5月6日(木)
Limited Express (has gone?),ズボンズ,flok enough

ほう、10日ぶりのライヴ行きとなるのか。どこに行くにも混んでいる
し、毎年ゴールデン・ウィーク中は東京でまったりしているが、今年は
けっこう原稿仕事していたな。知己とは合ったりしたが、多くの人が集
まるような場に行ったのは、4日に新宿・ロフトプラスワンでの<著作
権法改正の実態を知るためのシンポジウム>に行ったぐらい。やっぱ、
できるだけ多彩な選択肢のもと自由に、いろんな音楽を享受したい。ラ
イヴも同様に。

 渋谷・クラブクアトロ。洋楽の好影響を受けた3つの日本人バンドが
出るイヴェント、偶然だろうけど女性メンバーがどのバンドにもいます
ね。
 
 まず、Limited Express (has gone?) 。なるほど、小野島さんのニュ
ー・ウェイヴ・トリビュート盤『Fine Time 』に入っていたバンドだが
、こーゆーバンドでしたか。説明するのになかなか困るが、逃げの紹介
の仕方するなら、若い世代によるハード・コア感覚抜きのメルト・バナ
ナ、なるもの。ぼくは溜めの効いた一番スロウな曲が気に入った。

 続いてズボンズ。事前にもらったちらしに、<ジャム・バンドと化し
た>という記載があったがなるほど。ずりずりっとした質感を持つイン
ストで流れていって、このまま歌が入らずに行くのかと当初は思わせた
。途中から多少歌も入ったが、インスト主体でエキサイトメントを獲得
しよう(2ドラムスに、パーカス付きの編成)とする方向に今のズボン
ズがあるのは間違いない。最初のほうのマツオのギターは少しカルロス
・サンタナを想起させたりも。

 そして、最後に出てきたのが福岡のfolk enough 。知人がフォーク・
インプロージョンとジョン・スペとの間を行き来するようなバンドと説
明していたが、当たらずも遠からず。喋るの好きなんです、と言いつつ
やってたMCはぼくにはNG。

5月9日(日)
ステレオラヴ

 あれ、これ本当にあのステレオラヴ(2000年2月16日)? ちゃんと
した実演、歌もまっとう。ライヴの前に、久保田麻琴さんにお誘いを受
けて鈴木茂さんや小原礼さん、沼澤尚らが参加しているモータウンへの
トリビュート盤のレコーディングを見に行き、「さっすがプロは一発で
決まるナ」なぞと感服したあとだけに余計に脆弱に感じるんじゃないか
、なんて危惧を覚えて渋谷・クアトロに行ったのだが、全然そんなこと
はなし。ちと、驚く。

 その久保田さん主導のレコーディング/アルバム制作(『SAKURA MOT
OWN REVUE 』という名前になるよう)は、映画『永遠のモータウン』(
2003年12月2日)に触発されてのもの。基本的にこのレコーディングは
一発録音で、歌手もバンドと一緒に歌っているという。ぼくが立ち会え
た曲はLA在住のmimi(2003年2月13日)があちらで歌入れするので、
演奏陣だけの一発だったが。

 話は飛んだが、実に大人な、プロっぽさもちゃんと感じさせるパフォ
ーマンス。おや、と思ったのはクラヴィア社のノード・エレクトロを3
台もステージ上に置いていたこと。綺麗な赤いボディなので目立つ。先
程触れた久保田セッションに参加していたマレーシアから来ていたキー
ボード奏者もグランド・ピアノ以外はそれ一台で済ませていて、その威
力を目の当たりにしたばかりだったので、なんか過剰に目についてしま
った。ついでに言えば、この前のデイヴィッド・シルヴィアンの公演(
4月24日)でも、シルとスティーヴ・ジャンセンはノード・エレクトロ
をそれぞれ使用していましたね。

