矢野顕子トリオ。エリマージ
2014年8月7日 音楽 ますは矢野顕子(2004年7月20日、2008年8月3日、2008年12月14日、2009年8月19日、2009年9月4日、2009年12月13日、2010年12月12日、2011年9月9日、2011年12月11日、2012年8月21日、2013年8月11日、2013年11月30日)、恒例夏場のブルーノート東京公演を見る。電気ベースのウィル・リー(2008年12月7日、2009年8月19日、2012年8月21日、2012年11月26日、2013年12月5日)とドラムのクリストファー・パーカー(2009年8月19日、2012年8月21日)という、近年ずっと一緒に夏場の来日ライヴをやっているリズム隊を従えての出し物。
2012年に矢野顕子にインタヴューした際、このトリオについて「私たちは、この3人で演奏するのが楽しみでしょうがないんです。年々、バンドとしての“バンド度”というものがあがって来ていますから。どんどん“濃ゆく”なっているので、どんな曲がきてもバンドの音に達するのが早くなっているのを去年あたりから感じていまして、曲に対する愛情の注ぎ方も強くなっています」と語っていたが、わあ、まさか今回こんなバンド音でくるとは! フレッシュ。かなり、過去の行き方とは違っていた。
その鮮やかな差異は、今年発表した新作『飛ばしていくよ』(ビクター)が導いた。彼女にとって5年半ぶりのアルバムとなる同作はエレクトロ・サウンドを介した内容だったわけだが、今回はそこからの楽曲を中心に披露したことで、リーとパーカーの出す演奏音や噛み合いが大きく変わっていたのだ。そこは二人とも、百戦錬磨のスタジオ・ミュージシャンとしての積み重ねを持つ。ゆえに彼ら、ほうと感嘆したくなるほど、矢野が持つ新世界に対応しようとしていた。
リーは今回、ベースを肩から外し、小振りなシンセサイザーに向かいベース音や音響音を出すこともあった。また、パーカーも過去とは全然異なる叩き口のドラミングを見せ……。プリセット音を下敷きにした曲もあったが、その際パーカーはヘッドフォンを付けて演奏した。とか、その様にはNYのスタジオ界で長年生きて来た熟達奏者の矜持を山ほど感じてしまったな。リーはハーモニカを吹いりもしたが、ミュージシャンシップをかけたその総体は当然ながら過去のトリオの関係性とは少し離れるものであるとともに、新作『飛ばしていくよ』のサウンドとも位相を異にするもので、接していて、面白くてしょうがなかった。
リズム隊二人の演奏のもと、ピアノやエレクトリック・ピアノ音のキーボードを弾きながら歌っていた矢野は中央に出て来てスキャットをかます場面もあり。また、完全アコースティックなのりで、リトル・フィート(2000年12月8日、2012年5月22日)の「ロング・ディスタンス・ラヴ」(1975年『ザ・ラスト・レコード・アルバム』に収録)を披露もした。そのさい、リーはデュエット役をした。これ、ウェスト・コースト・ロックから離れることで個性を放った彼らにとってはトップ級に(「ウィーリン」とともに)西海岸シンガー・ソングライター的情緒を湛えた人気曲。それゆえ、ぼくはリトル・フィート曲のなかでは嫌いなほうの曲だが、そうとうニコニコして聞けたナ。
でもって、35年前が見事にフラッシュ・バック。矢野はデビュー作『ジャパニーズ・ガール』の半分をLAでリトル・フィートのバッキングで録り、フィートの1978年の東京厚生年金会館公演のアンコール時には彼女も一緒に出て来たのだよな。ちょうど怪物ライヴ盤『ウェイティング・フォー・コロンブス』(ワーナー・ブラザース)が出た後で、ステージ中央にはニオン・パーク画伯によるそのトマトがあしらわれたジャケット絵がはられていたっけ。
新たな種と確かな歌心が、度を超えた音楽家力量のもと、綱引きしていたパフォーマンスだった。
▶過去の、矢野
http://43142.diarynote.jp/200407200015350000/
http://43142.diarynote.jp/200808090220110000/
http://43142.diarynote.jp/200812281440093394/
http://43142.diarynote.jp/200908221621447408/
http://43142.diarynote.jp/200909120647256771/
http://43142.diarynote.jp/201001051622194305/
http://43142.diarynote.jp/201012131714372906/
http://43142.diarynote.jp/201109151818437240/
http://43142.diarynote.jp/201112191449196187/
