挾間美帆 m_unit 。ケヴィン・ユーバンクス・グループ
2019年2月6日 音楽 作編曲家の挾間美帆(2014年7月10日、2015年10月15日、2016年10月28日、2017年9月3日 )のラージ・アンサンブルの、昨年出た3作目をフォロウする公演。南青山・ブルーノート東京。
指揮をする挾間が率いるのは、13人。アルト・サックスの土井徳浩、テナー・サックスの庵原良司、バリトン・サックスの竹村直哉、トランペットの田中充、フレンチ・ホルンの林育宏、ヴァイオリンの金子飛鳥と地行美穂、ヴィオラの吉田篤貴、ヴァイブラフォンと鳴り物の香取良彦、ピアノの佐藤浩一、ダブル・ベースのサム・アニング、ドラムのジェイク・ゴールドバスという面々が、彼女に向き合う。
やっぱり弦音担当者が入っているのは強い、と再確認。フレンチ・ホルンはギル・エヴァンスなんかも入れていたこちょがあったはずだが、自分で曲を作り、編曲をするなら、独自の楽器編成でやろうとするのは当然とも感じてしまう。まあ、5、4、4という管編成にリズム・セクションというジャズのビッグ・バンドの決まったフォームのなかでいかに個性を出すかにあたるという考えも分かわからなくもない(でも、定型編成が受け継がれている最大の理由は、その編成用に書かれたスコアを使い回しするからであると思う)が、そんなマゾ的な音楽追及の仕方よりも、最初からピースを見つめ直してフレッシュな音楽を作ろうとする方が、のびのびとしていていいよなあと、m_unitの演奏を聞きながら思った。
ジョン・ウィリアムスの1984年ロス五輪のファンファーレ曲の改変の仕方にはおお。パット・メセニーの「ファースト・サークル」を思い出させるような凝った手拍子ではじまる曲もありました。
▶過去の、挾間美帆
http://43142.diarynote.jp/201407111305232157/
http://43142.diarynote.jp/201510181000334516/
http://43142.diarynote.jp/201610311054183284/
https://43142.diarynote.jp/201709101639096076/
そして、丸の内・コットンクラブに行って、経験豊かな在NYのジャズ・ギタリストを見る。さあ、行きます。捨て身の大絶賛文章、1500字を!
1982年にエレクトラ・ミュージシャンからデビュー作を出し、その後の1980年代はGRP、1990年代はブルーノートから、さらに2010年代以降はマック・アヴェニュー発でいろいろアルバムを出している、このギタリストを見るのはもしかして初めてか? 1957年、フィラデルフィア生まれ。おじさんが著名ピアニストのレイ・ブライアント、弟のロビン(トロンボーン)をはじめ従兄弟たちも違う楽器のミュージシャンで、1980年代はよくユーバンクス姓の人が彼のアルバムのパーソネルに同居していた。
晩年のアート・ブレイキーのバンドで吹くとともにサニーサイドからいろいろリーダー作を出しているソプラノとテナー・サックスのビル・ピアース、アリゾナ州出身LA在住のべース奏者でリッキー・リー・ジョーンズやライ・クーダーのアルバムに名前が見られるルネ・カマーチョ(実はメキシカン・トラッド調大人数バンドのリーダーらしい)、ユーバンクスのGRP 第一作からの付き合いであるドラムのマーヴィン“スミッティ”スミス( 2014年8月11日)という陣容。それ、ユーバンクスの近作群に共通する中心メンバーですね。
