六本木・アスミック試写室で、2018年のノルウェー映画「ウヤト島、7月22日」をまず見る。2011年7月22日にノルウェーで起こった77人もの命が奪われたテロを扱う映画だ。監督は、1960年同国生まれのエリック・ポッペ。

 練られた作品。まずオスロにある政府庁舎前の爆発事件がおこされ、その犯人がノルウェー労働党青年部のサマー・キャンプが行われていたウトヤ島に渡り、さらに若い参加者たちに銃を乱射したというのが、素材となる事件。映画は最初のテロは実際の映像を手短にまとめ、2番目のテロ行為をじっくりと扱う。そのさい監督が取った手法は、島での凶行が行われた72分間を長回しのワン・カットで撮るというもの。しかも、犯人のことは一切描かず、一人の少女を中心に逃げ惑うキャンプ参加者たちを追うことでテロの悲惨さを描写。さらには、一切音楽を使わず。つまり、見えない犯人が打つ山ほどの銃声、キャンプ参加者の会話、鳴き声、嬌声だけが、映画の構成音。それは、このフィクションのドキュメンタリー性を高める。

 そんな作りのため、映画は重く、暗く、ある意味単調。だが、それはノウルェー国民にとってあの事件はどうしようもないほどショッキングな出来事であったということも知らせるか。映画中、唯一音楽が出てくる箇所があって、それは少女が歌を口ずさむシーン。その曲は、シンディ・ローパー(2011年3月16日、2012年3月9日)の「トゥルー・カラーズ」だった。

 映画の最後に、このテロの犯人のような排他的な極右の欧州での台頭を危惧するという監督のコメントが出される。そして、この映画は様々な証言をもとにした作り物であり、物事の正解はひとつではない、との文言も出てくる。

▶︎過去の、シンディ・ローパー
https://43142.diarynote.jp/201103171354125352/
https://43142.diarynote.jp/201203100844041105/

 続いては、市ヶ谷・日本シネアーツ試写室で2014年英国映画「ノーザン・ソウル」を見る。英国ユース・カルチャーもの。監督は1965年ランカシャー州生まれの、エレイン・コンスタンティン。

 舞台はイングランド北西部のランカシャー州にあるバーンズワース。それ、架空の地名かもしれない。時代は、1974年(よく、劇中の古い車あつめたな)。マニアックな60年代米国ソウルをDJが回し、それに若者がむらがっていたという事項を下敷きにする青春友情映画だ。ストーリーは他愛ないが、誇張したものであってもあのころの英国地方若者事情を伝えるということだけで興味深いし、エドウィン・スターらソウルだけがかかるものに引力がないはずがない。こうした英国の米国音楽享受の様は1960年代のモッドのマニアックな音楽趣味のありかたを思い出させ、また90年代のレア・グルーヴのムーヴメントに繋がるかと思えもした。やはり、英国形而上は随所にある。R15+指定がなされていて、セックス描写が激しいのかと思えば、それはドラッグに関する事項が多いゆえのものか。

 米国南部で作られる剛毅でアーシーなサザン・ソウル、それに比して米国北部都市から送り出されたノーザン・ソウルは洗練とキャッチーな親しみやすさを持つ……。僕はノーザン・ソウルを米国の往年ソウルの属性として捉えていたが、資料には“1966年ごろからイングランド北部で好まれていたソウル”との注釈あり。へえ、そうなの?

 そして、南青山・ブルーノート東京で、ギターのパット・メセニー(1999年12月15日、2002年9月19日、2010年6月12日、2012年1月25日、2012年3月3日、2013年5月21日、2015年9月27日、2019年1月7日)の新春来日ライヴ3種出し物のその2を見る。ファースト・ショウ。ビッグ・バンド共演に続くその2とその3はトリオ編成であるのだが、その2のほうはドラムレス、その3のほうはベースレスと変則編成を取っている。

 ユニティ・バンド後のメセニーのグループのライヴに参加してきている、マレーシア生まれオーストラリア国籍を持つ1984年生まれのリンダ・メイ・ハン・オウ(2019年1月7日)がダブル・ベースを弾き、1981年英国生まれのグウィリム・シムコックがピアノでつく。オウはデイヴ・ダグラス(1999年9月24日)やラルフ・アレッシ、テリ・リン・キャリントン(2004年9月7日、2005年8月21日、2008年12月1日、2009年6月15日、2010年9月4日、2014年9月16日)らとの仕事を重ね、ピアノのファビアン・アルマザン(2013年8月18日、2016年7月6日、2018年5月16日)の奥さんでもあるんだっけか。一方の、シムコックはUKプログ・ロック名士であるビル・ブラフォードが考えるジャズ・コンボであるアースワークスに入っていたことがある。

 メセニーは電気のセミアコ、シタール・ギター、アコースティック・ギターを弾く。音質のせいか弾きまくらないニルス・ヘニング・オルステッド・ペデルセンという印象も得た達者なオウは終盤の「ファースト・サークル」のさい、ハミングを入れる。やはり、この曲は肉声が入ったほうがよろしい。シムコックは細心の注意でもって、ギター音と被らない確かな音を一歩下がって供給。ときにはクラシカルな指さばきも見せ室内楽的手触りをたし、なんかエフェクトを軽くかけたような音でソロをとるときもあった。演目は自作からスタンダードまで。しかし、“ア・ナイト・ウィズ デュオズ&トリオズ”という公演表題はナゾだ。

▶過去の、パット・メセニー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/201006181520054406/
http://43142.diarynote.jp/201201271245417497/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/201305260927026044/
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/
https://43142.diarynote.jp/201901090933013218/
▶︎過去の、リンダ・メイ・ハン・オウ
https://43142.diarynote.jp/201901090933013218/
▶︎過去の、デイヴ・ダグラス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/september1999live.htm マサダ
▶過去の、テリ・リン・キャリントン
http://43142.diarynote.jp/200409070203440000/
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200812141259213603/
http://43142.diarynote.jp/200906160735045241/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100904
https://43142.diarynote.jp/201409171722239857/

<今日の、人それぞれ>
 根性がないので、寒がり(暑がりでもあるが)だ。とはいえ、下半身は何気にそうではないと自負を持っている。というのも、下は薄着。聞けば、冬におおくの人はタイツを併着するというが、ぼくにはそれはない。さすがにスキー場では履いていたが、通常環境では暑さと窮屈さを感じてしまい、イラネーとなってしまう。その下半身の冷気に対する耐性は、中学校時代のクラブ活動からきているんじゃないか。サッカー部に入っていたのだが、なぜか真冬でも半ズボンで練習しましょうとなっていたから。あと、小学生低学年のころ、ぼくは半ズボン小僧だった。なんか、長いズボンを履くのが恥ずかしかった。今となっては?を30個ぐらいつけたくなる美意識を持っていたなー。・°°・(>_<)・°°・。