ザ・ローリング・ストーンズ(2003年3月15日)にはやはり破格の思いがある。大学時代、ストーンズ中心のコピー・バンドを熱心にやったことがあって、その構造やコード進行には強いという自負がある。『エグザイル・オン・メインストリート』はいまだ“人生の10枚”に入る、超お気に入り盤だ。で、8年ぶりだかのツアーとなった1989年“スティール・ホイールズ”ツアーの際は、それをアメリカに見に行った。あれは、本当に輝かしい思い出だ。

 TOC五反田メッセ。デビュー当時からのいろんなアイテムを、なるほどいろいろ揃えている。初期のファン・クラブ会報(「ザ・ローリング・ストーンズ・ブック」)みたいなのがずらり並べているコーナーもあり。へえ、そんなの出ていたんだ、アイドルだったんだな。60年代前半のキースのマメな自筆日記には皆んな驚くだろう。楽器や衣装もいろいろ展示されている。チャーリー(ジャズ・ドラマー志望で、レギュラー・グリップで叩く)の1965年ラディックのセットはシンプルながら、カウベルが付いていた。アート・ワーク関連展示では、アンディ・ウォーホルの作品もいろいろ。そうしたものの、値踏みをした人もたくさんいたか。

 展示のコーナーの頭のほう、黎明期のメンバーの部屋を再現する一角になっていて、そこにはチャック・ベリー、マディ・ウォーターズ、ジミー・リードらのアナログ・ジャケットが置かれていた。後のコーナーには、ジャケット関連の紹介や雑誌記事が並んでいるところがあり、米国黒人雑誌のエボニーに出稿された『サム・ガールズ』の広告も紹介。なるほど、彼らや送り手側はストーンズの音を非白人にもおくりだすという意図をもっていたのか。ツアーに関する項目もあったが、だったら、彼らが前座として起用したアフリカ系アクトを主とする人たちも紹介してほしかった。

 入場時に、ぼくはクレジット・カードで入場料を支払ったが、有限会社@@@@@で請求されますと言われた。なにも、そんな不自然な名義にしなくてもいいのにねえ。怪しいお金の流れがあるのとかと、勘ぐってしまう。入場時には、カメラ/ヴィデオ撮影OKですと言われる。多くの人がひっきりなしにケータイやカメラを構えていた(少し邪魔なときもあった)が、ぼくは一切撮らず。だって、パカパカ撮っていると見るのが置き去りになりそうな感じがしてヤ。それよりも頭のなかに刻んじゃえば(いらなければ、忘れれば良い)、OKじゃん。

 始まってから1ヶ月以上たち、平日の昼間であるのに結構人がいた。ストーンズ、ごっつい人気あるんだなと再確認。おかげで、売りの一つである、楽器トラックを選んで聞くことができるという装置は埋まっていて、扱うことを断念。その場所、そんなに広くなく、後ろで待っていると通行の邪魔になる感じもあったし。だいいち、待つの嫌いだし。ただし、物販の場はそれなりに広く、いろんなものがあった。ちっ高いなあ、とか冷めつつチェックしたが、可愛い小さな子供用のソックスや小さ目のウンブロ製サッカー・ボールを見て、ぼくにちっちゃい子供がいたら買っちゃいそうとも思った?

 美術館のような、厳重な警備のようなものはなし。皆んな、気ままに見れる。総じて、ロックは金になる、巨大産業たりえるということを、如実に示す。 “セックス&ドラッグ”といった、負の要素を語るものはなし。唯一、映像部で、その手を扱った「コックサッカー・ブルース」がちらり紹介されるだけ。ストーンズ映画群を紹介する映像での進行語り役は、マーティン・スコセッシだった。

▶過去の、ザ・ローリング・ストーンズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-3.htm 3月13日(バック・バンド)。15日

 その後、市ヶ谷・日本シネアーツ試写室で、2019年日本映画「Tribe Called Discord:Documentary of GEZAN」を見る。マヒトゥ・ザ・ピーポー(2014年1月8日)がフロントに立つ4ピースのロック・バンドであるGEZANの米国ツアーを発端とするドキュメンンタリーだ。撮影/監督/編集はメンバーたちと近い位置にいる、1988年生まれの神谷亮祐。作品を見る前は、彼らが初めてやった悲喜こもごものDIYツアーを追うロード・ムーヴィみたいなものと思っていたら、かなり違っていた。