ユーバンクスは小さなボディのエレクトリック・ギターを、カマーチョは電気のアップライト・ベースを持つ。その見てくれにちょいちゃらいなと思わせられなくもなかったが、演奏が始まってすぐにびっくり、口あんぐり、どっひゃー。GRP時代はフュージョンぽいものもあったと記憶するし、そんなにちゃんと彼の作品を追って来たわけではないが、アルバムと違うことやっている。1曲目は25分近くの尺を持っていたが、乱暴に言ってしまえばジョン・コルトレーン流儀を少し思い出させる波のようなリズムに乗って、ユーバンクスとピアース(このときはソプラノを吹いた)が思うまま音を個性的に重ね合っていくと説明できるか。おおおお、わが道を行く、リアル・ジャズという感想しか生まれてこないじゃないか。
ソロだけじゃなくリズム・ギターやバッキングのオブリガードを入れるのでユーバンクスはほぼ弾きっぱなし。だが、様々な表情や感興を持つ音が途切れ目なしにずっと送り出されるといった感じでスリル満点。こんなに素晴らしいジャズ・ギタリストであるとは思いもよらなかった。しかも、彼はピックを使わず、指で自在に弾く。もうそのしなやかにしてストロングさも持つ、多様すぎる右手の使い方には目が点。まさに、マスター。ピッキング・ミュートによって変テコな音を出すロビー・ロバートソン/ザ・バンドのようにピックを使わなければ出しえないギター音もあるが、ここでのユーバンクスの説得ある変幻自在の指弾き演奏に触れていると、ピック弾きしかできないエレクトリック・ギタリストはもうアウトだと暴言も吐きたくなってしまう。
続く3曲も15分ぐらいの尺を持つもので、2曲目はスタンダードの「サマータイム」。根暗ゆえにぼくが一番きらいなガーシュイン・ナンバーだが今まで聞いたなかで一番このましい演奏と思えたか。ロッキッシュな感じで始まった3曲目はなんとジョン・コルトレーンの「レゾルーション」。かっきー。ところが途中のベース・ソロのところでカマーチョはとってもラテン的な演奏をはじめ、するとそれに乗っかりスミッティ・スミスはクラーヴェを内包するビートを叩き始め、という感じで自在に流れ……。あああ、面白くも、ジャズとしてまっとうすぎる。ユーバンクスの音はエフェクターを通した伸びる音色を採用し、またヴォリューム・ペダルも細かく使う。
とにかく、ケヴィン・ユーバンクスは今ナンバー1の現代ジャズ・ギター奏者。間違いなく、どんっ。そして、リーダーとしても滅茶優れる。それほど期待してなかったからかもしれぬが、ぼくはとんでもない感激を覚えまくった。この晩は4日公演の3日目。もう一度見たいが、都合が許さない。また、来てほしいっ!
▶︎過去の、マーヴィン“スミッティ”スミス
https://43142.diarynote.jp/201408130702069785/
<今日の、もろもろ>
ユーバンクスは2015年にスタンリー・ジョーダン(2008年8月6日)とのデュオ作『Duets』をマック・アヴェニューから出してもいる(そこで、ジョーダンは何気にピアノも弾いている)が、ブルーノート東京で会った事情通によると、もともとゲイだったジョーダンはそのころ性転換をし、完全に女性の格好をするようになったそう。
コットンクラブに入店する際、TOKUとすれ違うが、すごい演奏だよと一言。そして、帰る際には、桑原あいがちょこんとうれしそうに座っていて、少し話す。ユーバンクスのライヴがすごすぎるという話が同業者内で回っていたなら、幸いだが。
そして、ルンルンと流れた先のバーである知人と久しぶりに偶然会う。今都内3箇所で仏人現代美術家のソフィ・カルの展覧会が持たれており、そのオプションみたいなノリで、渋谷スクランブル交差点のビルに彼女の映像作品が深夜0時〜1時に映し出されると教えてもらう。そっかー。で、0時40分ごろ、件の場所に行ってみた。「 Voir la Mer 海を見る」(2011年)という映像作品で、海を見たことがないイスラエル人14人が海を初めて見たときの様々な様子をおさえたもの。それが、4つのビルのヴィジョンに映し出される。海の音もBGMとして流されていた。映像を撮っている人はいるが、時間も時間だし、見ている人はまばらでありました。9日まで流されるよう。