http://43142.diarynote.jp/201209180912154167/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130811
http://43142.diarynote.jp/201312051627467488/
▶過去の、ウィル・リー
http://43142.diarynote.jp/200812150312308154/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090819
http://43142.diarynote.jp/201209180912154167/
http://43142.diarynote.jp/201212101904379741/
http://43142.diarynote.jp/201312171510083393/
▶過去の、パーカー
http://43142.diarynote.jp/?day=20090819
http://43142.diarynote.jp/201209180912154167/
▶過去の、フィート
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm
http://43142.diarynote.jp/201205301327209613/
そして、その後は、丸の内・コットンクラブで、NYの前線ジャズ・シーンで活動している面々が重なるグループ(2013年6月4日)の、2度目となる来日公演を見る。
リーダー格のジャマイア・ウィリアムズ(2009年5月18日、2012年3月3、4日、2013年4月1日、2013年6月4日)、キーボードとトロンボーンのコーリー・キング(2013年2月15日、2013年6月4日、2014年5月25日)、エレクトリック・ギターのマシュー・スティーヴンス(2009年1月31日、2013年6月4日)に加え、ベーシストはヴィセンテ・アーチャー(2007年10月3日、2009年4月13日、2010年7月24日、2013年2月2日、2013年6月4日)からエリマージのアルバムで歌っているアラン・ハンプトンに今回変わった。これは、うれしい。だって、彼はNYの今様“ジャズ+”の担い手から実はひっぱりだこの人物で、どんな人なのかなーと常々感じていたから。
ヒップホップ・ビートをぐつぐつ感を増やしつつ人力で巧みに処理したような、やはりどこかイビツなうれしい感覚を持つウィリアムズのドラム演奏を土台に、隙間や流動性にたんまり留意した他の楽器音が重なるバンド・サウンドはなかなかに風情があって、美味。やはり、何気に引きつけられる。当のハンプトンはヴォーカル中心でこのバンドに関与するのかと思えば、もう全面的に手慣れたエレクトリック・ベース演奏を見せるので少し驚く。右手はいろんな使い方もしていて、その背後にコントラバスも弾けることを透けて見させる。なるほど、その総体の流れへの乗り具合を見ても、ちゃんとジャズを通っている御仁なのは間違いない。
そんな彼はケンドリック ・スコット(2009年3月26日、2013年2月2日、2013年8月18日、2013年9月11日)やデリック・ホッジ(2002年7月3日。2005年8月21日、2009年3月26日、2009年12月19日、2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日、2014年1月10日)のアルバムにフィーチャリング・シンガーとして参加するとともに、グレッチェン・パーラト(2009年2月3日、2012年2月22日、2013年3月19日)やエスペランサ(2008年9月5日、2008年12月1日、2010年9月4日、2011年2月17日、2012年3月7日、2012年9月9日)作にもシンガーやベース奏者やギタリストとして関与。また、それ以前にも、アンドリュー・バード(2010年2月3日)やクレア&ザ・リーズンズ(2005年5月22日、2009年2月13日、2010年8月20日、2010年11月21日、2013年2月20日)やスフィアン・スティーヴンスらポップ・フィールドにいる人たちのアルバムに参加もしていて、ぼくは当初洒脱ロック系列にあるシンガー・ソングライターではないかと、彼のことを見ていた。ハンプトンの2011年リーダー作も、変なギター演奏は入っているものの完全にそういう流れにあった。だが、今日の彼のパフォーマンスを見て、彼がきっちりバークリー音大出とかの学究派であると了解。まあ、バードやクレア・マルダーたちも同様に正式音楽教育を受けているわけで、今マンハッタン/ブルックリンのポップ音楽シーンは音大出の人たちによる密な繋がりがあって、何かを生んでいるというところもあるのではないか。→→少なくても20年前と比べたら、音大卒のポップ・ミュージシャン比率はけっこう増えているはず。それはちょいスノビッシュであリ、チっとどこかで思わなくはない心は雑草ファンカーでいたいワタシではあるが、現在そうした人たちが作る洒脱なポップ・ミュージックをぼくが愛好しているのも確かでありますね。
