六本木周辺で、二つのライヴを見る。

 まず、オークウッドプレミア東京ミッドタウンのラウンジで、現在5か所からなる日本ツアー中のスイスの男女ユニットであるアリオーズを見る。スイス人関係者たちが集うパーティの一環で、この晩はツアー中の二人の番外実演となる。澄んだ情感を持つ女性シンガーのアリゼ・オスヴァルドと生ギターと歌のザヴィエル・ミシェル、二人だけで事を行う。交互に歌ったり、いろいろと重なったりと自在に歌の絡み方を持つのが、ちょっと湿り気のあるメロディを扱う彼女たちの要点。これだけ密に歌が重なる男女のポップ・デュオのユニットを、ぼくはちょい頭のなかに浮かばない。曲作りのワークショップで出会い、当初はオスヴァルドの方だけが歌っていたようだが、試行錯誤のすえ現在の形になったという。

 うち、1曲はスイス発の音階打楽器であるハンドパン(ビョークもライヴで使っている)だけを下敷きに、歌う曲があった。フランスのワーナー・ミュージックから出ている新作『Comme on Respire』(2017年)は二人にとって初のインターナショナル・リリースであり、もともとフランスに近いところに生まれフランス語を用いていた二人はフランス語で歌っている。

 その後は、EXシアター六本木で、現在87歳のキューバ人ヴェテラン歌手であるオマーラ・ポルトゥオンド(2001年2月9日、2002年8月23日、2012年5月1日、2013年9月7日)のショウを途中から見る。キューバ音楽好きで自ら現地録音アルバムを作ったりしていた音楽カメラマンの高橋慎一監督の映画「Cu-Bop across the border」の全国公開を祝うという名目を持つもの。

 ピアノのロランド・ルナ、コントラバスのガストン・ホヤ・パレリャーダ、ドラムのロドニー・バレット(2012年5月1日、2013年11月27日)、パーカッションのアンドレス・コアヨ(2012年5月1日)。そして、1曲だけ奥山勝(ピアノ)がルナに代わる。彼は、ポルトゥオンドの初来日公演で弾いたことがある旧知の関係であるという。

 基本ゆったり目の曲を、多くは椅子に座ってじっくり歌う。赤基調のドレスとヘア・バンドが映える。そりゃ物理的には少し甘くなっている部分もあるのかも知れないが、矍鑠にして確か。そして、やはり滋味と訴求力てんこもりで、頭をたれるしかないじゃないか。お茶目さ、人間的な豊かさを感じさせるのもとても魅力的だ。日本の有名曲「桜」をアカペラで歌ったりもしたが、彼女は日本語歌詞をそらで覚えていた。お客さんにも唱和を求めたが、歌詞をちゃんと知っている日本人が逆に多くはなく(ぼくも知りません)、それはしりすぼみに。

▶︎過去の、オマーラ・ポルトゥオンド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-2.htm ブエナ・ビスタ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-8.htm 東京ジャズ
http://43142.diarynote.jp/201205080621274204/
http://43142.diarynote.jp/201309161507226186/
▶︎過去の、ロドニー・バレット
http://43142.diarynote.jp/201205080621274204/
http://43142.diarynote.jp/201311281342196399/
▶︎過去の、アンドレス・コアヨ
http://43142.diarynote.jp/201205080621274204/

<今日の、天候>
 東京ミッドタウンのなかにある、賃貸し高級アパートメントのオークウッドプレミアの中には初めて入る。へえ、格あるホテルみたいね。芸能人なんかも住んでいるという。ライヴ前には、そこでアリオーズのお二人にインタヴューする。いい人たちだなあとすぐに思わせるとともに、美男美女で驚く。ジャケットのカヴァー写真はなんであんなのにしたのかな。ハンドパンを弾かせてもらったが、スティール・パンに下蓋がついている感じ(それなりに重量あり)で膝において扱い、それに準ずる音が出る。
 桜も咲き始めて、この時期にインタヴューする外国人には、今来日できてラッキーですねと枕で言ってしまうワタシ。しかし、夕方以降、とっても気温が下がり、EXシアターに歩いていくのが辛かった。あそこはミッドタウン前からだと車道は外苑通りが左折できず、246も劇場の反対側で降りることになるので、タクシー使用はどうにも具合が悪い。そしたら、翌日は昼間はもっと寒くて、降雪も! これで、また暖かくなると、一気に桜は満開だな~。