▶︎過去の、スタンリー・ジョーダン
https://43142.diarynote.jp/200808090220540000/
指揮をする挾間が率いるのは、13人。アルト・サックスの土井徳浩、テナー・サックスの庵原良司、バリトン・サックスの竹村直哉、トランペットの田中充、フレンチ・ホルンの林育宏、ヴァイオリンの金子飛鳥と地行美穂、ヴィオラの吉田篤貴、ヴァイブラフォンと鳴り物の香取良彦、ピアノの佐藤浩一、ダブル・ベースのサム・アニング、ドラムのジェイク・ゴールドバスという面々が、彼女に向き合う。
やっぱり弦音担当者が入っているのは強い、と再確認。フレンチ・ホルンはギル・エヴァンスなんかも入れていたこちょがあったはずだが、自分で曲を作り、編曲をするなら、独自の楽器編成でやろうとするのは当然とも感じてしまう。まあ、5、4、4という管編成にリズム・セクションというジャズのビッグ・バンドの決まったフォームのなかでいかに個性を出すかにあたるという考えも分かわからなくもない(でも、定型編成が受け継がれている最大の理由は、その編成用に書かれたスコアを使い回しするからであると思う)が、そんなマゾ的な音楽追及の仕方よりも、最初からピースを見つめ直してフレッシュな音楽を作ろうとする方が、のびのびとしていていいよなあと、m_unitの演奏を聞きながら思った。
ジョン・ウィリアムスの1984年ロス五輪のファンファーレ曲の改変の仕方にはおお。パット・メセニーの「ファースト・サークル」を思い出させるような凝った手拍子ではじまる曲もありました。
▶過去の、挾間美帆
http://43142.diarynote.jp/201407111305232157/
http://43142.diarynote.jp/201510181000334516/
http://43142.diarynote.jp/201610311054183284/
https://43142.diarynote.jp/201709101639096076/
そして、丸の内・コットンクラブに行って、経験豊かな在NYのジャズ・ギタリストを見る。さあ、行きます。捨て身の大絶賛文章、1500字を!
1982年にエレクトラ・ミュージシャンからデビュー作を出し、その後の1980年代はGRP、1990年代はブルーノートから、さらに2010年代以降はマック・アヴェニュー発でいろいろアルバムを出している、このギタリストを見るのはもしかして初めてか? 1957年、フィラデルフィア生まれ。おじさんが著名ピアニストのレイ・ブライアント、弟のロビン(トロンボーン)をはじめ従兄弟たちも違う楽器のミュージシャンで、1980年代はよくユーバンクス姓の人が彼のアルバムのパーソネルに同居していた。
晩年のアート・ブレイキーのバンドで吹くとともにサニーサイドからいろいろリーダー作を出しているソプラノとテナー・サックスのビル・ピアース、アリゾナ州出身LA在住のべース奏者でリッキー・リー・ジョーンズやライ・クーダーのアルバムに名前が見られるルネ・カマーチョ(実はメキシカン・トラッド調大人数バンドのリーダーらしい)、ユーバンクスのGRP 第一作からの付き合いであるドラムのマーヴィン“スミッティ”スミス( 2014年8月11日)という陣容。それ、ユーバンクスの近作群に共通する中心メンバーですね。
ユーバンクスは小さなボディのエレクトリック・ギターを、カマーチョは電気のアップライト・ベースを持つ。その見てくれにちょいちゃらいなと思わせられなくもなかったが、演奏が始まってすぐにびっくり、口あんぐり、どっひゃー。GRP時代はフュージョンぽいものもあったと記憶するし、そんなにちゃんと彼の作品を追って来たわけではないが、アルバムと違うことやっている。1曲目は25分近くの尺を持っていたが、乱暴に言ってしまえばジョン・コルトレーン流儀を少し思い出させる波のようなリズムに乗って、ユーバンクスとピアース(このときはソプラノを吹いた)が思うまま音を個性的に重ね合っていくと説明できるか。おおおお、わが道を行く、リアル・ジャズという感想しか生まれてこないじゃないか。