そして、そこから話は発展するが、エリマージやエスペランサやクリス・バワーズ(2013年2月15日、2014年7月27日)らの表現もまた、同様の経路を持っているとふと思える。はみ出したジャズ系表現を<精神としてのジャズ>と説明することがあるが、彼らのアルバムはジャズ発想/技量を用いつつ<精神としてのポップ>というキブンのほうが強いと感じる。そんなこともあり、ぼくはそれらをジャズと紹介するよりも、今の時代のビート・ポップ、ポスト・ロック、ポスト・ファンクと言ってしまったほうがしっくり来ちゃう。ロバート・グラスパー(2007年10月3日、2009年4月13日、2009年12月19日2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日)の近2作も、完全にポストR&Bという内容だよな。
このブログに書いたことがあるが、今の同時代ポップ表現はジャズをちゃんと知っている担い手の手腕や感性に導かれているところが少なくない。というか、あのぐらいのインタープレイや発展の感覚は今の先端ポップに往往必要とされる用件であり(それを感覚一発でやることで大衆音楽の世界で天下を取ったのが、ヒップホップだと言える)、わざわざジャズという言葉を用いる必要はないかもしれぬ。まあ、そう考えたくなるのは、ぼくがジャズ愛好家である前に、ロックやファンク好きであるから? それとも、欲張りにいろんなものを聞いてきているからこそ、固有のジャズの凄さも長年感じていて、唯一無二のジャズたる醍醐味=飛躍の感覚に畏怖するところがあるからか。 あ、少し前に初来日したヴィジェイ・アイヤー(2014年6月17日、2014年6月19日、2014年6月20日)は様々なポップ音楽要素を見ていても、”ジャズ”でしかありません。
▶過去の、エリマージ
http://43142.diarynote.jp/201306060730086224
▶過去の、ウィリアムズ
http://43142.diarynote.jp/?day=20130401
http://43142.diarynote.jp/200905191118258984/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120303
http://43142.diarynote.jp/201306060730086224
▶過去の、キング
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
http://43142.diarynote.jp/201306060730086224
http://43142.diarynote.jp/201405271755563079/
▶過去の、スティーヴンス
http://43142.diarynote.jp/201306060730086224/
http://43142.diarynote.jp/201306060730086224
▶過去の、アーチャー
http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
▶過去の、スコット
http://43142.diarynote.jp/?day=20090326
http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
http://43142.diarynote.jp/201308191407221107/
http://43142.diarynote.jp/201309161510164697/
▶過去の、ホッジ
http://43142.diarynote.jp/?day=20050821
http://43142.diarynote.jp/?day=20090326
http://43142.diarynote.jp/200903271727246000/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/?day=20140110
▶過去の、パーラト
http://43142.diarynote.jp/200902040424558168/
http://43142.diarynote.jp/201202251301444372/
http://43142.diarynote.jp/201303221327416224/
