ゴールデン・ウィーク初日、32歳の在米キューバ人のジャズ・ピアニストであるアルフレッド・ロドリゲス(2011年11月25日、2013年8月1日、2014年4月16日、2017年3月8日)を南青山・ブルーノート東京で見る。ファースト・ショウ。ブラジル人5弦フレットレス・ベース/アコースティック・ギター奏者のムニール・ホッスン(2017年3月8日)とキューバ人ドラマーのマイケル・オリヴェラ(2017年3月8日)、今のワーキング・トリオを率いてのもので、2018年新作『ザ・リトル・ドリーム』(マック・アヴェニュー)はその3人で録音されている。

 子供に向けての表現ということを念頭に置いた新作は、優しいメロディ曲を聞き手に両手を広げ優しく包むような演奏群(当人のスキャットも入る)で、曲の長さはほとんど4分台以内にまとめられている。彼のデビュー作もまたトリオ基調作であったが、もうがんがん正調ジャズ・マンとして攻める行き方と本作の間にはものすごい乖離がある。ピアノで存分にインプロヴァイズしていた私から、ピアノでシンプルに心底歌うようになった私…・。その変化の道程を思い計るとクラクラしちゃうし、人間の音楽行為の面白さや奥深さも感じずにはいられない。歌うということも、そうした過程で出てきた。

 とうぜん、実演は『ザ・リトル・ドリーム』のノリも含めた型で進められるわけだが、やはりインプロヴァイズするところはして、1曲10分ぐらいはあったか。すぐに指さばきの質が高いと唸らされるとともに、メンバー間のインタープレイの妙にも唸らされる。しかし、この3人は本当に仲が良さそう。

 ロドリゲスは大半の曲で歌う。キーボード音と肉声をミックスした加工音をテーマ部で用いたり、ピアノとの相乗で正々堂々詠唱したり。また、1曲目から立ち上がり手拍子をうながしたり、後半曲では客にも唱和をもとめたり。と、そこらへんの娯楽性のとりかたが、彼はどんどん進化している。そして、結果的に音楽として大切な輝きのようなもの見事に溢れ出る。実はそうしたアートであることと優しい一般性をを同一軸上に置く行き方はこの時代ならではのジャズ・マン作法であるとも、ぼくはおおいに唸った。

▶過去の、アルフレッド・ロドリゲス
http://43142.diarynote.jp/201111281001329390/
http://43142.diarynote.jp/201308091149599475/
http://43142.diarynote.jp/201404191143506158/
http://43142.diarynote.jp/201703111125595848/
▶︎過去の、マイケル・オリヴェラ
http://43142.diarynote.jp/201703111125595848/
▶︎過去の、ムニール・ホッスン
http://43142.diarynote.jp/201703111125595848/

 その後は、吉祥寺・スター・パインズ・カフェで、いわきをベースとする市民大所帯表現集団の十中八九(2013年5月19日、2015年11月23日、2016年4月30日、2017年11月23日)の百花繚乱のショウを見る。まあメンバーの一員に渋さ知らズ(2004年7月29日、2004年9月1日、2006年1月14日、2006年1月21日、2006年8月27日、2006年11月15日、2006年12月1日、2007年1月13日、2007年6月13日、2008年7月6日、2009年7月26日、2009年9月27日、2010年4月22日、2010年9月19日、2013年5月19日、2015年6月15日)の不破大輔(2005年12月22日、2007年6月3日、2015年11月23日、2016年4月30日、2017年11月23日)いてこそのものだろうけど、単独公演とはすげえな。入りは、もうフル・ハウス。各セット、70分ぐらいはやった。

 いろんな管楽器奏者(今回、トランペッターの一人は中学女子であったらしい。また音に厚みをだそうという方策からだろう、渋さで活動するバリトン・サックス奏者の鬼頭哲も入る)、2ヴォーカル、2ギター、2ベース、鍵盤、ドラム、演奏陣だけで20人ぐらいいたか。ダンサーは4人。そして、ステージ後方に映し出された映像は十中八九美術班によるものだろう。様々な属性を持っているはずの男女が意気揚々とかさなり、喜びに溢れ、どこか切実な楽器音や歌や動きを送り出す。

 一言で書き記すなら、ブラス・ジャズ・ロック・ポップ・バンド? そうした面々を束ねるのが不破の鷹揚なようでいて実は細やかな千里眼的指揮。けっこうきっちり準備されたものを前提に、曲順やソロ・オーダーなどはその場で変わり、それに構成員たちは好奇心旺盛に応え、それを受けてまた不破はディレクションを改新していく。予定調和にならない新鮮なアメーバー状の音や動きが鮮やかに会場内に満ちていく。いや、その様は半端ありません。そして。こちらも音楽としての重要な輝きを放っていた。

 蛇足だが、面々は集団行動ではなく、各々勝手に(まあ、楽器の関係もあるし、車に相乗りしたりとかはしたろうけど)会場集合であったとのこと。そのきっちりしてない余白もいいなあ。

▶過去の、十中八九
http://43142.diarynote.jp/201305260923241736/ 起点
http://43142.diarynote.jp/201511250531202253/
http://43142.diarynote.jp/201605170939589783/
http://43142.diarynote.jp/201711241828493970/
▶過去の、渋さ知らズ
http://43142.diarynote.jp/200407290730290000/
http://43142.diarynote.jp/200409010713470000/
http://43142.diarynote.jp/200601161256540000/
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
http://43142.diarynote.jp/200609031311580000/
http://43142.diarynote.jp/200611190320370000/
http://43142.diarynote.jp/200612060135390000/
http://43142.diarynote.jp/200701141431470000/
http://43142.diarynote.jp/200706162321180000/
http://43142.diarynote.jp/200807081247190000/
http://43142.diarynote.jp/200908180046187200/
http://43142.diarynote.jp/200910071809361076/
http://43142.diarynote.jp/201004231559516550/
http://43142.diarynote.jp/201009231554333481/
http://43142.diarynote.jp/201305260923241736/
http://43142.diarynote.jp/201506161247423392/
▶過去の、渋さ以外の不破大輔
http://43142.diarynote.jp/200512231958440000/
http://43142.diarynote.jp/200706061351450000/
http://43142.diarynote.jp/201511250531202253/
http://43142.diarynote.jp/201605170939589783/
http://43142.diarynote.jp/201711241828493970/

<昨日の、アルフレッド>
 ホテルのカフェでインタヴュー。片手に、水のペットボトル。我々が飲み物を頼むなか、僕は頼まなくていいと言う。重ねてすすめられても、僕は大丈夫、と。なんか、清廉という言葉が頭に浮かんだ。今、控えているプロジェクトはいくつもあるそうだが、打楽器奏者のペドリート・マルティネスとのデュオ(!)・アルバムが次作になりそう。また、恩師クインシー・ジョーンズ(2013年8月1日)とのシンフォニック・プロジェクトも進んでいる。きっちりキューバ時代にクラシックを学んでいる彼は、さすがオーケストレイションもできるという。
▶︎過去の、クインシー・ジョーンズ
http://43142.diarynote.jp/201308091149599475/