ソロだけじゃなくリズム・ギターやバッキングのオブリガードを入れるのでユーバンクスはほぼ弾きっぱなし。だが、様々な表情や感興を持つ音が途切れ目なしにずっと送り出されるといった感じでスリル満点。こんなに素晴らしいジャズ・ギタリストであるとは思いもよらなかった。しかも、彼はピックを使わず、指で自在に弾く。もうそのしなやかにしてストロングさも持つ、多様すぎる右手の使い方には目が点。まさに、マスター。ピッキング・ミュートによって変テコな音を出すロビー・ロバートソン/ザ・バンドのようにピックを使わなければ出しえないギター音もあるが、ここでのユーバンクスの説得ある変幻自在の指弾き演奏に触れていると、ピック弾きしかできないエレクトリック・ギタリストはもうアウトだと暴言も吐きたくなってしまう。
続く3曲も15分ぐらいの尺を持つもので、2曲目はスタンダードの「サマータイム」。根暗ゆえにぼくが一番きらいなガーシュイン・ナンバーだが今まで聞いたなかで一番このましい演奏と思えたか。ロッキッシュな感じで始まった3曲目はなんとジョン・コルトレーンの「レゾルーション」。かっきー。ところが途中のベース・ソロのところでカマーチョはとってもラテン的な演奏をはじめ、するとそれに乗っかりスミッティ・スミスはクラーヴェを内包するビートを叩き始め、という感じで自在に流れ……。あああ、面白くも、ジャズとしてまっとうすぎる。ユーバンクスの音はエフェクターを通した伸びる音色を採用し、またヴォリューム・ペダルも細かく使う。
とにかく、ケヴィン・ユーバンクスは今ナンバー1の現代ジャズ・ギター奏者。間違いなく、どんっ。そして、リーダーとしても滅茶優れる。それほど期待してなかったからかもしれぬが、ぼくはとんでもない感激を覚えまくった。この晩は4日公演の3日目。もう一度見たいが、都合が許さない。また、来てほしいっ!
▶︎過去の、マーヴィン“スミッティ”スミス
https://43142.diarynote.jp/201408130702069785/
<今日の、もろもろ>
ユーバンクスは2015年にスタンリー・ジョーダン(2008年8月6日)とのデュオ作『Duets』をマック・アヴェニューから出してもいる(そこで、ジョーダンは何気にピアノも弾いている)が、ブルーノート東京で会った事情通によると、もともとゲイだったジョーダンはそのころ性転換をし、完全に女性の格好をするようになったそう。
コットンクラブに入店する際、TOKUとすれ違うが、すごい演奏だよと一言。そして、帰る際には、桑原あいがちょこんとうれしそうに座っていて、少し話す。ユーバンクスのライヴがすごすぎるという話が同業者内で回っていたなら、幸いだが。
そして、ルンルンと流れた先のバーである知人と久しぶりに偶然会う。今都内3箇所で仏人現代美術家のソフィ・カルの展覧会が持たれており、そのオプションみたいなノリで、渋谷スクランブル交差点のビルに彼女の映像作品が深夜0時〜1時に映し出されると教えてもらう。そっかー。で、0時40分ごろ、件の場所に行ってみた。「 Voir la Mer 海を見る」(2011年)という映像作品で、海を見たことがないイスラエル人14人が海を初めて見たときの様々な様子をおさえたもの。それが、4つのビルのヴィジョンに映し出される。海の音もBGMとして流されていた。映像を撮っている人はいるが、時間も時間だし、見ている人はまばらでありました。9日まで流されるよう。
▶︎過去の、スタンリー・ジョーダン
https://43142.diarynote.jp/200808090220540000/