 前半に、黒人に蔑視の目を向けられショックを受け、アメリカの影を見たような気持ちになった(大意)と話す場面が出てくる。10代のバンドではないのだからあまりにナイーヴすぎない&少し無知ではないかと思ったんだが、まあなるほどそれを出す理由もあった。

 300万円を集め、西海岸中心のツアーとスティーヴ・アルビニの制作によるシカゴでのレコーディング(それは、『Silence Will Speak』というアルバムとしてリリースされた)を、面々は昨年3〜4月に敢行。レコーディングの模様は一切出てこず、ツアーのみが扱われる。

 当然のことながら、彼らは現地で様々な属性を持つナマの人たちと出会う。なんでも、彼らは関係者のところに泊めてもらうととともに、ライヴ会場で出会った人に泊まる場所がないので泊めてくれないかと申し出て宿泊したりもしていたよう。ツアーの山場は、ある場所で34歳のネイティヴ・アメリカンの女性ん家に泊めてもらい、彼女の境遇を聞くとともに、翌日にはコミュニティ・センターでのネイティヴ・アメリカンの親睦会に彼らは連れて行ってもらったりもする。そこで、米国にしいたげられてきている彼らの歴史や考え方に触れ、メンバーたちはいろんな思いを山ほど抱く……。

 そうしたツアーから、彼らは何を得て、それがどうGEZANの音楽や活動にはねかったかを、最終的に映画は語ろうとする。人はなぜ音楽を作るのか、なぜ音楽を求めるのか。そういう問いへの、一端がちゃんと開かれているとも言えるだろう。劇中音楽は、マヒトゥ・ザ・ピーポーが担当。なお、幻冬社のwebマガジンで彼が連載中のものをまとめた、『銀河で一番静かな革命』が同社から5月に刊行されるという。映画の公開は、6月下旬となる。

 最後の5分の1は、帰国後のGEZANや監督の様を伝え、彼らが主宰するフェス“全感覚祭”の模様(10月の2日間、堺で投げ銭制のもとひらかれた)を追った映像で終わる。いろいろな人が出ていて、テニスコーツ(2008年10月9日、2010年9月19日)や原田郁子(2007年9月24日、2009年11月1日、2011年4月6日、2015年2月6日、2015年5月12日、2017年9月8日)や青葉一子(2013年8月7日、2014年1月8日、2016年11月16日)らも出演。そこで使われる歌詞も画面に出されるGEZANの「DNA」は胸に染み入る。そちらのオフィシャル・ヴィデオのほうは、米国ツアーの様々な映像が使われている。

▶︎過去の、マヒトゥ・ザ・ピーポー
https://43142.diarynote.jp/201401141413008927/
▶過去の、テニスコーツ
http://43142.diarynote.jp/200810111558573845/
http://43142.diarynote.jp/201009231554333481/
https://43142.diarynote.jp/201407261220126653/ 植野隆司
▶過去の、青葉市子
http://43142.diarynote.jp/201308110827534904/
http://43142.diarynote.jp/201401141413008927/
https://43142.diarynote.jp/201611171021419374/
▶過去の、原田郁子
http://43142.diarynote.jp/200709261218590000/
http://43142.diarynote.jp/200911021429368036
http://43142.diarynote.jp/201104091623415118/
http://43142.diarynote.jp/201502071011467530/
http://43142.diarynote.jp/201505131326474300/

<今日の、紹介>
 ぼくがおおいに一目を置く(ライヴを見たことがないので、大好きなとは言うまい)トリオの日本人ロック・バンドのルロウズ/Loolowningen & The Far East Idiots が、この3月から4月にかけて、西海岸と東海岸を車で回るツアーを行った。以前にも米国ツアーの経験を持つ大人のバンドである彼らのあまりに興味深い楽旅の記録は、そのHP( http://www.loolowningen.com )に載せられている。音楽がつなぐ、場所を超えた人の繋がりっって、本当にすごい。映画では、住宅地にある家の裏庭やリヴィング・ルームでライヴをする模様も映されているが、それは珍しいことでないのもわかります。
▶︎過去の、Loolowningen & The Far East Idiotsのアルバム『CREOLES』の記載
https://43142.diarynote.jp/201610120805451037/