▶過去の、エスペランサ
http://43142.diarynote.jp/200809071430380000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20081201
http://43142.diarynote.jp/?day=20100904
http://43142.diarynote.jp/201102190814495504/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120307
http://43142.diarynote.jp/201209191229057579/
▶過去の、バード
http://43142.diarynote.jp/201002051635443280/
▶過去の、クレアたち
http://43142.diarynote.jp/200505230459460000/
http://43142.diarynote.jp/200902180051531741/
http://43142.diarynote.jp/201008261619146538/
http://43142.diarynote.jp/201011250550109951/
http://43142.diarynote.jp/201302281042208923/
▶過去の、バワーズ
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
http://43142.diarynote.jp/201408051020111821/
▶過去の、グラスパー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
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▶過去の、アイヤー
http://43142.diarynote.jp/201406180853065508/
http://43142.diarynote.jp/201406201008164250/
http://43142.diarynote.jp/201406210910441716/
<今日の、初めて&ありゃ>
矢野顕子のほうは、彼女の同所公演の常でフル・ハウス。ここは混んでいる際は、カウンター前に椅子を出したり、ステージに向かって左側にある普段はクローズになっている2階席を開放する場合があるが、この日は2階席に案内される。長いブルーノート東京詣で歴のなか、これは初めてのこと。へ〜え。ちょうど見下ろすように、彼女の指さばきが見えて、ドリンクのお代わりはしにくいが、なかなか塩梅が良い。満場の客の様子もつぶさに分る。そして、移動しコットンクラブに行ったんだが、あれれ演奏がすでに始まっている。あぁそうだ、ここのセカンド・ショウの開演は21時であった。知っていたはずなのに、なぜか21時半スタートだと今回勘違い(泣)。モーロクについては認識しているのでヘコみはしないが、エリマージのあたまの方を聞き損ねたのは、とっても悲しい。でも、その美点は十分に了解し、堪能できたとも思うが。
2012年に矢野顕子にインタヴューした際、このトリオについて「私たちは、この3人で演奏するのが楽しみでしょうがないんです。年々、バンドとしての“バンド度”というものがあがって来ていますから。どんどん“濃ゆく”なっているので、どんな曲がきてもバンドの音に達するのが早くなっているのを去年あたりから感じていまして、曲に対する愛情の注ぎ方も強くなっています」と語っていたが、わあ、まさか今回こんなバンド音でくるとは! フレッシュ。かなり、過去の行き方とは違っていた。
その鮮やかな差異は、今年発表した新作『飛ばしていくよ』(ビクター)が導いた。彼女にとって5年半ぶりのアルバムとなる同作はエレクトロ・サウンドを介した内容だったわけだが、今回はそこからの楽曲を中心に披露したことで、リーとパーカーの出す演奏音や噛み合いが大きく変わっていたのだ。そこは二人とも、百戦錬磨のスタジオ・ミュージシャンとしての積み重ねを持つ。ゆえに彼ら、ほうと感嘆したくなるほど、矢野が持つ新世界に対応しようとしていた。
リーは今回、ベースを肩から外し、小振りなシンセサイザーに向かいベース音や音響音を出すこともあった。また、パーカーも過去とは全然異なる叩き口のドラミングを見せ……。プリセット音を下敷きにした曲もあったが、その際パーカーはヘッドフォンを付けて演奏した。とか、その様にはNYのスタジオ界で長年生きて来た熟達奏者の矜持を山ほど感じてしまったな。リーはハーモニカを吹いりもしたが、ミュージシャンシップをかけたその総体は当然ながら過去のトリオの関係性とは少し離れるものであるとともに、新作『飛ばしていくよ』のサウンドとも位相を異にするもので、接していて、面白くてしょうがなかった。
