CTA。ビリー・チャイルズ・カルテット
2018年4月19日 音楽 六本木・ビルボードライブ東京、ファースト・ショウ。出演者は米国ブラス・ロックの雄であるシカゴ(2010年2月19日)の1990 年ごろまで在籍したオリジナル・ドラマーであるダニエル・セラフィンが率いるグループで、ずばりシカゴ曲をやりますよというバンドだ。そのセラフィンはLA在住で、そのグループ名はカリフォルニア・トランジット・オーソリティという。1枚目まで本家シカゴは、シカゴ・トランジット・オーソリティと名乗っていた。
同行者たちとステージに出てきたセラフィンは小柄、演奏まえに前方に座る客と握手したりして、気さく。ヴォーカル(唯一のアフリカ系。リード・ヴォーカルは半数でとる)、ギター、鍵盤二人(一人は、歌も歌い、ソロ・キャリアも持つビル・チャンプリン。もうひとりの鍵盤奏者がキュー出しをするなど、音楽監督役をになっていた)、ベース(「一体現実を把握している者はいるのだろうか?」であったか、1曲でリード・ヴォーカルをとったが、彼が一番歌は上手だった)の米国人バンドに、テナー、トランペット、トロンボーン(大きく見えたので、ベース・トロンボーンであったかも)の日本人ブラス陣がつく。彼ら、セラフィンから万歳ホーンズと紹介されていた。またアンコールを含め3曲で出てきてギターを弾き歌ったのは、1970年代後期にメンバーだったことがあるドニー・デイカスであったそう。
『シカゴⅤ』(1972年)までの曲をやればぼくはにっこり(そういえば、「サタデイ・イン・ザ・パーク」はやらなかった)であったが、チャンプリンもいるということで、ぼくが感情移入できないタイプのそれ以降の曲もやる。がくっ。チャンプリンは1曲ではギターを弾きながら歌い、ソロもとるなど活躍。声量はあるのだが、音程は少し不安定であった。
以下、感じたことを箇条書きにて。▶︎セラフィンは基本レギュラー・グリップで叩く。やはり、ジャズの素養を持つ叩き方であり、そのドラミングがシカゴ表現を成立させていたところもあるのだと気づかされる。▶︎とかなんとか、シカゴ黄金期表現は、秀でたジャズ・ロック表現そのものであったと再認識。▶︎日本人の三人は無難に管音をつけていたか。もう少し、前に出ていたほうが往年のシカゴ曲を楽しむには吉だが。▶︎その一方、シカゴの初期曲もまたメロディ性の高い、ブラス音を必ずしも必要としない好曲だらけであったとも痛感。▶︎また、ライヴでもコーラスが効いているなあと思わせる場面はいくつもあったが、シカゴ原曲もまたそうしたことに留意していた。▶︎だが、そうでありつつ、ジャズを下敷きとするブラス・セクション音を入れたのは、1970年前後のロックが持っていたフロンティア精神あればこそであったのは疑いがない。▶︎ライノから、70年代のソースを中心とするライヴ4枚組+DVDが出たが、オリジナル期の創造性や覇気はあの時代だからこそのもの?