 アンコールの最後はジャム・バンド(いまや死語となった往年のニュ
ー・エイジ・ミュージックのような情緒的な用語だが、最近この言葉、
けっこう便利だなあと思っている。ロック・バンドのりで、インスト主
体でなりゆきまかせでずんずん行くようなたスタイルを指す言葉として
……使える)っぽく行く。メンバー一人の死がどのぐらい影響している
か判らないが、へーえ。ドラムもヴァイタルに叩きまくり。やっぱり、
バンドは生き物。ステレオラブなんてすでに出来上がっているバンドと
思っていたが、とんでもない。やっぱ、ライヴは見てみないと判らない

5月10日(月)
レイラ・ハサウェイ。アメーリュ・ラリュー

 まず南青山・ブルーノート東京で、レイラ・ハサウェイ(2002年5月
13日)。キーボード、電気ベース、ドラムというシンプルなバッキング
を受けてのもの。で、今回のポイントはダニー・ハサウェイ味を感じさ
せるフランク・マッコム(2004年4月15日)がキーボード奏者として同
行していること。となると、阿呆な受け手になっちゃうが、やっぱりハ
サウェイの曲をやることを期待しちゃうよにゃー。結局、ダニー・ヴァ
ージョンの「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」をやっただけ。ただし、
エレピ一本をバックにデュオったこの曲にはパブロフの犬になっちゃっ
た。マッコムはバックのときのほうが余裕があったのか、ピアノがうま
く聞こえた。

 ファースト・セットを見たあと、渋谷のDUOに。エリック・ロバー
ソンとアメール・ラリュー(2000年6月13日)。ありゃ、ロバーソンは
ラリューのバンドで3曲歌っただけとかで、すでに終わっていた。

 ラリューはこんなに陽性というか、活発な印象を与える人だっけ。バ
ンドはかみ合い良好、ちょっとアフリカ的な何かを出す二人のバッキン
グ・ヴォーカルもいい感じ。ただ、本人気張って歌いすぎ。逆に、ピッ
チが悪いのがもろに伝わるものになってしまっていて、ほんの少し退く
。暖簾に腕押しという形容もありかもしれない、ぬめぬめ、とらえどこ
ろのなさが魅力のインディ発新作の雰囲気を期待していたゆえ、余計に
そう感じたかも。

 その後、BMR誌を辞める編集者のお疲れ様パーティに言ったら、後
からロバーソンも登場。さらりとア・カペラで2曲。

5月13日(木)
中村善郎。ザ・バッド・プラス

 まず原宿・ブルージェイウェイで、日本人ボサ・ノヴァ歌手。ギター
弾き語り。よく異文化にある、微妙な洒脱様式とその楽曲をモノにして
いると思う。ものすごい、レパートリーがあるんだろうな。

 続いて南青山・ブルーノート東京。はみ出しピアノ・トリオ、昨年の
来日(2003年8月1、2日)に続く来日公演。物凄く近くで見たのだが
、ドラムがいろんなものを持って叩くんだな。トランシーバーとか。う
ひひ。前回よりずっと印象良い。彼は彼らなりつっぱり、今を行こうと
している。             
 ジ・オールマン・ブラザーズのドラマーのブッチ・トラックスの甥であ
り、5年前から同バンドのメンバーでもある、スライド・ギターの若手名
手のバンド。4年前に、MMWに最近いいのはと聞いたときに、彼の名前
が返ってきたのが、ぼくにとっては彼を認知するきっかけだった。

 毎年開かれている“ブルース・カーニヴァル”の一環での公演。なるほ
どジャム・バンド・ミュージック界の人気者らしく、テーパーも数人。キ
ーボード/フルート、ベース、ドラム、そしてインスト主体表現ながら専
任シンガーも一人。本人とベーシスト以外は、肌の色が濃い。ドラマーは
この18日亡くなったジャズ・ドラム巨人、エルヴィン・ジョーンズ追悼の
発言をしたりも。

 なるほど堂にいった、こなれた、ブルーズ・ロック・ビヨンド。だが、
ときに不思議な浮遊感を感じさせたり。それ美味しい揺れや、押しの弱い
淡白さとも繋がるのだが、そういう事も含めて、世代のようなものを感じ
させたか。渋谷・クラブクアトロ。