フィンランドとエストニア(その二つの国の名前を合わせて、“フィネスト“となるのか)4組のグループが出る、特別仕立ての公演。新宿・ピットイン。昼の部(通常より遅く始まったものの)と夜の部、入れ替えなしの打ち抜きで延々と持たれた。あたまから、立ち見がばんばん出る混み具合。各アーティスト、70分ぐらいはやっていたはず。

 最初に出てきたのは、エストニアのウィークエンド・ギター・トリオ。ロバート・フリップ(キング・クリムゾン)の“ギター・クラフト”講座に参加したギタリストが始めたギター奏者3人組のようで、ロバート・ユリエンダル、トゥニス・レーメッツ、マルト・ソーという面々からなる。皆エレクトリック・ギターを持ち、エフェクターを介した音色でいろいろ重なり合う。なるほど、曲調や協調の仕方など、旧来のジャズからは大きく離れる演奏。分別ありそうないい中年がうれしそうに、癖のある演奏を繰り出す様は微笑ましい。2003年のフジ・ロックで見たやはりフリップのギター・クラフト流れのカリフォルニア・ギター・トリオの行き方(そんなに感銘を受けなかったのか、文章ではふれていない)を思い出させるところもある。アルゼンチンのフェルナンド・カブサッキ(2002年9月7日、2002年9月15日、2006年7月7日、2011年4月16日、2013年6月6日、2014年7月8日)も同様の出自を持つはずだが、世界中にフリップの子供たちがいるんだろうな。

▶過去の、フェルナンド・カブサッキ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-7.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-9.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/200504151004040000/
http://43142.diarynote.jp/200607100307170000/
http://43142.diarynote.jp/201104171543279700/
http://43142.diarynote.jp/201306111556299464/
http://43142.diarynote.jp/201407091243129270/

 次は、フィンランド人ギタリストのオーリ・ヒルヴォネンが率いるカルテットの演奏。彼はNYで活動している様で、“オーリ・ヒルヴォネン・ニュー・ヘルシンキ”というグループ名を名乗っているのに、ピアノのルーク・マランツ、ウッド・ベースのマーティー・ケニー、ドラムのネイサン・エルマン・ベルはNY在住の奏者であるよう。彼らの場合、演奏が始まったのっけから笑った。もろにジャズ・ロックの流儀。オーリ・ヒルヴォネンはいろんな奏法を見せるがアラン・ホールズワースあたりを根っこに置くような演奏を見せ、なのにバンドは完全アコースティック・ジャズ編成でことにあたるということで。ピアニストはソロをとると、フツーにジャズの方に入っていったりもする。とにかく、妙な疾走感と明快さはありで、中高生(ヒップホップ好きを除く)のジャズ入門としてこのカルテットはありではないかと思った。

 3番目は、ピードゥー・カス モメンタムと名乗るエストニアのピアノ・トリオ。中央に立つダブル・ベース奏者のピードゥー・カスがリーダーを務め、クリスチャン・ランダルがピアノを弾き、トーマス・ルルがドラムを叩く。この日の出演者の中では一番落ち着き、もっとも穏健なジャズ流儀に沿った演奏を彼らは聞かせる。ジョン・コルトレーンの曲も取り上げたよう。スキンヘッドで優しそうなルックスを持つピードゥー・カスのベース演奏が前に出る頻度は高く(テーマ提示部でも彼の演奏が核となったりも)、彼の演奏はとても丁寧でジェントルだった。

 最後に登場したのは、フィンランドのウトピアニスティという、ザッパからボアダムスまで想起させるアルバムを出していて、一部の好事家で話題になっているグループだ。アイスホッケーで知られるタンベレという都市を拠点に起き、マルチ・プレイヤーのマルクス・パヤッカラのソロ・アルバムをライヴで具現するためにスタートしたグループであるよう。サックスやフルートや鳴り物のマルクス・パヤッカラ、トランペットのオリ・へリン、ギターのアンテロ・メントゥ 、キーボードとピアノのアンスィ・ソリスマー、マリンバと打楽器のトゥオマス・マルティラ、電気ベースのヤーコ・ルオマ、ドラムのロルフ・ピルヴェ(普段はメタル・バンドで叩いているらしい)という布陣。そんな面々は凝り気味の仕掛けを持つプログ・ロック傾向にあるサウンドを構築し、そこに各人のソロをのせるという方策を取っていた。

<今日の、ぐすん>
 遊びまくったゴールデン・ウィークを過ぎてもすこやか穏健な日々であるなあとくつろぎの毎日を送り、このまま1年が過ぎちゃえばいいなあとタカをくくっていた。そしたら、この10日間ほどで仕事/締め切りが山のように入ってきてしまい(にべに断る理由もなかったしなあ)、今は青息吐息。夜のライヴもかなりはいっているのも少し精神的な負担を導く? ライヴに行く好奇心を失ったら、この仕事はおしまいだしなあ。まあ、もともときちんと朝に起きて陽がくれたら机に向かわないと決めているが(とはいえ、実は昨日ライヴも呑みの予定もはいっておらず、逃避から昼寝しちゃったためもあるけど、掟を破り夜も仕事をしちゃったよ〜)。>_<。とかなんかとか、久しぶりにけっこうプレッシャーを感じておる。しょうがねえ、まあなんとかなるでしょう←なんだかんだ、なんとかならなかったことはないものなあ。唯一心がけているのは、ライヴのあと次の日に影響を残すような深酒を調子にのってしないこと也。