▶︎過去の、シガゴ
http://43142.diarynote.jp/201002211122268480/
その後は、南青山・ブルーノート東京へ。ピアノのビリー・チャイルズ(2012年3月15日、2016年3月27日、2016年9月3日)のリーダー実演を見る。サックスのデイナ・スティーヴンス、ベースのアレックス・ボーナム、ドラムのクリスチャン・イウマンを率いてのもの。
まず、この出し物でぼくが着目したかったのが、リード奏者のデイナ・スティーヴンス。テナーやバリ・サックスも吹く人だが、ここではアルトとソプラノを吹く。ブラッド・メルドー(2002年3月19日、2003年2月15日、2005年2月20日、2015年3月13日)やエリック・ハーランド(2005年5月11日、2007年10月3日、2008年4月6日、2013年1月6日、2017年1月12日、2017年1月13日、2017年3月10日)からジェラルド・クレイトン(2007年9月10日、2008年9月16日、2009年6月7日、2009年9月3日、2011年10月6日、2017年1月18日、2017年6月7日)やジュリアン・ラージ(2005年8月21日、2009年6月24日、2011年7月20日、2017年2月1日、2017年11月13日)までいろんな付き合いをもつい人だが、長々とソロはとらなかったもののやはり彼は実力者。ある曲のアルトのソロはよがりつつ宙に溶けていく感触があり、それはもろにオーネット・コールマン(2006年3月27日)消化をへてのものと感じさせるもので、密かに高揚。しかし、ブレイズ頭の彼、まだまだ見せていない顔を持ちそうだな。
だが、それ以上に実演でぼくの耳をひいたのは、まったく知らない御仁であったドラマーのクリスチャン・ユウマン。実は、今回のチャイルズ・カルテット公演を聞いて感じたのは、意外なほどファットな質感を持つ演奏も聞かせるじゃんということ。そして、その所感はイウマンのドラミングによるところが大きい。その機を見るに敏などう猛なスネア遣いには一気に引き込まれる。使っているカノウプスのセットや流儀(グリップはレギュラーとマッチドの併用)はちゃんとジャズなんだが、明解な今のパッションを抱えていて好印象。今後を見守りたいな。
作編曲者としての才も持つ(チェンバー・ジャズをやらせるとうまいですよ)チャイルズは基本ひらひらと繊細に指を這わせる人で、それは軽さにもつながる。と、当初はそう感じて聞いていたが、確かなサイドマンを介して長めな尺で繰り広げられる演奏は聞き味よし。それらは基本オーソドックスなジャズ志向を取るものであるのだが、しっかりと今の輝きを持ち傾聴すべきものであると思う。
1957年LA生まれで、同地で活動。1970年代後半から6年ほどフレディ・ハバードのグループに在籍するとともに、重なってダイアン・リーヴス(1999年4月28日、2001年4月24日、2008年9月22日、2010年3月23日、2011年11月15日、2017年5月29日)のバンド・リーダーをしていたこともあったチャイルズはずっと西海岸住まいなため、ジャズの主流(=NY)から離れた位置にいた奏者とも言えるはず。それゆえ、彼にアルバム・デビューの手をさしのべたのはウィンダム・ヒル(ニュー・エイジ・ミュージックの代表的レーベル。結局、4作品をリリースした)だった。ずっと傍系にいたからこその風通しの良さがいい方に働いているところもあると思う。
▶過去の、ビリー・チャイルズ
http://43142.diarynote.jp/201203161146266803/
http://43142.diarynote.jp/201603281027273371/
http://43142.diarynote.jp/201609201032322395/ 渡辺貞夫
▶過去の、ブラッド・メルドー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/%7Enewswave/live-2003-2.htm
http://43142.diarynote.jp/200502232041270000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20150313
▶過去の、エリック・ハーランド
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20071003
http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
http://43142.diarynote.jp/201301151731112021/
http://43142.diarynote.jp/201701141241544133/
http://43142.diarynote.jp/201701131141476377/
http://43142.diarynote.jp/201701141241544133/
