昨年6月にモントリーオール・ジャズ祭で、上原ひろみ(2004年11月25日、2005年7月31日、2006年9月3日、2009年9月4日、2010年12月3日、2011年9月3日、2011年9月9日、2011年12月11日、2012年7月25日、2012年12月9日、2014年9月6日、2014年9月7日、2016年9月4日、2016年9月15日、2016年11月16日、2017年5月7日)とコロンビア人ハープ奏者のエドマール・カスタネーダ(2014年1月12日)は前後して同じステージに出演。上原が彼の演奏を見初めて、その3週間後にはブルーノート・ニューヨークに帯出演した上原のショウで共演し、今年はずっと一緒にツアーしているお二人のショーケース・ライヴ。銀座・王子ホール。

 物理的に地に足をつけた、横に置くか縦に置くかの違いはあるものの、似たような形をした楽器を忌憚なく会話させる。上原の出たばかりの新作はこの6月下旬にデュオ・ツアーの一環にあったモントリオール・ジャズ・フェスティヴァルで録られたライヴ・アルバムだが、そこに溢れる音楽のする喜び、それを共有できる僥倖を“ネイキッド”な形で収められていたそれを、また新たな輝きを介して届ける。カスタネーダが書いた「ジャコ」という比較的グルーヴを抱えた曲で、上原はプリペアド・ピアノにてソロをとった。エドマールの演奏音から感化されてそうしたんだろうけど、そんな奏法を取った彼女には初めて接する。

 とにもかくにも、本当に二人は仲が良さそう。ジャズ・ジャパン誌のディスク・レヴューでぼくはカスタネーダのことを“ハープ版上原”と記したが、本当に二人の様は兄妹みたいだ。出会いからツアー/レコーディングのことまでを語ったインタヴューは http://www.cdjournal.com/main/cdjpush/uehara-hiromi/1000001339 で読めます。二人は、この11月にちゃんと日本ツアーを行う。

▶過去の、上原ひろみ
http://43142.diarynote.jp/200411292356580000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050731
http://43142.diarynote.jp/200609070211000000/
http://43142.diarynote.jp/200909120647256771/
http://43142.diarynote.jp/?day=20101203
http://43142.diarynote.jp/201109121452527893/
http://43142.diarynote.jp/201109151818437240/
http://43142.diarynote.jp/201112191449196187/
http://43142.diarynote.jp/201207310933428147/
http://43142.diarynote.jp/201212140959573710/
http://43142.diarynote.jp/201409100929108025/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
http://43142.diarynote.jp/201609201052518160/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160915
http://43142.diarynote.jp/201611171021419374/
▶︎過去の、エドマール・カスタネーダ
http://43142.diarynote.jp/201401171004104264/

 その後は、南青山・ブルーノート東京で、テキサス州フォートワース出身トランペッター/フリューゲルホーン奏者であるロイ・ハーグローヴ(2003年2月18日、2003年9月21日、2004年12月2日、2007年9月10日、2008年9月16日、2009年6月24日、2011年2月22日、2012年3月23日、2013年2月26日、2014年2月19日、2016年1月27日、2017年3月2日)のジャズ道を極める傍、長年のソウル/ファンク愛好の様を素直に出さんとするフュージョン・バンドであるR.H.ファクター(2013年2月26日 )を見る。

 ロイ・ハーグローヴに加え、ヴォーカルの(中央に出てきて歌う際以外も、キーボードの前に座りそれを弾いた)ルネー・ヌーヴィル(2013年2月26日)、キーボードのボビー・スパークス(2007年12月13日、2012年12月5日、2016年1月25日、2016年10月11日、2017年4月18日)、同じくキーボードのブライアン・ハーグローヴ(兄弟と、ロイ・ハーグローブから紹介された)、アルト・サックスのブルース・ウィリアムズ、テナー・サックスのキース・アンダーソ、ギターのトッド・パースノウ(彼のみ、白人。若いときのディッキー・ベッツ〜2013年6月27日〜みたいな風貌だった)、ベルギー在住のベーシストのレジー・ワシントン(2003年9月21日、2010年10月12日、2016年6月11日、2017年4月29日)、ジェイソン "JT" トーマス(2010年6月17日、2017年4月18日)という面々。皆、腕はたつ。不毛な比較だが、一昨日のテラス・マーティン公演の陣容と比較するなら、やはりLAよりNYの方がプレイヤーの層は厚いとも思わされる。

 当初はインスト主体(ハーグローヴは一部、トランペットに電気エフェクトもかけた)でグツグツ進み、その後ヌーヴィル(実は男性陣は皆1970センチ以下の身長と思われ、ヒールがあったとはいえ、彼女の背が一番高かった。しかし、彼女がかつて在籍した前米1位曲も持つ3人組の女性ヴォーカル・グループのジャネイのもう一人のシンガーであったジーン・ベイラー〜2007年12月13日〜もジャズ側とつががる形で現役だし、いい人材が揃っていたのだな)のキーボード・ピアノ弾き語りから、彼女の歌をフィーチャーするパートに入る。その際、ロイ・ハーヴローヴは彼女がいたキーボードの前に座りコードを抑えもしたのだが、その一方で彼はフリューゲルホーンを手に取る。おおお。ソウル/ファンク側においるハーヴローグ最大の功績はディアンジェロ(2015年8月18日)の2000年作『ヴードゥ』においてベールのごときメロウな菅音作りを担ったことにあるのだが、あの同作を見事に引き立てたホーン音はフューゲルホーンの音主体で作られたのか! そう思わせるものがあって、ぼくはほのかに感動。Dの2014年発の次作『ブラック・メサイア』も結局、『ヴードゥ』の先進性や黒さは超えられなかったわけで(でも、いい作品と思います)、今でもあの突出的名盤『ヴィードゥ』のカラオケをちゃんと再現したらこの手のライヴではピカ1無敵だよなと、ぼくは思ってしまった。

