大西順子

2016年10月28日 音楽
 ジャズ・ピアニストの大西順子(1999年10月9日、2007年9月7日、2010年9月30日、2010年12月22日、2011年2月25日、2011年8月6日、2015年9月6日)の新作『Tee Times』(Taboo)をフォロウする公演。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。

 梅雨どきに出された新作は菊地成孔(2001年9月22日、2002年1月5日、2002年11月30日、2004年7月6日、2004年8月12日、2005年6月9日、2006年1月21日、2007年11月7日、2009年7月19日、2010年3月26日、2011年4月22日、2011年5月5日、2011年7月31日、2013年3月26日、2013年7月27日、2014年2月20日、2014年4月3日、2014年9月7日)のプロデュースによるもので、このショウも彼が十全に見てのものだろう。『Tee Times』と同様に、現代的な歪みを持つトリオ表現(3曲)、ホーン・セクション群がついたもの(3曲)、ラップ付き(1曲)の3種が披露された。

 基本となるのは、アルバムと同じ顔ぶれであるウッド・ベースのジュニオール・テリー(2007年11月21日、2010年5月30日、2010年8月22日、2011年12月8日、)とドラムのテリオン・ガリー(2006年9月17日、2010年3月23日、2012年6月19日)というリズムを擁するトリオによる演奏。まず、これが破格。テリーとガリオンのヒップホップ〜サンプリング感覚を自在にジャズ流儀生演奏に持ってきたようなリズム・セクション音が格好良くも気持ちよすぎるし(⇦本当に、すごっ)︎、そこに乗る大西のピアノも獰猛にして、エモーショナル。ある種のうれしすぎるブラックスネスを介するその癖あるフレージングは日本人唯一であり、アンドリュー・ヒルとかそういうアフリカン・アメリカン逸材を思い浮かべたくなるものではないか。そして、それを引き出す、菊地作の楽曲も冴えている。このトリオだけでやる日もあったら、ぼくは生理的に失禁するかもしれない。

 サックスの庵原良司と近藤和彦と鈴木圭と高橋弥歩、トロンボーンの半田信英と笹栗良太と山城純子、トランペットの中野勇介と菅坡雅彦と菅家隆介という10人の菅奏者がつく曲は、トリッキーさも散りばめた菅音がトリオ音に差し込まれる。うち、2曲はアレンジをした挾間美帆(2014年7月10日、2015年10月15日)が指揮し、もう1曲は菊地成孔が司る。ジョージ・ラッセルの難曲「クロマティック・ユニバース」の際に、菊地は指揮したんだっけ? なかなか日程/金銭的に困難とは思うが、鋭敏に綻びた現代ピアノ・トリオと非日常に悠々たゆとうような菅セクション音(弦セクション音も)が縦横に全面的に渡り合うものも聞いてみたいと切に思う。また、日本語ラップ付き曲では、SIM LABのOMSB (2013年3月26日、2014年2月20日)と菊地が入って広がりを加える。アルバムを聞いたときも思ったが、日本語でも何語でもいいんだけど、もっとクール(もしくは、無意味)なリリックでもっとダイナミックなものでないと大西の世界には合わないと、ぼくは思う。

▶過去の、大西順子
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/octber1999live.htm
http://43142.diarynote.jp/200709131138020000/
http://43142.diarynote.jp/201010030952428017/
http://43142.diarynote.jp/201012241100592422/
http://43142.diarynote.jp/201102261254532443/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110806
http://43142.diarynote.jp/201509220833541918/
▶過去の、菊地成孔
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-9.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-1.ht
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200407062149440000/
http://43142.diarynote.jp/200408120238330000/
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http://43142.diarynote.jp/200711101236210000/
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http://43142.diarynote.jp/?day=20100326
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http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
▶︎過去の、ジュニオール・テリー
http://43142.diarynote.jp/200711290930350000/
http://43142.diarynote.jp/201008261620103318/
http://43142.diarynote.jp/?day=20111208
▶︎過去の、テリオン・ガリー
http://43142.diarynote.jp/200609190457510000/
http://43142.diarynote.jp/201006071814015815/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100323
http://43142.diarynote.jp/201206210944302024/
▶過去の、挾間美帆
http://43142.diarynote.jp/201407111305232157/
http://43142.diarynote.jp/201510181000334516/
▶︎過去の、OMSB
http://43142.diarynote.jp/?day=20130326
http://43142.diarynote.jp/?day=20140220

<今日の、主役>
 大西は、とってもうれしそうにピアノに向かっていた。MCも軽やかだった。休養/引退〜復帰をエキセントリックに繰り返しているということで、ぼくのなかでは大西とヴァン・モリソンの姿をほんのすこし重ねたくなってしまう。選ばれた表現者の業の深さとは、そういうもの。それは致し方ない。気分がノったときは人前に出て颯爽と演奏してほしい、そう願うだけだ。ところで、彼女の生理的に重く、のたうつ指さばきに触れながら、1903年生まれのジャズ初期重要ピアニストであるアール・ハインズのこともちょい頭に浮かんだ。俺、ずっと前からハインズのことをきっちり聞かなきゃいけないと思っていて、それを果していない……。

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