http://43142.diarynote.jp/201703111128438897/
▶過去の、ジェラルド・クレイトン
http://43142.diarynote.jp/200709171108570000/
http://43142.diarynote.jp/200809171409066704/
http://43142.diarynote.jp/200906091637138003/
http://43142.diarynote.jp/200909120646397236/
http://43142.diarynote.jp/201110091258307349/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170118
http://43142.diarynote.jp/201706081034584863/
▶過去の、ジュリアン・ラージ
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200906300951327850/
http://43142.diarynote.jp/201107230819362417/
http://43142.diarynote.jp/201702021523283237/
http://43142.diarynote.jp/201711141337544172/
▶︎過去の、オーネット・コールマン
http://43142.diarynote.jp/200603281335030000/
▶︎過去の、ダイアン・リーヴス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-4.htm
http://43142.diarynote.jp/200809240100515549/
http://43142.diarynote.jp/201003261236189984/
http://43142.diarynote.jp/201705301638029304/
<今日の、笑顔>
先に傍系と書いたが、ビリー・チャイルズの2017年新作『Rebirth』(Mac Avenue)はグラミー賞のジャズ・インストルメンタル・アルバム部門を獲得。アンコールの際にブルーノート側からお祝いの立派なケーキが出される。とても喜んでいたな。尋ねたら、出演の回すべて出しているのではなく、このショウだけのサーヴであるとか。ちなみに、もともと西海岸主導だったグラミー賞選出は、とくにジャズ部門については妙なものが選ばれるという話もありますね。なお、ジャズ公演としては、この晩の歓声はかなり大きかった。
同行者たちとステージに出てきたセラフィンは小柄、演奏まえに前方に座る客と握手したりして、気さく。ヴォーカル(唯一のアフリカ系。リード・ヴォーカルは半数でとる)、ギター、鍵盤二人(一人は、歌も歌い、ソロ・キャリアも持つビル・チャンプリン。もうひとりの鍵盤奏者がキュー出しをするなど、音楽監督役をになっていた)、ベース(「一体現実を把握している者はいるのだろうか?」であったか、1曲でリード・ヴォーカルをとったが、彼が一番歌は上手だった)の米国人バンドに、テナー、トランペット、トロンボーン(大きく見えたので、ベース・トロンボーンであったかも)の日本人ブラス陣がつく。彼ら、セラフィンから万歳ホーンズと紹介されていた。またアンコールを含め3曲で出てきてギターを弾き歌ったのは、1970年代後期にメンバーだったことがあるドニー・デイカスであったそう。
『シカゴⅤ』(1972年)までの曲をやればぼくはにっこり(そういえば、「サタデイ・イン・ザ・パーク」はやらなかった)であったが、チャンプリンもいるということで、ぼくが感情移入できないタイプのそれ以降の曲もやる。がくっ。チャンプリンは1曲ではギターを弾きながら歌い、ソロもとるなど活躍。声量はあるのだが、音程は少し不安定であった。
以下、感じたことを箇条書きにて。▶︎セラフィンは基本レギュラー・グリップで叩く。やはり、ジャズの素養を持つ叩き方であり、そのドラミングがシカゴ表現を成立させていたところもあるのだと気づかされる。▶︎とかなんとか、シカゴ黄金期表現は、秀でたジャズ・ロック表現そのものであったと再認識。▶︎日本人の三人は無難に管音をつけていたか。もう少し、前に出ていたほうが往年のシカゴ曲を楽しむには吉だが。▶︎その一方、シカゴの初期曲もまたメロディ性の高い、ブラス音を必ずしも必要としない好曲だらけであったとも痛感。▶︎また、ライヴでもコーラスが効いているなあと思わせる場面はいくつもあったが、シカゴ原曲もまたそうしたことに留意していた。▶︎だが、そうでありつつ、ジャズを下敷きとするブラス・セクション音を入れたのは、1970年前後のロックが持っていたフロンティア精神あればこそであったのは疑いがない。▶︎ライノから、70年代のソースを中心とするライヴ4枚組+DVDが出たが、オリジナル期の創造性や覇気はあの時代だからこそのもの?