 ヌーヴィルさんフィーチャー部の後は、ロイさんもやっぱし歌うのが好きなんですねえという、怒涛の娯楽パートに突入。「ワン・ネイション・アンダー・ア・グルーヴ」(何気に、メンバーたちは効果的にハモっていた)と「ギヴ・アップ・ザ・ファンク」のP-ファンク(2002年7月28日、2009年9月5日、2011年1月22日、2013年4月12日、2015年4月12日、2016年11月29日)曲2連発にはアガった。

 視野の広い、呑気な(新しい視点は加味されていない)カヴァー・バンドと言えなくもなく、過剰に評価するものでもないが、質はあったし、楽しかった。満足感をたっぷり得ました。

▶過去の、ロイ・ハーグローヴ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-2.htm 18日、ディレクションズ・イン・ミュージック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-9.htm 21日
http://43142.diarynote.jp/200412111742300000/
http://43142.diarynote.jp/200709171108570000/
http://43142.diarynote.jp/200809171409066704/
http://43142.diarynote.jp/200906300951327850/
http://43142.diarynote.jp/201102240921561671/
http://43142.diarynote.jp/201203260806527228/
http://43142.diarynote.jp/201302281048405875/ R.H.ファクター
http://43142.diarynote.jp/201402201343247604/
http://43142.diarynote.jp/201601301016081732/
http://43142.diarynote.jp/201703081443314613/
▶︎過去のルネ・ヌーヴィル
http://43142.diarynote.jp/201302281048405875/
▶過去の、ボビー・スパークス
http://43142.diarynote.jp/?day=20071213
http://43142.diarynote.jp/?day=20121205
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
http://43142.diarynote.jp/?day=20161011
http://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
▶︎過去の、ディッキー・ベッツ
http://43142.diarynote.jp/201306281331578950/
▶︎過去の、レジー・ワシントン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-9.htm R.H.ファクター
http://43142.diarynote.jp/201010191156412288/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160611
http://43142.diarynote.jp/?day=20170429
▶︎過去の、ジェイソン”J.T.”トーマス
http://43142.diarynote.jp/201006181524353169/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170418
▶︎過去の、ディアンジェロ
http://43142.diarynote.jp/201508200741137207/
▶︎過去の、ジーン・ベイラー
http://43142.diarynote.jp/?day=20071213

<今日の、名曲と注目作>
 昨年のハーフローヴ・クインテット公演でも披露していたハービ・ハンコック(2000年3月14日、2001年12月27日、2003年8月23日、2005年8月21日、2012年3月3日、2014年9月7日、2015年9月6日、2016年9月3日)のヘッド・ハンターズの「アクチュアル・プルーフ」もわりと素直に彼はやった。この1974年曲はハンコック1973年曲「バタフライ」と並ぶ魅力的なモワモワを含む美曲だが、ロバート・グラスパー(2007年10月3日、2009年4月13日、2009年12月19日2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日、2015年6月8日、2016年12月20日、2017年6月5日)、クリス・デイヴ(2009年4月13日、2009年12月19日 、2010年12月16日、2012年9月21日、2013年9月28日、2015年8月18日、2016年1月25日、2016年10月11日)、マルチン・ボスレフスキ・トリオ(2015年9月24日、ハーヴィー・メイソン(2002年8月11日、2010年7月9日、2011年6月21日、2014年5月28日、2016年4月5日、2017年9月1日)などが来日公演で披露していて、本当に人気ですね。
 話は飛ぶが、在NYのトランペッターのキーヨン・ハロルド(2014年1月10日、2016年1月25日、2016年12月31日)の8年ぶりとなる新作『ミュジシャン』(オーケイ/ソニー)のジャズからR&Bやヒップホップまでが渾然一体となった内容がグっとくる。そこには、ジェイムス・ポイザー(cf.ザ・ソウル・クェリアンズ)もグラスパーもクリス・デイヴも入っている。
▶過去の、ハービー・ハンコック
http://43142.diarynote.jp/200405101355540000/
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
http://43142.diarynote.jp/201509220833541918/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160903
▶過去の、ロバート・グラスパー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/
http://43142.diarynote.jp/201506091124003170/
http://43142.diarynote.jp/201612211059578863/
http://43142.diarynote.jp/201706061756141899/
▶過去の、クリス・デイヴ
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120921
http://43142.diarynote.jp/?day=20130928
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
http://43142.diarynote.jp/201610141747514263/
▶マルチン・︎ボシレフスキ・トリオ
http://43142.diarynote.jp/201509250943244179/
▶過去の、ハーヴィー・メイソン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-8.htm 8月11日、トム・スコット
http://43142.diarynote.jp/201007110625087085/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110621
http://43142.diarynote.jp/?day=20140528
http://43142.diarynote.jp/201604060850393487/
http://43142.diarynote.jp/201709071307037021/
▶過去の、キーヨン・ハロルド
http://43142.diarynote.jp/201401161534392423/
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/

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