リズム隊二人の演奏のもと、ピアノやエレクトリック・ピアノ音のキーボードを弾きながら歌っていた矢野は中央に出て来てスキャットをかます場面もあり。また、完全アコースティックなのりで、リトル・フィート(2000年12月8日、2012年5月22日)の「ロング・ディスタンス・ラヴ」(1975年『ザ・ラスト・レコード・アルバム』に収録)を披露もした。そのさい、リーはデュエット役をした。これ、ウェスト・コースト・ロックから離れることで個性を放った彼らにとってはトップ級に(「ウィーリン」とともに)西海岸シンガー・ソングライター的情緒を湛えた人気曲。それゆえ、ぼくはリトル・フィート曲のなかでは嫌いなほうの曲だが、そうとうニコニコして聞けたナ。
でもって、35年前が見事にフラッシュ・バック。矢野はデビュー作『ジャパニーズ・ガール』の半分をLAでリトル・フィートのバッキングで録り、フィートの1978年の東京厚生年金会館公演のアンコール時には彼女も一緒に出て来たのだよな。ちょうど怪物ライヴ盤『ウェイティング・フォー・コロンブス』(ワーナー・ブラザース)が出た後で、ステージ中央にはニオン・パーク画伯によるそのトマトがあしらわれたジャケット絵がはられていたっけ。
新たな種と確かな歌心が、度を超えた音楽家力量のもと、綱引きしていたパフォーマンスだった。
▶過去の、矢野
http://43142.diarynote.jp/200407200015350000/
http://43142.diarynote.jp/200808090220110000/
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▶過去の、ウィル・リー
http://43142.diarynote.jp/200812150312308154/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090819
http://43142.diarynote.jp/201209180912154167/
http://43142.diarynote.jp/201212101904379741/
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▶過去の、パーカー
http://43142.diarynote.jp/?day=20090819
http://43142.diarynote.jp/201209180912154167/
▶過去の、フィート
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http://43142.diarynote.jp/201205301327209613/
そして、その後は、丸の内・コットンクラブで、NYの前線ジャズ・シーンで活動している面々が重なるグループ(2013年6月4日)の、2度目となる来日公演を見る。
リーダー格のジャマイア・ウィリアムズ(2009年5月18日、2012年3月3、4日、2013年4月1日、2013年6月4日)、キーボードとトロンボーンのコーリー・キング(2013年2月15日、2013年6月4日、2014年5月25日)、エレクトリック・ギターのマシュー・スティーヴンス(2009年1月31日、2013年6月4日)に加え、ベーシストはヴィセンテ・アーチャー(2007年10月3日、2009年4月13日、2010年7月24日、2013年2月2日、2013年6月4日)からエリマージのアルバムで歌っているアラン・ハンプトンに今回変わった。これは、うれしい。だって、彼はNYの今様“ジャズ+”の担い手から実はひっぱりだこの人物で、どんな人なのかなーと常々感じていたから。
ヒップホップ・ビートをぐつぐつ感を増やしつつ人力で巧みに処理したような、やはりどこかイビツなうれしい感覚を持つウィリアムズのドラム演奏を土台に、隙間や流動性にたんまり留意した他の楽器音が重なるバンド・サウンドはなかなかに風情があって、美味。やはり、何気に引きつけられる。当のハンプトンはヴォーカル中心でこのバンドに関与するのかと思えば、もう全面的に手慣れたエレクトリック・ベース演奏を見せるので少し驚く。右手はいろんな使い方もしていて、その背後にコントラバスも弾けることを透けて見させる。なるほど、その総体の流れへの乗り具合を見ても、ちゃんとジャズを通っている御仁なのは間違いない。
