Naraoka’ 93D の来日ライヴも最後は大胆にお客さんに演奏に加わらせた(2
006 年8月8日参照) が、なるほど、そういう開かれた態度、音楽をおおら
かにシェアしようというのもニューオリンズ・ウェイなんだろうな。それは
、パレードなんかに接しても感じることだ。