1990年代上半期、ヒッポホップ界で音楽的にもスタンス的にももっとも清新さをまとい、またセールス上も大成功した南部アトランタのティームが、スピーチ(トッド・トーマス)率いるアレステッド・ディヴェロップメント(2000年4月27日、2000年8月5日、2001年2月3日、 2002年4月17日、2013年4月19日)だ。デビュー時にグラミー賞もちゃんととったにも関わらず、その約10年後には失速。じっさい、プロダクツはあまり光ったものではなかったが、それこそはデビュー作があまりに素晴らしすぎた担い手の悲劇とも言いたくなる。本国ではアレステッド・ディヴェロップメントとというと、4シーズン作られた同名TVドラマを多くの人は想起するというからなー。とはいえ、スピーチたちは活動を続けていて、アルバムも2〜4年おきにずっとリリースしてきている。で、2018年秋リリースの新作『Craft & Optics』(Vagabond)は肉声や管音の使い方に広がりと強さがあり、一部ジャジーな曲調も新鮮さを抱えており推すに足る。

 六本木・ビルボードライブ、セカンド・ショウ。冒頭、サンバのリズム音とともに面々は登場。ダンスと歌のファリーダ(ファリーダ・アレーム)がフロアからステージに上がり、それだけで観客は総立ちっぽくなる。わ、サンバの起爆力、すげえ。客はそれなりに若い人も見られたが、黄金時を同時代で体験していない人もそれなりにいたと思われる。

 その彼女、歌とラップのスピーチ、のど自慢女性ヴォーカルのラターシャ・ラレイ(ラターシャ・コンウェイ)とラップのワン・ラブ(スペンサー・ラヴ)、さらにギターのジェイ・ジェイ・ブギー(ジェイソン・ライヘルト)、ベースのウィリアム・モンゴメリー、ドラムのコーリー・レイモンドという陣容による。この3人によるキーボードレスのバンド・サウンドは良い。わりと途切れなく臨機応変な感じで曲は連ねられるのだが、肉声陣も伴奏者たちも一切セット・リストの類は置いておらず、リハを重ねた練り込まれたショウだったのかもしれない。本編60分、そして2曲10分強のアンコールという尺のパフォーマンスをきっちり彼らはやった。

 途中何度もスピーチは客とのコール&レスポンスを求めるが、それはちゃんと成り立つ。彼、なんかサバけたというか、吹っ切れた感じもあってマル。いろいろな重なり方をする肉声群と含蓄あるファンク・サウンドの拮抗表現は力あり。かつて前に出した南部土壌を土台に置く精神性は後退していたが、ワクワク感を持つヒップホップ・ソウル・バンドの確かな像を彼らはきっちり獲得していた。そういえば、終演後にメンバーたちはステージ前にできて笑顔でずうっとお客さんたち握手をしていて、ほっこり。ああ、良き心地ある集合体であるナと思わされました。

▶過去の、アレステッド・ディヴェロップメント/スピーチ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-4.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-2.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-4.htm
http://43142.diarynote.jp/201304211111189539/

<今日の、枯れきれない男>
 まあ洋風なもののほうが好みだったせいか、蕎麦やうどんにはあまり魅力を感じてこなかった。ゆえに、好んで自ら、その手に店に入るということもない。まあ、年をとると静かな蕎麦屋でお酒をちびちびという図は悪くないとも思うのだが、一人ではやったことがない。蕎麦屋の肴にそれほど惹かれないというのも理由かな。それから、周りの人間でそば打ちをやるようになりましたというのも複数いるが、それにも憧れない。第一、ちゃんと美味しいもの作るのは無理でしょ。けっこう、アヴェレイジを出すのはプロでも困難と聞いたことがある。”工作”は別な料理でしたい。でも、ここんところは年越しそばはいいかもとか思うようになっているワタシ。日本人のDNAがひょんなところで現れるわけだが、それは食べ物にまつわる項目が一番多いのかな。