▶︎過去の、シガゴ
http://43142.diarynote.jp/201002211122268480/
その後は、南青山・ブルーノート東京へ。ピアノのビリー・チャイルズ(2012年3月15日、2016年3月27日、2016年9月3日)のリーダー実演を見る。サックスのデイナ・スティーヴンス、ベースのアレックス・ボーナム、ドラムのクリスチャン・イウマンを率いてのもの。
まず、この出し物でぼくが着目したかったのが、リード奏者のデイナ・スティーヴンス。テナーやバリ・サックスも吹く人だが、ここではアルトとソプラノを吹く。ブラッド・メルドー(2002年3月19日、2003年2月15日、2005年2月20日、2015年3月13日)やエリック・ハーランド(2005年5月11日、2007年10月3日、2008年4月6日、2013年1月6日、2017年1月12日、2017年1月13日、2017年3月10日)からジェラルド・クレイトン(2007年9月10日、2008年9月16日、2009年6月7日、2009年9月3日、2011年10月6日、2017年1月18日、2017年6月7日)やジュリアン・ラージ(2005年8月21日、2009年6月24日、2011年7月20日、2017年2月1日、2017年11月13日)までいろんな付き合いをもつい人だが、長々とソロはとらなかったもののやはり彼は実力者。ある曲のアルトのソロはよがりつつ宙に溶けていく感触があり、それはもろにオーネット・コールマン(2006年3月27日)消化をへてのものと感じさせるもので、密かに高揚。しかし、ブレイズ頭の彼、まだまだ見せていない顔を持ちそうだな。
だが、それ以上に実演でぼくの耳をひいたのは、まったく知らない御仁であったドラマーのクリスチャン・ユウマン。実は、今回のチャイルズ・カルテット公演を聞いて感じたのは、意外なほどファットな質感を持つ演奏も聞かせるじゃんということ。そして、その所感はイウマンのドラミングによるところが大きい。その機を見るに敏などう猛なスネア遣いには一気に引き込まれる。使っているカノウプスのセットや流儀(グリップはレギュラーとマッチドの併用)はちゃんとジャズなんだが、明解な今のパッションを抱えていて好印象。今後を見守りたいな。
作編曲者としての才も持つ(チェンバー・ジャズをやらせるとうまいですよ)チャイルズは基本ひらひらと繊細に指を這わせる人で、それは軽さにもつながる。と、当初はそう感じて聞いていたが、確かなサイドマンを介して長めな尺で繰り広げられる演奏は聞き味よし。それらは基本オーソドックスなジャズ志向を取るものであるのだが、しっかりと今の輝きを持ち傾聴すべきものであると思う。
1957年LA生まれで、同地で活動。1970年代後半から6年ほどフレディ・ハバードのグループに在籍するとともに、重なってダイアン・リーヴス(1999年4月28日、2001年4月24日、2008年9月22日、2010年3月23日、2011年11月15日、2017年5月29日)のバンド・リーダーをしていたこともあったチャイルズはずっと西海岸住まいなため、ジャズの主流(=NY)から離れた位置にいた奏者とも言えるはず。それゆえ、彼にアルバム・デビューの手をさしのべたのはウィンダム・ヒル(ニュー・エイジ・ミュージックの代表的レーベル。結局、4作品をリリースした)だった。ずっと傍系にいたからこその風通しの良さがいい方に働いているところもあると思う。
▶過去の、ビリー・チャイルズ
http://43142.diarynote.jp/201203161146266803/
http://43142.diarynote.jp/201603281027273371/
http://43142.diarynote.jp/201609201032322395/ 渡辺貞夫
▶過去の、ブラッド・メルドー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/%7Enewswave/live-2003-2.htm
http://43142.diarynote.jp/200502232041270000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20150313
▶過去の、エリック・ハーランド
http://43142.diarynote.jp/200505141717440000/
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http://43142.diarynote.jp/200804081928430000/
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▶過去の、ジェラルド・クレイトン
http://43142.diarynote.jp/200709171108570000/
http://43142.diarynote.jp/200809171409066704/
http://43142.diarynote.jp/200906091637138003/
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▶過去の、ジュリアン・ラージ
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▶︎過去の、オーネット・コールマン
http://43142.diarynote.jp/200603281335030000/
▶︎過去の、ダイアン・リーヴス
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http://43142.diarynote.jp/200809240100515549/
http://43142.diarynote.jp/201003261236189984/
http://43142.diarynote.jp/201705301638029304/
<今日の、笑顔>
先に傍系と書いたが、ビリー・チャイルズの2017年新作『Rebirth』(Mac Avenue)はグラミー賞のジャズ・インストルメンタル・アルバム部門を獲得。アンコールの際にブルーノート側からお祝いの立派なケーキが出される。とても喜んでいたな。尋ねたら、出演の回すべて出しているのではなく、このショウだけのサーヴであるとか。ちなみに、もともと西海岸主導だったグラミー賞選出は、とくにジャズ部門については妙なものが選ばれるという話もありますね。なお、ジャズ公演としては、この晩の歓声はかなり大きかった。