そんな彼はケンドリック ・スコット(2009年3月26日、2013年2月2日、2013年8月18日、2013年9月11日)やデリック・ホッジ(2002年7月3日。2005年8月21日、2009年3月26日、2009年12月19日、2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日、2014年1月10日)のアルバムにフィーチャリング・シンガーとして参加するとともに、グレッチェン・パーラト(2009年2月3日、2012年2月22日、2013年3月19日)やエスペランサ(2008年9月5日、2008年12月1日、2010年9月4日、2011年2月17日、2012年3月7日、2012年9月9日)作にもシンガーやベース奏者やギタリストとして関与。また、それ以前にも、アンドリュー・バード(2010年2月3日)やクレア&ザ・リーズンズ(2005年5月22日、2009年2月13日、2010年8月20日、2010年11月21日、2013年2月20日)やスフィアン・スティーヴンスらポップ・フィールドにいる人たちのアルバムに参加もしていて、ぼくは当初洒脱ロック系列にあるシンガー・ソングライターではないかと、彼のことを見ていた。ハンプトンの2011年リーダー作も、変なギター演奏は入っているものの完全にそういう流れにあった。だが、今日の彼のパフォーマンスを見て、彼がきっちりバークリー音大出とかの学究派であると了解。まあ、バードやクレア・マルダーたちも同様に正式音楽教育を受けているわけで、今マンハッタン/ブルックリンのポップ音楽シーンは音大出の人たちによる密な繋がりがあって、何かを生んでいるというところもあるのではないか。→→少なくても20年前と比べたら、音大卒のポップ・ミュージシャン比率はけっこう増えているはず。それはちょいスノビッシュであリ、チっとどこかで思わなくはない心は雑草ファンカーでいたいワタシではあるが、現在そうした人たちが作る洒脱なポップ・ミュージックをぼくが愛好しているのも確かでありますね。
そして、そこから話は発展するが、エリマージやエスペランサやクリス・バワーズ(2013年2月15日、2014年7月27日)らの表現もまた、同様の経路を持っているとふと思える。はみ出したジャズ系表現を<精神としてのジャズ>と説明することがあるが、彼らのアルバムはジャズ発想/技量を用いつつ<精神としてのポップ>というキブンのほうが強いと感じる。そんなこともあり、ぼくはそれらをジャズと紹介するよりも、今の時代のビート・ポップ、ポスト・ロック、ポスト・ファンクと言ってしまったほうがしっくり来ちゃう。ロバート・グラスパー(2007年10月3日、2009年4月13日、2009年12月19日2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日)の近2作も、完全にポストR&Bという内容だよな。
このブログに書いたことがあるが、今の同時代ポップ表現はジャズをちゃんと知っている担い手の手腕や感性に導かれているところが少なくない。というか、あのぐらいのインタープレイや発展の感覚は今の先端ポップに往往必要とされる用件であり(それを感覚一発でやることで大衆音楽の世界で天下を取ったのが、ヒップホップだと言える)、わざわざジャズという言葉を用いる必要はないかもしれぬ。まあ、そう考えたくなるのは、ぼくがジャズ愛好家である前に、ロックやファンク好きであるから? それとも、欲張りにいろんなものを聞いてきているからこそ、固有のジャズの凄さも長年感じていて、唯一無二のジャズたる醍醐味=飛躍の感覚に畏怖するところがあるからか。 あ、少し前に初来日したヴィジェイ・アイヤー(2014年6月17日、2014年6月19日、2014年6月20日)は様々なポップ音楽要素を見ていても、”ジャズ”でしかありません。
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<今日の、初めて&ありゃ>
矢野顕子のほうは、彼女の同所公演の常でフル・ハウス。ここは混んでいる際は、カウンター前に椅子を出したり、ステージに向かって左側にある普段はクローズになっている2階席を開放する場合があるが、この日は2階席に案内される。長いブルーノート東京詣で歴のなか、これは初めてのこと。へ〜え。ちょうど見下ろすように、彼女の指さばきが見えて、ドリンクのお代わりはしにくいが、なかなか塩梅が良い。満場の客の様子もつぶさに分る。そして、移動しコットンクラブに行ったんだが、あれれ演奏がすでに始まっている。あぁそうだ、ここのセカンド・ショウの開演は21時であった。知っていたはずなのに、なぜか21時半スタートだと今回勘違い(泣)。モーロクについては認識しているのでヘコみはしないが、エリマージのあたまの方を聞き損ねたのは、とっても悲しい。でも、その美点は十分に了解し、堪能できたとも思うが。
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